番次郎の盤上万歳!!: 創作ボドゲ落語その三「大捕り物」

2018年8月9日木曜日

創作ボドゲ落語その三「大捕り物」

ボードゲームをテーマに創作落語を考えました。
少々荒削りとなっておりますが、ご了承ください






昨今でも石川五右衛門と並び、大どろぼうの代名詞といえばご存知「ねずみ小僧次郎吉」でございましょう。
義賊という名を冠しまして、大きな屋敷に忍び込み、千両箱を小脇に抱えては、身代のないあばら家にそっと小判を差し入れまして、己は闇夜に消えて行く、なんてまぁ、さながら大江戸版のサンタクロースといったところでございましょう。

笑ってばかりも要られません。騒ぎを聞きつけ跡を追いますが、いつもほうほうの体で逃げられる、銭形のとっつあん的な役回りも存在するわけでございまして

「あーあー、昨夜も逃げられちまったでやんすよこんちきしょう、あの逃げ足の速さ、なんとかならねでやんすか」
そう毎日口に致しますのは、「くせ者じゃー出会え出会えー!」のかけ声でおなじみ、御用役人め組の子分、八っつあんでございます。
「うるせえうるせえ!八、お前んとこはまーたあのねずみ小僧の野郎を逃がしちまったのかい。まったく。これじゃ代々続く「め組」の名がすたるってぇもんだ」
「でも親ビン、奴の逃げ足の速さっつったら、江戸中で一、二を争うほどの健脚だって評判、親ビンの耳にも入ってるんでやんしょ?」
「まあな、だがな、俺だって毎度一泡吹かされてばっかだとよ、そのうち日本橋魚河岸の越前ガニになっちまう。」
「なんとかならねえもんでやんすかね」
「そこで妙案だ」

親分はそう言うなり帳面を取り出しまして、サラサラと格子模様を書き記します。

「親ビンこれは何です?あっしが見るに、囲碁盤か何かだと思うんでやんすが」
「八よ、実は先日物知りの長者様に聞いた話なんだが、南蛮渡来の子どもらっちゅうのは、これでいつも遊んでいるんだと聞いたのさ。こりどおる、とか言っとったかな」
「長者のお子さんは福島のご出身でやんすか?」
「それはままどぉる」
「あっしは何処もすり傷なんぞ…」
「オキシドールと言いたいのかこの馬鹿!とにかく、この盤面は御江戸八百八町、これからわしとお前さんは、盤面のはじとはじから一手番ずつこの駒を進めていくんだ、でな、先に相手のはじの方に駒を進めたほうが勝つ」
「へぇ、駒っつったら王将やら飛車やら頑強でイカツイものと相場が決まっているんでやんすが、南蛮渡来の駒なんてぇのは、何だかこう、ひ弱なものでやんすな」
「それはともかく、ただ逃げるだけじゃない、八百八町の長屋には長ーい塀がつきもんってんだ。この駒を進める代わりに、塀を一個立てることもできる」
「親ビン、それじゃ完全に囲い込んだ方の勝ちってわけで…」
「まあ慌てなさんな。実は完全に囲ってしまってはいけない、という決まりになっておるらしい」
「おかしな決まりでやんすな」
「窮鼠猫を噛む、ということわざを知っているか八よ、追い詰められたネズミってのは、勢い余って猫を噛んじまうこともあるんだ。だから追い詰めるんじゃなく、必ず逃げ道を一つ確保してやる、古くは兵法の指南書にも書いてあることじゃ」
「よしきた!やり方はわかりやしたぜ親ビン。早速この花の御江戸の大捕り物、早速始めると致しやしょう!」

親ビンと八っつあんは向かい合いまして、早速駒を手に取りまして、互いに両端へと歩みを進めます。

「よし、これで右半分を塀で囲ったでやんす」
「八、相手の進路を囲うってことは、自分の進路をも塞ぐってことを、忘れちゃいかんぞ」
「わかってやすぜ親ビン。いざとなったらこの塀を乗り越えてですね」
「インチキはいかん」
「穴を掘って塀をくぐったり、バイクに乗ったり…」
「…お前さん、映画「大脱走」のスティーヴ・マックイーンを知らないなんて言わせねぇぞ」

時刻はとうに午の刻を過ぎてはおりますが、親ビンと八っつあんの熱戦は続いているわけでございます

「親ビン、もし、ですがね、いや人生に「もしも」や「あの時」なんて言葉、あるはずがない、常に前を向いて進め、人間の目は、前を向くように…」
「細かい御託はいいから、さっさと要件を言え!」
「親ビンのさっきの手でやんすがね、あっしが左にこう駒を進めると…ほら、もうあと2手で終いになるんでやんす」
「ああ!今の待った待った!」
「親ビン!今のご時世、大相撲の「待った」にだって罰金があるでやんす。」
「くぅ〜参った、降参じゃ。ここは大人しく負けを認めるとするめいか」
「酒はぬるめの燗がいいでやんす」
「この程度で祝杯なんざ一億万年早いわ!ああもういい、もう一度勝負だ、次こそ絶対に勝つ!」

その後、何度も何度も勝負を挑む親分でございましたが、八っつあんの腕っ節にあれよあれよと切って捨てられる親分。

「親ビンどうするでやんす。これであっしの29連勝、藤井聡太も裸足で逃げるでやんすなぁ。」
「うむむむ…よっし!こうなりゃ奥の手だ。おいカミさんよ、羽織を持ってきておくれ」
「どこに行くでやんす?」
「八、ちょっとばかり時間をくんな。なぁに、すぐに戻ってくっからよ。ちょっくらねずみ小僧次郎吉んとこで弟子入りしてくる」


おあとがよろしいようで





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