2019年9月17日火曜日

学ぶこと、奢らないこと。〜バネスト20周年記念ボードゲーム会に参加して〜

名古屋市北区のゲームストア・バネストが今年で20周年を迎える。
それを記念し、20周年記念ボードゲーム会と銘打たれた大規模なゲーム会が開かれるのだという。

開催の知らせを耳にした私は予定の有無など考えずに申し込みを済ませた。
ゲームマーケット秋に向けての入稿や来週に迫る神戸三宮ボドゲフリマの準備等が差し迫る最中、後先を一切考えることはなかったのだ。まあ、いつもの私である。


バネスト記念ゲーム祭とは、今年で20周年を迎えるゲームストア・バネストを迎えての大規模なゲーム会で、バネストの店舗にほど近い北区役所の講堂を1日貸し切り、混乱を避ける為か入場者を限定した上で、総勢30卓ものゲームが一堂に会する大規模なゲーム会となる模様である。

厳正な抽選の末、15番の固定卓を拝命された私は「この晴れの日に相応しいボードゲームとは何か?」といった難問に、出発の直前まで延々と一人議論を重ねていた。
当日は定番の軽いゲームからテラフォーミングマーズのような重量級ゲーム、さらには、能登ごいた保存会長野支部がごいたを教授する卓や、カルカソンヌ日本選手権出場者と直接対戦できる卓、今話題の国内版マーダーミステリーが体験できる卓なども用意された。
わいわいからじっくりまで、ゴージャスかつ個性あふれるラインナップの中で、果たして自分の特色を活かしせるものは何か、何か…。

取り急ぎ、大勢でもプレイできる作品と、バネスト通販のラインナップでは目にできなかった作品を中心にふるいにかけ、加えて、先日奮発したばかりの本格派早押しクイズ機を持参することにした。


朝8時30分、新幹線は異常なく名古屋駅に到着。

腹ごなしと気合を込めて駅ホームのきしめんを勢いよくすすり、会場となる名古屋市北区役所講堂へと移動した。

会場内はすでにスタッフと思しき面々がテキパキと設営に取り掛かっており、右へ左へと活発な動きを見せていた。
集合時間の30分前に到着した私ではあったが、すでに愛知、滋賀、三重など中部地方を中心に、関東はおろか、福岡や台湾など、国内外を問わずそうそうたる顔ぶれが揃い踏みした。
中心で動くのは「今夜もアナログゲームナイト」メインMCを務め、店長の中野さんとも親交の深い太陽皇子氏だ。

適度に空調の効いた会場の中心では、今回の目玉となるトゥクトゥクウッドマンのタイムアタックが、金の屏風が配されたステージ上では東京・三鷹のボードゲームショップ「テンデイズ」様から提供のあった巨大スライドクエストや巨大ドクターエウレカなどがところ狭しと設置されていた。
いつものイベントの如く、私はちょこまかと設置を始める。
初お目見えとなる早押しスイッチはすこぶる快調で、辺り構わずピンポンと元気な音を上げていた。

簡単なミーティングが行われ、午前10時、開場。
しばらく諸注意が述べられた後、11時、いよいよゲーム会が開始される。

この日の中野店長(以下「中野さん」)は、主役となり盛大に祝われる立場ながら、Tシャツにジーパンという、こちらが拍子抜けするほど至って普段着のままで登場。


私の15番卓はいつものゲームイベント同様、開幕はスローペース。
ぽつんと寂しくカードを切ったり、ボタンを押したりなどの行為も、すでに手慣れたようなものだ。
周囲の卓を見回すと、既に多くの参加者らがワイワイとゲームに興じ、現在も根強い人気のテラフォーミングマーズや、国内未流通のディアボロダイスなど多くの作品が賑わいを見せていた。
特に中野さんらスタープレイヤーと一緒にプレイできる台などは引きも切らず活況で、トゥクトゥクウッドマンのスピードチャレンジでは多くのプレイヤーが悲喜こもごもの声を上げていた。

しばらく問題を読み上げていると、早押しボタンのピンポンという甲高い音に誘われたのか、数名の方が足を止めてくださった。
クイズに興味のある方、自信はないけれどボタンを押してみたかったという方、初めて目にする本格派ヘソ型早押しボタンに興味津々だった方など。
その一方で、久しぶりの問題読みに緊張と喉の調子を整えることをすっかりなおざりにしてしまった私は、ものの開始30分も経たずにガラガラ声を露呈し、周囲にあらぬ醜態を晒す羽目となった。いやはや情けなや。

主賓となる中野さんは、デンと座ったまま悠長に構える、といったそぶりを一切見せず、時間を見つけてはすべてのテーブルをハシゴして周り、参加者の一人ひとりに「いつもありがとうございます!」とお辞儀し、同卓を囲んで回っていた。
中野さんは本当にボードゲームが、そして人が、大好きだったのだろう。

クイズを広げる私の卓にも颯爽と現れるや、難問とおぼしき問題にもサラリと回答してくださった。
20年のバネスト店舗とともに蓄積された豊富な知識量と、休暇の合間をぬっては都内近隣のボードゲームカフェへと足を運ぶ、その飽くなき探究心が育んだ産物だろうと私の中で勝手に解釈した。

中野さんはそんな店内で振る舞ういつもの調子で、嬉々としてボードゲームに興じていた。

決して驕り昂ぶることなく、常に貪欲に、新たな発見を求めているかのような。

中野さんの探究心に潜む「源」って何だろう。

学ぶことは純粋に「楽しい」行為だ。
たとえそれが興味本位で調べたことであっても、次へ次へと知識欲が刺激され、今とは別の物に興味が湧く。
クイズなどを作成していると、ひとつの問題の対象に、あれにも関係する、こっちにも派生する、と、樹形図のように様々な広がりを見せる場面に遭遇する。
しばらくした後に、その対象が膨大となり過ぎたことに気がつくと、目の前にそびえる壁のあまりの高さに、為すすべもなく、しばし足がすくんでしまうだろう。

そんなとき、
「大変だから、やめる」か
「大変だけど、続ける」か

人はその分岐点で大きく二分される。

中野さんはきっと立ち止まらなかったのだ。
高い壁を見つめながらも、地道に、着実に、ゆっくりと歩みを進めたのだ。

さらりと書いてしまったが、そのバックには、体力面、精神面、更には、環境面、資金面、等々、見えない部分での残酷にも程近い決断を迫られたのではないか。

だからこそ「皆さんのおかげで」という中野さんの言葉には一層深みが増すのだ。

周りの方々のご支援を大事にする、しかしながら、その言葉の端々に垣間見える、高い叡智と果てなき強さ、そして何より、現状に甘んじることなく、次へ次へと新たな視点へと駆り立てる、果てなき探究心、そして、野心。


程なくして、全体ゲームが開催された。
ゲームは「KNISTER」、サイコロを用いたポーカー形式のビンゴゲームだ。

サイコロを振る人間はその場で指名され、看板キャラクター「ばねこ」のイラストを手がけた「のんだひろみ」先生や、「おぼえなサイコロ」などを手がけたデザイナー「らなとパパ」のラナちゃんら、名前を挙げるだけでも軽くめまいが生ずるほどの豪華な顔ぶれ(自分除く)が次々に選出される。
その上でトップの成績が80点台という激戦が展開された。私のヘボい点数など言うに及ばず。

続いては中野さんに対する質問コーナーだ。
「きっかけは何ですか」「好きなボードゲーム会は何ですか?」等々さまざまな質問が飛び交い、中野さん独自の知的かつユーモラスな視点でバッサバッサと回答を斬る姿が好印象だった。
そんな中、ひとつだけ中野さんが頑として回答を拒んだ質問があった。
「ネガティブは答えません!」
言葉は続く。
「ネガは3倍増しで、自分に返ってきますから」
それはこれまで自己を「子どもだ」とうそぶいてきた中野さんが、一瞬だけ我々に見せた「オトナとしての姿」だった。

会もたけなわとなり、中野さんが最後の言葉を述べる。

「寿命になったとき、ゲームカルチャーが今以上になっているように、新しい発見があること」

中野さんは20周年を迎えたこの日ですら、決してあぐらをかくことなく、常に変わらぬ姿勢で、参加者である我々からも何かを学び取ろうとしていたのではないか。

私は涙腺の緩みをこらえることができず、言葉を締める中野さんに惜しみなく拍手を送った。


会の終始を通じ、中野さんの言葉には「発見」「楽しんで遊ぶ」といったフレーズが端々から伺えた。
常に新しいものへ、失敗を恐れず、一歩一歩と前進する、アグレッシブで、チャレンジャブルな後ろ姿。
だからこそ、多くの方が魅了され、こうして多くの方々がお祝いに駆けつけたのだ。
「カッコイイ」の言葉だけでは括ることのできない、中野さんがバネスト店舗と共に歩んだ人生観すら垣間見える、終わってみれば、そんなイベントだったように思える。



ワンオペの態勢だったため、トイレ以外に席を開けることなく約8時間もの時間を過ごした私は、会が終わるや否や、へなへなとその場に座り込んでしまった。
カフェインで気を紛らわせようとコーヒーをぐい飲みし、周囲の状況に合わせつつ撤収作業へ取り掛かった。

学ぶこと、奢らないこと。
席上での中野さんの言葉は、ゲームマーケット秋の新刊を手がけている私には特段痛切に感じた。
そのためには、飽くなき探究心と挑戦精神、何より、少し息を整えたときに実感できる、周囲の存在のありがたさではなかっただろうか。

私は疲れた体もそこそこに、ホテルで身体を休めることなく、そのまま次の懇親会へと向かった。
多くの参加者の笑顔が弾んでいた。
それはきっと、今回のイベントで中野さんが我々一人ひとりに返してくださった「感謝の証」だったのかもしれない。

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