番次郎の盤上万歳!!: 名古屋のボドゲ旅で実感した、ボードゲームが本来持つチカラとは。

2017年6月14日水曜日

名古屋のボドゲ旅で実感した、ボードゲームが本来持つチカラとは。

ある日突然スイッチが入ったので、私は一路名古屋へと向かった。
それ以外の理由は、特に見つからず。
誰に求められているわけでもない。
これが仮に某ボードゲームアイドルだとしたら多方面からのオファーでもあったのだろうが、世の中そんなに甘くはないのだ。「与えられたカードで勝負するしかないのさ」スヌーピー(チャールズ・シュルツ)は本当にいいことを言う。

ボードゲームが好き、で、名古屋、といえば、行く前から向かう場所は決まっている。
「ゲームストア・バネスト」
そこに行けば、かつて私の求めていたものが見つかるはず。
ゲームにしろ、心の中のわだかまりにしろ、真の意味での「メッカ」を期待して、私は名古屋行きの高速バスへ乗り込んだ。



閑静な住宅街にたたずむバネスト。
そこに一歩足を踏み入れた私は、驚きのあまり声を失った。



店内は所狭しと並べられたボードゲームの数々。
一般店舗ではまずお目にかかれない海外のボードゲームが多数揃えられている。
その奥で、忙しそうに経理の作業を行っていたのが、主人である中野さんだ。
普段ツイッターやポッドキャストでしかお目にかかれない、私、いや、数多くのボードゲーマにとって憧憬の対象とされる、あの中野店長がいらっしゃるのだ。緊張しないわけがない。




「何かあったらおっしゃってください。うち、いつもこんな感じなんです」
気さくな言葉の中にも、熱のこもった言葉が続く。まさに商売人の顔だ。

ふと目をやると、愛くるしいイラストのフリーペーパーが目に入った。


「オープン会に行ってみよう!」と称されたこのフリーペーパーは、ボードゲーム初心者に向けられた、ボードゲーム会への紹介記事だ。
ボードゲームに初めて参加される際の注意点、マナー等が書かれている。もちろん無料だ。
裏面には、名古屋近隣で行われているボードゲーム会のマップも併記されている。


「近隣のゲーム会が知りたい」だけならば、ネット上にはenjoygamesさんのページ http://enjoy-gam.es や、ぼどっこさんの「おやこボドゲカレンダー」http://bodocco.com/event/ などもあるだろう。
しかし、こうして「名古屋近隣だけを切り取って提示する」ことにより「あ!自分たちの周りって、実はボードゲーム会がたくさんあるじゃない!」といった気づきが生まれるのだ。しかもそれは、普段パソコンやスマホを持たないお子さんや高齢者に対しても、だ。

程なく、中野店長とも親交のある「今夜もアナログゲームナイト」メインDJの太陽皇子が来店された。
想像に違わぬ、ナイスガイである。


他にも、ボードゲームを求めて多数の方が来店される。かなりボードゲームに精通された方から、初めてボードゲームに触れるのでオススメを知りたい方まで、十人十色だ。

バネストの特徴はもうひとつあり、店長のほか、気がついた方(ここでは太陽皇子など)がゲームの説明をすることもある。
これだけのゲーム量があれば、私もつい口が緩んでしまうのだろう。
自分の好きな図書の前でオススメの書籍を延々と語りたがる図書館司書の気持ちだ。
仮に気持ちがシンクロするのであるならば、それらゲームが鎮座しているというだけで、私たち客人に対しスピリチュアルなエネルギーを与えてくれる。
いわば、雰囲気の醸造に一躍買ってくれる、というわけだ。


盛り上がっている。
ありていな言葉だが、そんな言葉が、自分の胸の中の欠片にピタリと嵌った。

皇子も、古くからボードゲームに携わっており、こと名古屋のボードゲーム事情をよく知っている。
私はつい、なぜここまで名古屋のボードゲーム会が盛り上がっているのか、質問してみることにした。

「名古屋は、TRPGや人狼が全国で盛り上がる前から、先んじて盛り上がっていたんですよ」
御二方はそう口にした。

TRPGのさらに前、まだRPGという言葉がドラクエやウルティマというゲームに連結する前の時代から、名古屋という地域では盛り上がりを見せていた、という。
人狼に関しても同様で、私の頭では、フジの「人狼」や、ドロッセルマイヤーズさんの書籍(今夜はじめる人狼ゲーム)等によるブームが先駆的なイメージを持っていたのだが、それよりも前に人狼を持ち出したのは実は名古屋であり、バネストであったのだ、と話す。
その他にも興味深いお話を拝聴する。時代の先駆的存在、そして、中心的存在に位置するのが、やはり名古屋であるという認識は、間違いではないようだ。
あまりのカルチャーショックに、私は軽い喉の渇きすら覚えた。

少し時間を置き、私はその後開催されるという平日ゲーム会「名古屋ギークバー」に参加した。

市内のバーを貸し切り、ソフトドリンク飲み放題、スナック類も無料、また有料となるが、アルコールも飲めるし、食事をとることもできる。
18時30分~23時まで1500円という破格の値段設定も、おそらくマスターの理解があってこそだろう。
以前私の周囲に同程度の案件を持ち込んだところ、ワンドリンク込みとはいえ3000~4000円という値段だった記憶がある。

2部構成のこの会、1部は「協力ゲーム」がテーマ、21時以降の2部はフリーテーマだ。
テーブル上には次々と目新しいゲームが並ぶ。
海外のゲーム、見慣れたゲーム、最新のゲーム、etc…。私も負けじと、手持ちのスーツケースから、先日のゲームマーケットで購入したゲームを多数取り出す。

会も独特だった。
まず主催の太陽皇子の言葉から始まり、各テーブルで行われるゲームと、それをインストできる人間が簡単にゲームの内容を紹介する。
その後、各テーブルに分散し、ゲームスタート、といった流れだ。
ここまでが一連の流れでできている。
私の中で想像していた、一般的なゲーム会に見られる「各人が勝手にゲームを開き、主催がホワイトボードに遊んでいたゲームをひたすら書き綴っては、手の空いている人間をどんどん人の足りないゲームに回していく」などの作業を一切排し、実に見事な効率化を図っている。
これまで私の中で疑問とされてきた「一番ボードゲームで遊びたいはずのゲーム会主催者がほとんどゲームで遊べない」問題も、これなら解消できるはずだ。
最も問題は、それだけインストを執り行うことのできる人間の確保など一面的な問題ではないのだろうが。

せっかく参加したのだから、私も何か協力したい。会に貢献したい。
そんな思いから、私の手持ちを探り「8bitMockUp」を広げる。
不慣れなインストではあったが、他の方が説明書を手に取り不明な箇所を補完していただいたおかげでスムーズに進行することができた。
さらに、点数計算の際
「次から一斉に発表するんじゃなく、一人ひとり発表していくことにしましょう」
「それ、いいですね!」
そんな声が自然と上がったのだ。
それはあたかも「盛り上げ方を熟知している」かのように。

バスの時間が迫ったため、やむなく途中で切り上げることとなった。

バーを出た後、私の心の中は充実感に満ち溢れていた。
全員で盛り上げようとする雰囲気が、間違いなくそこには醸造されていた。
その土壌を作っているのは、バネストなどのゲームショップであり、また、太陽皇子をはじめとする、古くから名古屋のボードゲーム界隈を支えるボードゲーマーの方々だ。

それらはまるで、子供の成長する過程に似ている。
天真爛漫な子供が、のびのびと自由にチャレンジでき、失敗しても温かく迎えてくれる母親的な存在が傍らにあり、、ダメな事象に対し強い味方となってくれる父親的な存在がそばにあるという、そんな私たちも忘れかけていた家庭的な一面があるからこそ、名古屋のボードゲーム会は、私がこれまで問題視してきた事柄をすでにクリアした上に、さらにワンランク上の次元に達しているような、しかるに、他の地域を見下すわけでもなく、あたかも愛情をたっぷり受けた子供が他の子供にも優しく接するかのような、他の地域に対してもそっと手を差し伸べるような、良い意味での「古き良き昭和の家庭」が頭をよぎったのだった。

帰りのバスに揺られながら、ふと、あの時の中野店長や皇子の言葉を思い出す。

「ゲームは楽しむもの」

ゲームを購入していると、ふと、忘れそうになるこの言葉。
ゲームを買っているうちに、ゲームに買われている錯覚(ゲームにお金を支払う感覚)に陥るような。
ゲームのインストをダメ出しされるうちに、
ゲームに負けて「弱い」と言われるたびに、
せっかく買ったゲームを「クソ!」「面白くない!」と罵られるたびに、
なんとなく、面白くて買い集めたはずのゲームが、いつの間にか「忌み嫌われる対象」となっていたような。

もっと、もっともっと、もーーーーっと。
気楽に考えてもいいんじゃない?

今回のギークバーに参加された方々は、老若男女、皆が童心に帰ってゲームを楽しんでいた。
しかも、きちんとルールに従って、不平をこぼす人など誰一人としてなく、だ。
私の中の「あるべき、向かうべき姿」が、そこに垣間見えた気がした。
皆が笑っていた。
盛り上がっていた。
心からゲームを楽しんでいた。

名古屋に来て、本当に良かった。
一刻も早く家に帰って、自宅に眠っているボードゲームたちを抱きしめてあげたい。
そんな衝動にかられながら、深夜バスは一路、新宿のバスターミナルへと向かっていった。

「天才の秘密は、子供の時の精神を大人になっても持ち続けるということだ。
 つまり、それは自分の情熱を失わないということである」
(オルダス・ハクスリー イギリスの小説家)

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