2019年7月17日水曜日

そっと、手を取り合ってー北海道ボドゲ博1.0備忘録ー

参考:番次郎の盤上万歳 勇気一つをともにして ー北海道遠征記 初日ー 2018年12月10日
https://hibikre.blogspot.com/2018/12/blog-post_10.html


出発にごたごたが続くことなど日常茶飯事だ。
前日の睡眠不足に忘れ物、飛行機の遅延に天候の急変etc,etc…。一流の経済アナリストですら株価の予想にあれだけ苦戦を強いられるのだから、一個人である僕の失敗談、経験談なんて実に些末な出来事に過ぎない。


「好事魔多しと言いまして」
Twitterではおどけて見せたものの、結局のところ、僕の膝は終始ガタガタと震えたまま、昨年冬以来となる新千歳空港へと着陸した。





北海道ボドゲ博1.0
「ボドゲで北海道を熱くしようぜ!」
そう銘打たれた今回のイベントは、小樽市を中心に活動を繰り広げるサイコロキネシス様を中心とした個人と有志の集いによる、北海道全体を盛り上げることを目的としたボードゲームの展示・頒布会である。

直前に募集したサークルは、深夜に募集をかけたにも拘らず翌朝には36ものブースが翌朝で締め切られるなどの人気と期待を寄せられていた。
OKAZU brand、TUKAPON、Cygnusなど、国内外でもその名を馳せる有名サークルが次々に名乗りをあげる、そんな中に一人、名もなき私のような出展者が、事もあろうにボードゲームのイベントでボードゲームを販売しないという特殊なサークルがひょっこり混じるなど、当の本人ですら知る由もない。
微力ながらも何か一体となって盛り上げることはできないかと、喜び勇んで参加フォームのボタンを押したのだ。

申し込んだまでは良かったが、肝心の頒布作品まで頭が回らない。
なにせ当の本人は、5月開催のゲームマーケット春で己の全精力を使い果たし、次のイベントどころか次回作の展望すらままならない状況だったのだ。

新作はないけれど、何かしらの形で応援できるものを、

そんな「せめてもの」といった想いから、面白半分にチラシを作り、来場者用のおしぼりを持参することにした。

おしぼりの調整は前日まで続く。
紙媒体が中心のイベント。こと、水回りのものは避ける必要がある。
そこで信頼あるColemanの保冷バッグを急遽買い揃え、駅の近くに有料で氷を調達できるスーパーを確認したのち、氷を詰める作業に専念した。

明日の道内、天候は曇りのち雨、危惧されていた炎天下もなく、道内全域は涼しくなる見通しとの予報。
そんな中、ゲームマーケット秋〜盤祭1st.〜から続く(ある意味余計な)施しに「私が余計な手を加える必要など無かったのでは?」といったジンクスすら頭をもたげた。

期待度とともに高まる、不安と緊張
何度か出展したはずの僕ですら、昨夜は眠ることに苦戦したくらいだ。運営する側のスタッフの気苦労は計り知れない。

午前11時30分
テレビ塔の2階ではオレンジの法被をまとったスタッフの面々が、広々とした会場を所狭しと動き回っていた。
「よろしくお願いします!」
会場一面に響くような声で挨拶をする僕。
「うるさい!」という返事を一瞥し、僕はひとり、設営を開始する。

長い距離を旅し、津軽海峡を越えた我が子(小冊子)。
丁寧に、大切に、この手で包み込みよう、そっと卓上に配置する。

準備完了。
そのほかのサークルも今や遅しとそろい踏みしている。
サイコロキネシス代表の室田様が、直接おにぎりを配って回る。
地元のコンビニエンスストア「セイコーマート」で購入したばかりの、大きいサイズのおにぎりだ。


時間ができたので、パンフレットに軽く目を通す。
「北海道ボドゲ事情2019」と題し、北海道全域のボードゲーム関連スポットが丁寧に綴られている。
これらパンフレットやスタッフの動きなどをひとつ取り上げても、本イベントがボードゲームに初めて触れる方やイベントそのものに初めて足を運ばれる方も含めた多くの愛好者を対象としたもので、それらに対し、十分すぎるとも言える配慮と、最後までそつのない心配りがなされたものであるという一片が伺えた。

応えなきゃ。

とはいえ、当方は番次郎「書店」と屋号を打つものの、基本私のサークルは、執筆から広報、販売促進から総務、丁稚に至るまですべて私一人が受け持っている。
「劇団ひとり」さながらのユニットだ。

隣のブースでは、道内のサークルである「のんたソ」様こと紅葉クレープ率いる北情報大森川研究所の方々、少し離れた場所では総帥率いるゲームカフェぶんぶん様、ClaGla様とタッグを組むTUKAPON様ら有名サークルが一堂に会し、各々連携を取りながら作業を分担している。
目の前では、こちらもゲームマーケット春に多くの方からの反響を寄せたNatrium lamp Games様、くじらだま様、アソビ・ツクース様、角刈書店様らが合同企画と称しイベントを立てているとのこと。

売るのも呼ぶのも、何から何まで孤独の作業となる私は、無駄にセコセコと体を動かすことで気持ちを払拭した。

しばらくすると、道内で活動される自称えぞのなぞの木工人、こと、「くらいみなる」様が、面白いものを見せてくださった。



聞けば、明治時代に作成された(という前提の)早押しボタンの復刻だという。
見た目だけではなく、強く叩くことでバン、バン!と甲高い音が鳴り響く。
細部の時代背景まで練り込まれた各種作品に「これぞ紳士の嗜み」のようなものを垣間見た。

午後13時、開場30分前。
頃合いを見計らった上で、事前に用意したおしぼりを配布する。
暑いさなかの待機中に汗でも拭いて涼んでもらおうと、こちらが勝手に用意したものだ。本イベント全体を取り仕切る室田さんは快くOKを出してくださった。
13時に配布を開始したおしぼりはみるみるうちにストックから消え、13時20分の段階で実に194個、200個近くのおしぼりを配布し終えるに至った。
13時25分、「待機列が200人を超えました!」とのアナウンスが入る。
改めて本イベントが、多くの人の期待を集められたのかが伝わった。

応えなきゃ。

義務感に似た思いを胸に、僕は再度ふん!と強めに息を吐く。


午後1時30分
カウントダウンのアナウンスとともに、開幕!

私のブースは開幕直後は静かなすべり出し。
早押しボタンの物珍しさと、徐々にトーンの高くなる売り声、
それらに呼応するかのように、来場者の目線は徐々に、ゆっくりと、こちらに興味を注いがれる。
謎解きに興味を持ってくださる方
クイズが大好きな方
ツイッターの4コマをずっと応援されていた方
ネットワーク上では伝わりにくい、直接お会いできるイベントからこそ届けられる「応援してます!」の声は、どんなイベントでもじんわりと胸に残るものだ。

昨日ハッスルしすぎた声の調子など構うことなく、僕は声帯がつぶれるんじゃないかと自覚するほどあらん限りの声を出し、本を頒布し、無我夢中になって問題を読み続けた。
だから、というわけではないが、会場内の細部状況を事細かに観察する余裕など到底持ち合わせてはいなかった。
目の前にいらっしゃる方々に一冊でも小冊子を届けたい、その一心にすぎなかったのだ。


4時間という時間は、怒涛のように過ぎ去って行った。

「終了でーす!」
会場内にアナウンスが流れる最中も、僕は枯れた声をなんとか絞り出し、ひたすら問題を「叫んで」いた。

目の前があたかも摩周湖の霧の如く、白く、ぼんやりと照り映える。

来場者は終始絶えることなく、閉園の時間まで、多くの方が購入に、試遊にと足を止めてくださった。

ふうと息をつき、後方に用意されたイスに腰を下ろす。
気がつけば上半身はエプロンまで汗にまみれ、スプレータイプの喉のクスリは半分もの量が消費されていた。

いつもならここで開放感とともに「やりきった!」という気持ちも芽生えるはずなのだが、あまりに疲労が重なったからか、うまく笑顔が作れない。

そそくさと梱包作業を開始し、テレビ塔を後にする。
夕方の北海道は相変わらず曇天で、時折小雨の様相を見せていた。
からりとした風が吹き抜け、汗にまみれた体からスッと体温を奪い去る。
聞くところでは、イベント開催中、札幌市内に大きな天候の崩れは無かったとか。
ついに天候にまで支えられるイベントへと成長したのか、と、ひとりうそぶきながら、僕は足早にホテルへと向かった。


公式発表によると、当日の来場者は674名と発表された。

https://twitter.com/Psykorokinesis/status/1150186457857814528

個人が行ったアンケートでは800人以上を予想する方が全体の3割を占めるなど、多くの方から注目を集めた今回のイベント。
それだけに、会の終了後からネット上でも多くの意見が飛び交っている。
多くの期待や次回に向けての要望など、すべてに目を通したわけではないが、ブースの内外問わず様々な意見が見受けられる。

僕は今回、小冊子を「頒布」に、足を運んだ。
敢えて販売(販売:売りさばくこと(広辞苑より))ではなく頒布(頒布:広くゆきわたるようようにわかち配ること(同))と使い分けた。
言うなれば「こうした楽しみ方もありますよ」と声を掛けて回ったに過ぎない。

改めて、今回配布されたカタログをパラパラと眺める。
印刷費に場所代、会場の維持費等も加えた金額を、わずかな入場料に抑えられたことは本当に頭の下がる思いだ。
ゲームマーケット大阪からチラシを配布して周り、地道とも言える活動でスタッフは道内外を回っていた。
それらに追随する形で、ある人は「#ボドゲ博ミシュラン」「#飯テロまでがボドゲ博」といったハッシュタグを用いタイムラインを賑わせた。
ある人は今回に向けての新作を用意された。
ある人は当日限定のおまけやゲーム、限定グッズなども用意された。
スタッフの熱に共鳴するかのように、多くの出展者が「俺も」「私も」と自ら手を挙げたのだ。

みな一様に「こうすると楽しいよ」といった気持ちがあったように思う。

それは決して「してあげた」といった傲慢な気持ちではなく
「今も楽しいけれど、これがあると、これをこうすると、ほら、もっと楽しくなる」
そんな提案が数多く取り上げられたように感じ取れた。

あたかも、何でも子どもの言うことを聞き入れあれこれ手を回すのではなく、そっと手を引き「こっちへ行こう」と、楽しい方向へと誘ってくれる親であるかのような。

北海道ボドゲ博の今後が、まさに北海道らしい、広大で、父性溢れるイベントとして、今後もあり続けますよう。
その一端に、僕のような単独のブースでも何かしらの一端が担えたならば、これにも勝る喜びはないのである。

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