2020年5月16日土曜日

悪手をつぶしながら 自粛期間創作日誌その8

 今年読んだ多くの著書(具体的には「二十一世紀の啓蒙上・下(スティーブン・ピンカー著)」など数冊)の中で作者が特に言及していたことは共通して「未来はわからない」だ。

 確かにほんの半年前まで、今回のウイルスが世界規模もの厄災をもたらすこと、我が国で蘇が流行し、ホットケーキミクスやマスクが常時品切れになることなど、経済学者や占い師も含め誰が予想できただろうか。

 未来はわからないし、目の前の出来事なんて知る由もない。
 そんなとき、僕は「事実」を大事にしている。
「事実」は「真実」と違う。
 自分の意見に根差す「事実」に対し、「真実」には「相手から見て自分は正しいと思った、などの意見」といったニュアンスが混じってしまう。
「本来はこうだ」「今までがこうだった」と「真実」ばかりを並べる人と僕の意見が衝突してしまうのは、本来自分の考えと地続きとなるはずの「事実」がなおざりにされているように感じるからだ。
「良い学校に入るため勉強しなさい!」、「病気で倒れないよう体を鍛えなさい!」と注意されても、自分の身に危機が迫る状況にならないと動けない性格にも繋がるのかな、あ、いたたた…。
 

徒然草第百十段の言葉を引用する。

 双六の上手といひし人に、その手立を問ひ侍りしかば、「勝たんと打つべからず。負けじと打つべきなり。いづれの手か疾く負けぬべきと案じて、その手を使はずして、一目なりともおそく負くべき手につくべし」と言ふ。(後略)

(現代語訳)
 双六の名人と呼ばれている人に、その必勝法を聞いてみたところ、「勝ちたいと思って打ってはいけない。負けてはならぬと思って打つのだ。どんな打ち方をすれば、たちまち負けてしまうかを予測し、その手は打たずに、たとえ一手でも負けるのが遅くなるような手を使うのがよい」と答えた。


 プロ棋士に限らずボードゲームを得意とする人が「常に先を読む力」を大事にする中、先ではなく「明らかな悪手を一つひとつつぶしながら、その中で自分が考えた負ける確率の最も低い手(=最善手)を打つ」に目先を置いていることが興味深い。 
 余談ではあるが、吉田兼好もこの後に「身を治め国を保たん道もまたしかりなり(研究者も政治家にも言えることである)」と続けている。

「未来がどうなる?」なんて専門家でも有識者でも、ましてや僕にだってわからない。
 有り体に言うと
「ボードゲームカフェ・プレイスペースが通常通り運営再開できる?」
「今年のゲームマーケット秋は開催される?」
なんて、どれだけ悲観的・楽観的に捉えようとも、僕自身が納得できるだけの結論には至らない。


 だから目の前の悪手をつぶしながら少しずつ前に進もう、と、最近は自分に言い聞かせている。
「事実=自分が「良い」と感じたこと」に照らし合わせて行動しよう、と日々心に留めて行動するよう心がけている。


 人気ボードゲームPodcast「ほらボド」今週配信された第313夜は「オンライン収録「ザ・ボドゲノンフィクション①~自粛の実情~」」がテーマだ。
 話題に上がった「クラウドファンディング等を活用した支援」も、僕にとって「自分が良いと感じた事項」に通じる行動のひとつだ。
 見返りを求めた未来への先行投資、ではなく、今困っている相手へ奉仕するような気持ちで、なけなしのお金を投入している。
 もちろん「無理をしない」に、が前提にあって、の話だ。
「ボードゲームカフェ デザート*スプーン」店長の加藤さんも自身のツイキャスライブで「(Board Game Selectionへのクラウドファンディングは)無理をしない程度に」と言葉を添えた。
 支援をする側が倒れてしまうようなことは、支援をされる側に余計な気苦労をかけてしまう。必然的に、前々から資金繰りに苦しんでいる自分ができる支援など情けないくらい微々たる額だ。
 とはいえ、目の前の困っている人を看過できない自分は「気は心」とばかりに支援を申し出ている。

 未来なんて、本当に、誰にもわからない。
 さらに続けると、僕がこの先「番次郎書店」の屋号を掲げながら末長く創作を続けていることすら未知数だ。
 何よりも、継続云々は僕自身が一番わかっていない。
「次回イベントの参加は不明です」なんて言葉が上がってもおかしくないくらい、創作活動は常に「背水の陣」なのだ。
「次に期待します」と意見を頂戴しても「次があるかどうかもわからない」し、「番次郎書店の野望は?」と問われても「(まずは)目の前のことに精一杯努力する」ことしか、今は答えることができない。

 そんな先行きの見えない中、「悪手」とりわけ「人の嫌がること」を一手一手つぶしながら「(自分の考えた)自分と相手、相互が幸せにつながる道は何か?」を、これからも模索しながら行動しよう、相手と自分が共に笑いあえる道を選び、突き進もう…
 綺麗事になってしまうけれど、ここ数日はそんな言葉で自分を鼓舞しながら、目の前の創作活動に勤しんでいる。

 7月はボードゲームイベント「北海道ボドゲ博2.0」が開催を予定されている。
 未来を憂いて動けなくなるより、今はただ「こんな自分でも応援してくれる方々」のため、間近に控えたイベントへ全力を傾注するのみ、だ。




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