番次郎の盤上万歳!!: MFTTは現代のアテナ神だ

2017年7月24日月曜日

MFTTは現代のアテナ神だ


(以下の投稿は私がEnjoy!マストフォロー練習トランプキャンペーンにおいて応募した作品です。※無断転載を禁止します。)
締め切り間近ですので、ご興味のあるかたはどうぞ。

http://trump-ya.blogspot.jp/p/blog-page.html


トリックテイキングとは不思議なジャンルだ。見ていると、それだけを抽出してプレイされる方が大勢いらっしゃる、その一方で、私のように、目に飛び込んでくる「スート」や「マストフォロー」といった言葉に物怖じし、なかなか手に取ってもらえない存在であることも事実だ。あたかも「賢者の扱う魔道書」のような存在に見えてしまう。
それはトリックテイクと呼ばれるゲームの「よういせい」という言葉が、プレイの「容易性」ではなく、実感としての「妖異性」に変換されることにあるのではないか、と画策してしまう。
コツとして、やり方としての障壁は確かに私の中に存在し、それを乗り越えた先に広がる新世界は見渡す限りの大地が広がっていることだろうとは思う。
一体、それはどんな世界なのだろう。
興味こそあれど、いざゲーム会などで「ペッパー」や「5本のきゅうり」といったゲームに私のような初心者が混じろうとすれば、先に挙げた言葉の壁の他にも、初心者ならではの「ルール未習熟によるミス」により集中砲火を浴びることなど目に見えている。
トリックテイクの練習を兼ねたゲームはないか。
そんな矢先に出会ったものが「トランプ屋」で発売されている「マストフォロー練習トランプ」以下「MFTT」)だった。
練習と名打たれているだけに、きっと練習に特化したトランプであるに違いない、私は喜び勇んで購入した。
トリックテイキングの世界に稚拙ながら一歩だけ足を踏み入れてみたわけだ。

家に帰り早速箱を開けると、出てきたのは簡単な取扱説明書と、色鮮やかなトランプの束。色は、スートと呼ばれる記号ごとに区分けされており、原色の強い色合いがその妖艶さを一層際立たせている。
トリックテイクの基本は、一人が順番に強いカードを出していき、一番強いカードを出したプレイヤーが場のカードを全て取る(テイクする)ゲームのことを指すのだという。(ボードゲーム用語集より抜粋)
言うなれば、いま私の手元にある「ハゲタカのえじき」というゲーム、これは本来、全員が一斉に手札を公開し、一番強い(数値の多い、または少ない)札を出した人間が場に出ている札を出す権利を与えられるのだが、これも親から順番にカードを出していけば、トリックテイクに似たゲームとならないだろうか(大いに偏見はあるだろうが)。
基本もつかめたところで、どうしてこのトランプが「練習」と銘打たれているかについてしばし考えてみた。
このトランプは背面の色と表面の色とがリンクしている。
つまり、これを実際に使用してトリックテイクのゲームをプレイすれば、それだけで相手の手札を推察することができる。数字こそわからないまでも、相手のマークが見た目でわかるという、いわばカードゲームにおいて非常に重要な情報を相手に提示している点が大きく、練習というよりむしろフォローしている感覚に近い。
私は妻を呼び、早速MFTT購入の際に合わせて頂戴したおすすめゲームの冊子から、ゴルフをチョイスすることにした。
私はおろか、妻に至っては、トランプなどババ抜きと七並べしか知らない人間だ。ルールの詳細は割愛するが、一般のトランプとは違い、相手にマークの情報が知れ渡っている。普段のトランプとは勝手が違うこともあり、妻も思わず感嘆の言葉を漏らす。
「え?どんなカードなのか、裏の色でわかっちゃうの?」
「そうだよ」
「それじゃどんなカードが出たのか、覚えておけば勝ちじゃない?」
トリックテイクの基本はカウンティングだ、そう誰かが口にした覚えがある。
ゲームに無頓着な私の妻の人間ですらこの基本的事項に気づかせてくれるのだ。改めてこのMFTTの持つポテンシャルの高さを知る。最も、私は妻に指摘されるまでそうだと気がつかなかったのだが。
早速ゲーム開始。覚えておけば、と軽々しく口にはしたものの、ゲーム中は自分の手札に夢中になり、そうそう思惑通りにはいかないもの。しかし、視認性の強いカードのおかげか「赤いカードは結構残っていたな…」「青のK,Qはさっきも出ていたはず」などの印象が強く、比較的カウンティングが容易だった印象を受ける。
意図せずカードを記憶していたこともあり、最初のゲームは私が勝利を収める。悔しそうな表情の妻。
ディーラーを変えてもう一戦。
当然妻の方も勝ち方のコツ、とりわけカウンティングの要領が掴めたようで、なかなかこちらの意図するカードを出してはくれない。接戦の末、2戦目は妻が勝利を収める。
「へぇー、最近はトランプにも面白いゲームがたくさんあるのね。」
上機嫌な妻に向かって「昔からあるんですが…」という言葉を挟むわけにはいくまいと、私は続けてスパーを遊んでみることにした。
こちらもトランプ屋さんの冊子に掲載されているゲームで、プレイの感覚としては、私の想像する「トリックテイク」とはまさにこんなゲームではないか、といったもの。
簡単にルールを説明する。もちろんリード、スートといった言葉は「最初の手札」「マーク」といった言葉に変換してあげた。
「これも相手がどんなカードを持っているか、見えているよね」
「そうだよ」
「それじゃ、なんのカードを出せばいいか、バレてしまうんじゃないの?」
私も実際にゲームを行うまで気がつかなかったが、相手の手札が半分わかってしまっている状態でのプレイ、これはポーカーでも大富豪でも何でもそうだろうが、プラスアルファ、推理能力が要求される。
1手先を読む、というと将棋や囲碁などの盤上遊戯なら想像できるだろうが、トランプの世界においても、捨て札や持ち札から相手の手札を推理する行為、それらが求められるのだ。
いや、本来ボードゲームの上級者と呼ばれる方々はそれら行為を当たり前のように行なっており、私のような未熟者がゲームの楽しさだけを追求したがために飽くなき勝利に対する執念を云々、勝ち方に対するこだわりを云々、まあ、つまり、勝利にこだわるためには、これらの行為も必要となる、と。このトランプはそう気づかせてくれたのだ。
ゲームに戻り、妻とスパーをプレイする。トリックテイクなど、先読みなど、全くわからないズブの素人同士であったが、最初に先読みの重要性を感じたのは何を隠そう妻の方だった。
「あ、あなた青いカード(クラブに該当する)が少ないわね。ならこれを出すわ」
「えっと、これはハートの3!?」
「こういう弱いカードって、早めに出しておかないと、後々困るじゃない」
プレイを重ねるうちにメキメキと強くなっていく妻。スパーに関し、3戦とも妻に勝つことはできなかった。
「楽しかったー!トランプの世界って、意外と奥が深いわね」
「そ、そう、喜んでもらえて嬉しいよ」
けちょんけちょんに叩きのめされた私は、それでもトリックテイクの面白さを普及できたことに対し、妻の背後で小さくガッツポーズを決めたのだった。

トリックテイキングは難しい、そして、初心者の敷居が高い、そんな印象を持つものだ。それは冒頭の私がそうであったように、もしくは「食わず嫌い」がそう思わせている面も多分に存在するものではないだろうか。
一般のトリックテイキングゲームなどで遊んでもいても「何となく勝った」「とりあえずルールだけ守っていたら負けなかった」と体感された方はいることだろう。その中でトリックテイキングの本当の面白さ、とりわけ推理能力や相手のカードの出し方から自分のカードの戦略性を如何にするべきか、に気づくことができた人は、果たしてどれくらいいることだろう。
このMFTTは名前に「練習」と銘打たれてはあるものの、どちらかといえば「トリックテイキングゲームの奥深さを知るきっかけ」を与えてくれる存在であるものと思慮する。
このMFTTを通じ、カウンティングや推理能力の重要性、ひいてはゲーム全体における戦略性を知ることができた。それらができるようになると、トランプにとどまらず、ボードゲーム全般がより一層強く、また興味深くなることだろう。
もう一つ、トリックテイキングゲームを学ぶことで、多くのボードゲームの根本をプレイしている感覚に陥った。
言うなれば、古くから伝わる古典芸能を読み解いているような錯覚だ。
書籍の世界においても古くから現代に読み継がれるような作品は、読み継がれるだけの面白さが存在するものである。ボードゲームもおそらく楽しさの根幹がトランプという箱の中に眠っており、そのルールに基づき、現代に至るまで、多くの人の手により、時代のニーズに応じトランプのゲームを伝承してきたのだろう。
あいにく、それに気づかせるには、古典作品にも辞書が必要であるように何らかの解説書が必要であり、これまでトランプの世界では口伝による方法が主流だったのだ。
そこでMFTTの登場である。
これにより実際の古典作品の奥ゆかしさ、楽しさを用意に体験することができ、また、多くの人に数多くの古典ゲームを手に取ってもらえるきっかけにつながる。
いわばドラえもんの「翻訳こんにゃく」たる存在とも言えるだろう。実に画期的アイディアと言えるのではないだろうか。
私は改めて、このMFTTの素晴らしさと、秘めたるポテンシャルに感服するとともに、妖しさと美しさを併せ持つこのトランプに、知恵と戦争の神であるアテナの姿が一瞬フラッシュバックした。

0 件のコメント:

コメントを投稿