番次郎の盤上万歳!!: 創作落語「御題目」

2017年8月10日木曜日

創作落語「御題目」

見よう見まねで創作落語を作ってみました。
なにぶん素人ですので、矛盾する点など多数あるかと思いますが、暖かい目でご覧いただけますと幸いです。
(8月10日1900更新)



今の社会は「ポチる」なんて言葉を使うくらい、部屋とパソコンがあれば何でも手に入る、そんな便利な時代なんでございますが、じゃあ昔は不便だったかって、そんなことは無い訳でございまして、江戸庶民の生活だって、家の中におりましたら
「豆腐ー豆腐ー」
「カボチャーカボチャー」
なんてな威勢のいい声が常に入ってくる訳でございます。
「取り替えべぇー取り替えべぇー!」
「ふるいーふるいー!」
「えーボードゲーム、ボードゲーム、カタンにゴキポにガイスター、カルカソンヌにラブレター!」
「?ちょいと、何だねあんたぼーどげーむってのは。ここは場末の長屋だよまったく」
「へぇ、すんませんご隠居。実はあっし、南蛮渡来のボドゲ、ボードゲームを売りに来た商人なんでございやす」
「ほお、ぼーどげーむかね。実はあたしゃね、ここの長屋に古くから住み着いているものでね、どれどれ、そのぼーどげーむとやらを、見せとくんな」
「へえ、こちらです」

若旦那が取り出したボードゲームはカタンにカルカソンヌ、宝石の煌めきにガイスターといった舶来のボードゲームばかり。

「ほお、何だか珍しいものばかりだこりゃ。老いぼれのあたしの目にはどれも同じに見えるがね」
「へぇお目が高い。実はこちら、遠くドイツと呼ばれる国で作られた、まあ、こういっちゃなんですが、すごろくみたいなもんなんでぇ」
「これがすごろくかい?すごろくったら、さいころなんぞを振って、出た目の数だけ進む、あの遊びのことを言うってんだろ?この「ほうせきなんちゃら」ってぇのに、さいころのさの字もねぇじゃねえか、この嘘つきめ!」
「ご隠居、実は嘘をつくための「人狼」なんてゲームも」
「いいんだよくだらない合いの手は。とにかくね、こんな貧乏長屋で、こんな見目麗しいぼーどげーむなんてものが売れるはずがないじゃないか、え?、他所行きな他所」
「へぇ、すんませんご隠居。実はあっし、場所を追われておりまして、食うに食われぬ毎日でござぁ」
「なんでぇ急に態度を変えて来やがったな、どれ、ちょっとばかし話を聞こうじゃないか」
「この日本って国、まだボードゲームの理解が進まないんでさぁ。ゲームは子供のもの、値が張るもの、なんてなことを誰かが吹聴しやがりましてですね、こちとら商売あがったりでござんさぁ」
「ほぉ、そんな事情とは知らなんだね、よし、ここで逢うのも何かのご縁、袖振り合うも他生の縁、一期一会にりんごが百円だ、ここはいっちょ肌を脱いでやるとするめいか」
「かたじけねぇですご隠居」
「で、あんたは今日、何を売りに来たんでい?」
「実はあっし、新作のボードゲームを売りに来たんでございやす」

若旦那はそういって包みの中から、見たことのない白い紙を取り出します。

「その白い紙と、はしごみたいな紋所は一体何何でえ」
「実はこれ、あっしが今しがた作ったばかりの新作ボードゲームでございやす。今度の日曜に浅草で行われるイベントのために、ここまであっためておいた新作なんでございやす」
「ほお、新作ね」
「あっしの人生の集大成とも呼べる作品が完成しましてですね、プレイ感覚はカタン、ボードのこだわりはエルフェンランド、交渉あり、拡大再生産あり、正体隠匿あり、と、いろいろこだわったんでございやす」
「なんだいなんだい次から次に。ありありありっておまいさんはキリギリスか何かかい?おまんま頂戴しようったってそうはいかないよ。おととい来てくんな」
「ま、ま、とにかく、あっしの自信作でございやす」
「自信作かね。で、名をなんと言うんだい」
「それが、決まってないんです」
「決まってない?そこまで偉そうに御託並べといて、名前を決めちゃいねぇって、本末転倒もいいとこでぃ」
「いやぁ、いろいろ考えあぐねてしまいまして、何か妙案はねぇですかいご隠居?」
「ふむふむ、じゃあこうするってのはどうだ、いま世間では長い題名の作品が幅を利かせてるって聞いたことはあるかい旦那」
「ふへぇ、なにぶん不勉強なもんで」
「今正に、世は御題目を長くするってぇのが隆盛を誇っているんだ。「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝ソード・オラトリア」なんてな名前が普通に世に蔓延っているんだよ」
「へへぇ、寿限無みたいな名前ですねご隠居」
「そこで、だ。妙案だがね、お前さんもここは一つ、御題目をどえらく長〜〜くして、流行に便乗するってのはどうでぇ」
「さすがはご隠居」
「でも、単に長くするだけってぇんじゃ芸のない話。そこでだがね、やり方の手順がわかるよう入れてしまおうってぇ算段だ」
「やり方を、ですかい?」
「最初はこうで、次はこうで、ってぇのを、最初からお題目に組み込んどくんだよ。そうすりゃお前さん、御題目も長くなり、御題目を読むだけで、何のことかがわかって一石二鳥ってぇ寸法だ」
「手順を組み込む、そういや「刺身にタンポポを乗せるだけの簡単なお仕事です」って作品もありやしたかね」
「そうかいそうかい、それじゃ早速、御題目の作成とやらに移っとくれ。いい御題目ができた暁には、あたしの名前もそれとなく紹介しとくれよ」

そんなこんなで、初めて作った若旦那のボードゲーム、御題目にやり方の手順を組み込むことにしたんでございますが、何せこの若旦那、根っからの職人気質、石部金吉金兜、ご隠居の言葉通り、やり方の手順を一字一句余すことなく組み込んだわけでございます。

「できやしたぜご隠居、題しまして「このゲームは中世ヨーロッパが舞台で、プレーヤーは選ばれし勇者となり、世界各地の都市を巡りながら自分の村を発展させ、村の繁栄と自分の装備を充実させつつ悪の組織に立ち向かうことが目的で、まず金貨3枚と手札を3枚ずつ配ります。ボードに書かれてある指示に従いながら手札を公開し、相手と交渉を繰り広げつつ金貨を装具カードや村発展カードに変換し、最後に悪の枢機卿を倒したプレーヤーが勝利します」の完成です」
「随分とまた長い御題目ができたもんだね」
「いっけねぇ!スタートプレーヤーの決めかたを入れ損ねちまった」
「ちっせぇことはいいんだよ。それより早速だがね、いっちょ売りに行ってみてはどうかね」
「へいっ!」
若旦那は威勢よく飛び出します。
「えーボードゲームにカードゲーム、世間で話題の「このゲームは中世ヨーロッパが舞台で、プレーヤーは選ばれし勇者となり、世界各地の都市を巡りながら自分の村を発展させ、村の繁栄と自分の装備を充実させつつ悪の組織に立ち向かうことが目的で、まず金貨3枚と手札を3枚ずつ配ります。ボードに書かれてある指示に従いながら手札を公開し、相手と交渉を繰り広げつつ金貨を装具カードや村発展カードに変換し、最後に悪の枢機卿を倒したプレーヤーが勝利します」も楽しいよー!」
「おじちゃんおじちゃん、それ何?」
「おう坊主、らっしゃい。よくぞ聞いてくれました。このゲームの御題目はな、「このゲームは中世ヨーロッパが舞台で、プレーヤーは選ばれし勇者となり、世界各地の都市を巡りながら自分の村を発展させ、村の繁栄と自分の装備を充実させつつ悪の組織に立ち向かうことが目的で、まず金貨3枚と手札を3枚ずつ配ります。ボードに書かれてある指示に従いながら手札を公開し、相手と交渉を繰り広げつつ金貨を装具カードや村発展カードに変換し、最後に悪の枢機卿を倒したプレーヤーが勝利します」ってんだ」
「ごめん、おら、そのちゅう、なんとかってわかんねぇ」
「いいかい坊主、もういっぺんゆっくり喋るからよくその耳かっぽじって聞いてくんな。このゲームの御題目はな、一度聞いただけで、ゲームのやり方までわかってしまうって寸法なんだ。「このゲームは中世ヨーロッパが舞台で、プレーヤーは選ばれし勇者となり、世界各地の都市を巡りながら自分の村を発展させ、村の繁栄と自分の装備を充実させつつ悪の組織に立ち向かうことが目的で、まず金貨3枚と手札を3枚ずつ配ります。ボードに書かれてある指示に従いながら手札を公開し、相手と交渉を繰り広げつつ金貨を装具カードや村発展カードに変換し、最後に悪の枢機卿を倒したプレーヤーが勝利します」わかったか?あ、このガキ居眠りしちまいやがる。
あ、おいそこの女子よ。どうでぇこのゲーム、面白そうだろ。」
「おもしろそう」
「そうだろそうだろ。いいかいよく聞け。その名も、「このゲームは中世ヨーロッパを舞台で、プレーヤーは選ばれし勇者となり…」
「いいから早くやろうよ」
「黙ってよく聞け!まだ御題目の途中だ。ええい最初からだ。「このゲームは中世ヨーロッパが舞台で」
「もういいから早くー」
「まだ何にも言い終わっちゃいねぇってんだ!あーあーいいからあっち行け!お、そこの若いの、いいか御題目をよく聞け。このゲームはな。一見すると普通のすごろくに見えるが、実は御題目が「このゲームは中世ヨーロッパが舞台で、プレーヤーは選ばれし勇者となり」
「要は、このカードをめくってラスボスを倒したら勝ちなんでしょ?」
「いいから最後まで聞けってんだせっかちな野郎め!ああ、もう最初からだ、「このゲームは中世ヨーロッパが舞台で、プレーヤーは選ばれし勇者となり、世界各地の都市を巡りながら」
「やっぱラスボス倒したら勝ちじゃん」
「ちゃんと聞けって言ってんだろ最近の若いやつらってぇのはコンチクショウ!あーあーこれじゃ商売上がったりだ!ご隠居、このゲームの御題目、一体何が悪かったんでげしょ」
「そりゃおめぇ、子どもらにはまだ早かったんじゃろ。少し毒(独)が強すぎる」

おあとがよろしいようで



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