2018年8月7日火曜日

にんげんっていいな すごろくや祭 3講演感想

8月5日(日)のすごろくや祭、大変多くの方で賑わいを見せた。
私も人気のデクリプトやトマトマトなど、多くの作品を購入したり、手にとって遊んだり、試遊スペースにてプレイしたりなど、存分にボードゲームの楽しさを満喫した。

その中でも、特に午後から行われた講演会が、大変興味深く、印象に残ったので、備忘録として綴っておきたいと思う。

講師は、伝統ゲームの魅力を語った草場純先生、ボードゲームに携わる仕事に関し語った渡辺範明先生、ボードゲームを通じた縁結び(有り体に言うと婚活パーティ)と具体的施策を語ったニシヤマエリカ先生、の御三方。

必死でメモを取りながら、感動にむせびつつ、講演を拝聴した。

草場先生が語る伝統ゲーム、地方には「ごいた」「ごにんかん」他にも「かっくり」「くろふだ」といった知られざる伝統ゲームが眠っており、それらは面白さが「純化」されているのだという。

確かに「麻雀」を考えると、麻雀の魅力はその洗練されたルールにあると誰もが口にする。
役と点数を覚えさえすれば(昨今はそれすらPCやカメラで弾き出すアプリも登場したが)老若男女誰でも楽しめ、かつ、長時間遊んでも飽きがこない。
長時間のボードゲームが苦手でも徹マン(徹夜で麻雀)なら今でも大丈夫、という熟年諸氏は健在するほどである。

麻雀の文化的背景は勉強不足で、たった今、目の前のPCでサラッと調べただけの知識に過ぎないが、少なくとも100年以上の歴史を持つだけあり、草場先生のおっしゃるように、人と歴史が作品を洗練させ、より深い魅力を引き出してきたのだろう。

もうひとつ、紹介があった「なかなかほい」という、これは「わらべうた」の部類に入るだろうか。


先ほどの「純化」の話もそうだが、そもそも「ボードゲーム」に「取扱説明書」、「アイコン」、といった補足説明が必要な点に関し、常々頭を悩ませていた。
動画をご覧になった方は気がついただろうか。
「なかなかほい」という言葉自体を初めて聞いた方も、動画を見た「だけ」で、どんなゲームなのか理解できたのだ。
本来、ゲームとは、説明書もいらない、駒もサイコロも、何もいらない。ひょっとすると、説明すらいらない。
「こっちおいで。見ててごらん。なんとなくわかるから」
余分なものがそぎ落とされ、口伝なり何なりの形で伝承され、面白さのエッセンスだけが残り、その結果、こうした「おばあちゃんが、小さな子どもと、一緒に遊べる形」として継承されたのではないか。
いらない、と述べたが、いつしかそれにさらなるゲーム性を持たせようとした誰かの手によって、駆け引き、正体隠匿、といった概念を「必要最小限」の味付けで加えていったものこそ、ゲーム本来の面白さを引き出す極上な作品へと仕上がっていったのではないか、と。

「私の目指していたボードゲームの形」の行き着く先は、ひょっとすると、これだったのではないか。

先生の著作「遊びの宝箱」にも掲載があると聞き、慌てて購入した。



次に、ドロッセルマイヤーズ店主 渡辺範明先生「ボードゲームの仕事」と題し、ボードゲーム全般に携わる各種の仕事の紹介がテーマの講話だ。

パッと思いつく・つくる系(デザイナー、グラフィックデザイナー等)、・売る系(ショップ、スタッフ、輸入バイヤー等)、・遊ぶ(カフェ、プレイスペース)の他にも、例えば「プロデューサー(編集者)として企画やコスト等管理する職業」、「経営の立場となる」「ジャーナリスト」など、幅広い業務があることをご教授くださった。

印象的だったことは「商材としてではなく、愛情を持って接することのできる人」という言葉だった。

つい先日、某猫カフェの経営者が、自身の経営する猫カフェのずさんな管理により多くのウイルスを飛散させてしまった、という痛ましい事件があった。

猫カフェ『MOCHA』猫パルボウィルス感染を公表し謝罪 関東全店舗を臨時休業に
OLICON NEWS 2018.08.03付
https://www.oricon.co.jp/news/2116870/full/


詳細は不明だが、ネット界隈であちこち噂が飛び交うこの事件も、関係者の「商材として扱うモノに対する愛情の有無」を必要とさせられるのではないか、と再確認した事件だった。

人・モノ・金、商売を行う上で切っても切り離せないこれらに関し、やはりそこには人が介在する。先のボードゲーム王選手権でも人の存在、人のありがたみを痛感した。上に立てば立つほど人、モノ、カネを動かせる社会人として権威、権力を持つことも、この歳で痛いほど勉強した。
細部経済の話は省略するが、「面白い」作品を、時には舞台袖から「面白いよ!」と導く職業も存在するということを教えてくださった。

何より、「ボードゲームは好きだけれど、だからといって何ができる、というわけでもない」という若者に向けて、「そんなことはない!」と陽光を導いてくださったように感じた。


3つ目はニシヤマエリカ先生による「ボードゲームがつなぐ縁」の話。
これまで数多くの婚活パーティにボードゲームを活用されたという先生の、その活用法を伝授するといった内容の講話だ。

私自身が既婚者ゆえに直接参加したことはないのだが、聞くところによると、婚活パーティとは、先生の話では「1対1でしゃべり→あとはフリー→2、3人の名前を書いて発表、晴れて同じ名前が揃ったならば成立、おめでとう!」という流れだとか。
私の聞く限りだと、それに加え、途中に簡単なマスゲームが入る。しかも、手を繋いだり、一緒にダンスをしたりなど、軽いスキンシップを取り入れたもの、という、それにボードゲームがどう関わってくるのか、大変興味深かった。

ニシヤマ先生の方法は一風変わっている。

まず最初に「ボードゲーム」を持ってくる。しかも「グループ戦」だ。
キャプテン・リノを例に挙げたが、グループ対抗の、しかもドキドキが「吊り橋効果」を呼ぶのだろう。なるほどなるほど。
その後盛り上がって話してもらい、その後、もっと話したい相手を封筒にこっそり入れて渡してもらい、あとはご自由に、といったスタンスだ。

スキンシップもない。その上、勝ち負けの判断も曖昧なので、躍起になって勝敗を意識するといったこともないだろう。

その上、以前とある方のツイートで「女性は(ボードゲーム中の)男性のココを見ている」という話題で、相手の口調や、カードをさばくてつき、相手のエスコート等々をそれとなく観察しているらしい(全ての女性がそうであるか否かはさておき、諸所の不満点や自分がされて嬉しい行為が相手の印象として心に残るという点は男性視点でも同意できる)
企業のアイスブレイクでボードゲームが取り入れる話は昨今よく聞く話だが、これを婚活パーティに応用、組み込まれたという点に、大変感動を覚えた。

講演中は実際に「テレパシー」というゲームを体験する。
あるお題に沿って全員が回答を一つだけ書き、自分以外に一人だけペアを作ることができたら成功、というゲームだ。
テーマは「ホラー映画に出てくるもの」
ほぼ全員がボードゲーマーという状況の中、「お墓」「貞子」「ジープ」「ベッド」などが上がるも、いずれもペアが完成しないという激ムズコースとなる。
ニシヤマ先生「じゃあバンちゃん!」
私「えーと、「チェーンソー」」
後方から「ありましたー!」の声が上がる。拍手喝采、見事ペア成立。
(のちにこの方が、恐れ多くも「ふうかのボードゲーム日記」http://fu-ka.livedoor.biz/archives/1853859.htmlで知られるふうか氏だったことを知る。あわわわわ……。)


三講演を通じ、やはりボードゲームは「人」の世界だと実感した。

草場先生の「なかなかほい」を遊びながら、私はつい涙腺が緩んでしまった。
それはおそらく、この伝統遊戯が持つ温かみ、勝ち負けのヒリヒリしたものとは別の、人間が織りなす面白さがあるからだと、その場で実感した。
渡辺先生の紹介された多くの職業を拝聴しながら「遊ぶだけに留まらない、ボードゲームの世界を通じ、もっと社会的に貢献できることがたくさんある」といった、父性的な導きを感じ取ることができた。
ニシヤマ先生のコミュニケーション術を体験しながら、ボードゲームをただ遊ぶ中では捉えきれなかった多くの側面や可能性が秘められていること、それは対人コミュニケーションと殊更相性が良いことを伝授された。

いずれも「人と人」とが織りなす世界だ。

昨今のツラい事件、とりわけ、自分の居場所、存在感、自分自身の価値観や立ち位置について、時折ふと立ち止まってしまい、不安定な足場に気がついた瞬間から震えが止まらず、泣き出したり、逃げ出したり……。

そんな時、特効薬とはいかないものの、触媒としてのボードゲームが存在し、ボードゲームを通じた「人間の存在」、ひるがえって「相手を通じるからこそ見えてくる「自分自身の姿」」があるのかな、と考えた。
もちろんそれらはボードゲームに限らず「何かを真に楽しんでこそ見えてくる姿」であるはずだ。
「人を作るものは人である」その根本が揺るぐことは決してないはず。
しかるに、今回の三先生の講話を拝聴し、人を癒し、人を支え、人を形作るそれら要素としてのボードゲームの持つ多くの可能性を学び、そして、それら可能性の断片は、人間自身が本来持ち合わせている「真の欲求」に根付くものではないのか、と実感した。


こんな私でも、まだ、頑張れそうだ。
そう思えると、なんだか心がポンポンと弾み、会場を出た後もしばらくは高鳴る興奮を抑えきれなかったのであった。








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