2019年7月28日日曜日

伝わる言葉は時空を超えて ー3巻入稿の御礼に代えてー

先日、晴れて拙著4コマ3巻目となる「きょうもボドびよりさん。」の入稿が無事に終わりました。
予定ですと、次回8/18(日)金沢ボードゲームマーケットを皮切りに、神戸三宮ボドゲフリマ、ゲームマーケット秋の頒布となります。

(自書の宣伝・広報といった意味合いのブログではございませんので、ここでの具体的な内容は極力控えます。気になった方は是非ゲームマーケット公式ブログを(リンク先>>http://urx.red/rfv9)ご確認ください)

クイズ、なぞなぞの制作から一線を画し、ただでさえイラストが上手いとも言えなかった私が、数々の縛りを重ねた中でのスタイルを継続し、応援があるのかないのかわからない中、いよいよ3巻目、累計150本もの漫画を世に産み出すこととなりました。

もう一度記述します。
「イラストが上手くはない」
現に私は、4コマを描こうと決めた半年前など、いわゆる「白ハゲ」キャラを描くことが精一杯だったのです。
それでも「イラストを描けるようになったら、そのうち、漫画が描けるようになったらいいな」という、幼き日の秘めたる思いに手が届くやいなや「ならば自己満足でいいからやってみましょうか」と、頭よりも身体が勝手に動きました。
「絵がもっと上手くなったら…」
「面白いネタが浮かんでから…」
そんな「もっと、もっと」といった一切の理由を塞ぎ込み、見切り発車もいい形で4コマを描き始め、投稿するに至りました。

無鉄砲と呼ばれても仕方がありませんね。

それでも心がけたことが一つだけあります。
「出来うる限り、毎日継続すること」でした。

この4コマは、基本的に「描きため」といった形式を取ってはおりません。
アイデア出しの練習も兼ねた上で、常にその日の夜に考えをまとめ、ネタ出しからラフ(下書き)、ペン入れまで、その日の夜にまとめて作業しております。
最近は加えてツイキャスライブ上にて作業キャスなども行いながら、ペンのお供におしゃべりなども行なっております。(大抵しゃべっている間は筆が止まっています…)
こんな作業態勢ですから、時にアイデアの出ない日もあるわけで、沈んだ気持ちで「今日は更新休みます」と告知する時もあります。ハハハ…(乾笑)

7月28日、4コマ作成から今日で作成からちょうど半年を迎えます。
今見返しますと、第1巻の第1話の顔から火が出るほどのイラストでも、当時の丹念に時間をかけ、丁寧に何度も上から線をなぞっていることが伝わります。
とても上手いとは言えない(今でも上達したとは言えない)ですが、とても大好きな、自分の原点となる4コマです。
たとえ漫画というアナログの媒体が電子書籍と形を変えようとも、筆者の伝えたいメッセージは、筆圧やタッチなどを通じ、言ってしまえば、イラストの上手、下手を超越した形で、読者の肌感覚を通じて伝播するものなのかな、と、考えたりするわけです。
それらのメッセージは、たとえ上達しようとも、タッチが微妙に変わろうとも、見る人が見れば、決して変わることがないものです。
時間をかけた作品には、それだけ、見えない部分の熱量が伝わるもの。
何がどうした部分?と問われましたところで、先にありました「なんとなくそんな気がする」ものですから具体的に明示できないのですが、一巻を見返しながら、作者であります私自身が今もって強く、強くそれらを実感しております。


決して高く評価された作品ではございませんが、これからもぼちぼちと続けていきたいと思います。




そして、ここでどうしても紹介したい方が御二方いらっしゃいます。
2巻目を出す、出さないの天秤がグラグラ揺れた際、その発端となった方です。

4コマの1巻を初めて頒布したゲームマーケット大阪のこと。
制作に大きく時間を取られ、特に大きな宣伝・広報活動もできない中、「20部も頒布できたら万々歳だ」と持ち込みました。
そんな時
「応援してます!5冊ください!」
と、拙著の4コマをまとめて購入された方がいらっしゃいました。

少し前に「300部で普通」なんて意見もありましたが、自分の表現する媒体が自分ではない誰かの手に渡り、お金という形で評価してもらえるという行為は、たとえそれが1部や2部であろうとも、少なくとも私にとって、天に昇るような心地なのです。
私の目からは“とめどなく”涙があふれました。
私はマゾヒスティックな性格に加え、非常に涙もろい性格だったのです(厄介極まりない…)

その手に取っていただいた方こそ、「どどめのボドゲーン」で知られるボードゲーム漫画の著者「どどめ(TwitterID:@dodomeBG)」さん、その方でした。

どどめさんはフリーペーパー「外房ボードゲームニュースvol.1」にて、4コマ漫画の連載も決定されたとのこと。
フリーペーパーはボードゲームカフェ「カラハンダ」様「ボドパや」様、蔦屋書店 茂原店 様、にて配布されております。

もうお一方

私の稚拙な漫画を見るに見かねたのでしょう。
講師を務める漫画の講義に呼んで頂き、漫画の基本のきの字もわからなかった私に一から背景の指導をして頂いた、堀場工房のたちばないさぎ(TwitterID:@isappe21)先生です。

私の漫画をご覧になった方は笑っていらっしゃると思いますが、イラストの基本も掴めなかった私は当然「空間パース?ナニそれ?」というレベル、本当に背景の描き方のコツがつかめず、かといって、独学の中では上手い具合に該当する書籍も見つからず、悪戦苦闘しておりました。
そんな私に聴講の機会を与え、理論から実践まで事細かにご教授頂きましたこと、大変ありがたく思っております。
あれから背景も含めてしっかりとコマの中を描くよう心がけ、無骨ながら遠近感をつかめるようになりました。

知識を一つ持ちますと、視点がガラリと変わるものです。
何気なく眺めていた漫画すら、それら空間、とりわけパースなどの配分を意識するようになり、等分や遠近感などをどうしたらうまく把握できるか、といったことも含めて、考えるようになりました。

先生は今度のゲームマーケット秋、かわいいネコをモチーフとした新作を予定されているとのことです。




2019年7月21日日曜日

「楽しみ」を刺激する側へ 北海道滞在記 その2

前回に引き続き、北海道遠征に関する内容です。

番次郎の盤上万歳!!第111回「そっと、手を取り合って 北海道ボドゲ博1.0備忘録」
https://hibikre.blogspot.com/2019/07/10.html

今回は北海道滞在中の、特に北海道ボドゲ博以外での出会いを中心に綴っていきたいと思う。

7/12 金曜
北海道に足を踏み入れたのは、実は前回冬以来、ではない。
ちょうど3ヶ月前だっただろうか。

「(北海道)ボドゲ博、興味はあるけれど、場所が遠いんだよなぁ」

そんな声を耳にし
「んなことはない!ならば今ここで俺が、パッと行って、パッと帰ってきてやる!」
と、勢いそのままに、翌日本当に札幌入りし、そのまま日帰りしてしまったのだ。
いやはや、勢いとは恐ろしい。


3度目となる札幌のボードゲームカフェ「こにょっと。」様



多くのボードゲーム界隈の著名人が通う有名店は、きむち。店長らをはじめ、明るく知的なスタッフが迎える。
胸に描かれた「インストできます」のTシャツがとても心強い。

待ち合わせの時間まで、自前のボードゲームを広げる。
私は特にトランプなどもプレイするので、41、カシノ、ゴルフ、ポートランド、ドゥピトーなどの作品も積極的に勧めて回る。


途中で通された親子連れと、たまたま遭遇した金沢ボードゲームマーケットスタッフの方々と共に卓を囲む。

小学生ほどの見た目のお子さんは翡翠の商人が大のお気に入りで、何度もプレイをしようと持ちかけた。
この辺りが興味深く、新しい作品を次に、次に、とプレイする私のような人間と違い、面白いと感じた作品を、味わい深く、じっくりと何度もプレイするのだ。
人によってスタイルは様々であることを痛感した。

金沢ボドマのスタッフも大変知的で、多くのボードゲームをプレイされていらっしゃる様子。
熱心だからこそ、それらに甘んずることなく、より多くの作品を求め、何より、どんな作品であろうとも全力でそれらを楽しもうとされる。
そんな姿に心酔し、次回のイベントも是非私の方でご尽力できることがあれば、と約束した。

しばらくして、やすらぎ企画のオヨット氏が来店。
私の中で今一番流行を見せる「ラマ」を同卓頂く。

オヨット氏は今回「三村人狼」という作品で北海道ボドゲ博に初出展されるとのこと。
都合により本番は顔出しできないとのことで、作品を先んじて受け渡してもらった。

トリックテイクに、人狼ならではの特殊効果がこれでもか、と搭載された特殊な作品。
かなりのバランス調整が行われたに違いない。
丁寧にバランスよく綴られたカードには、製作者のそこはかとない熱意や愛情が感じられる。


前回、前々回の北海道でも感じたことだが、時に人は無性に「滑稽さ」を欲しがるのではないか。
言うなれば、曲芸師が揃うサーカス団に光る、道化師役を乞い願う部分だ。

歳を重ねるに従い、あるいは、知力、体力、何かしらの力や自信をつけることで、自然とプライドも身についてしまう。
プライドをかなぐり捨て、何かを皮切りに道化の役を名乗り出ることは、とても、とても勇気のいる行為ではないか。

笑顔で対応するきむち店長、それらを支える大勢のスタッフ、終始笑顔の絶えなかったオヨット氏ら同卓された方々。
理解のある常連とおぼしきお客様が笑顔で支え合うからこそ「こにょっと。」が長く、そして多くの方に愛される存在ではないか。
わずかな滞在の中、笑顔で溢れる店内の雰囲気が、そう物語っていた。

オヨット氏と無事に落ち合った後も、引き続きゲームを広げていると、5時間という時間はあっという間に過ぎた
明日のこともあり、こにょっと。様を離れると、外は大降りの雨。
翌日の天候を気にしながら、足早にホテルへと戻っていった。


ボドゲ博の翌日は、大地氏のお誘いもあり、急遽、小樽市はキンダーリープ様へお邪魔する。

木の手触りと飴色の色合いが味わい深い、メルヘンな世界を切り取ったようなたたずまい。

中に入ると、一面、おもちゃ箱をひっくり返したような世界で溢れ、からくりの人形や見たこともないボードゲームが、所狭しと並べられている。

会を催すクレーブラッドの「はた」社長。
ボードゲームに初めて触れるであろう方にも、丁寧かつ紳士的に、わかりやすい口調で説明を繰り広げる。
店内で買い物をする多くの家族連れが、物珍しげにテーブルへと足を運ぶ。

はた社長は、今回のボドゲ博でも多くの国内作品を委託し、持参された方でもある。
委託を呼びかけた瞬間、即座に集められた作品の数々が、このクレーブラッドが持つ信頼の証を物語る。
搬送が困難とされたワードミノオーガナイザーも、自身の荷物の分量を割いてまで持ち込んだほど、作品への情愛を注ぐ方だ。

キンダーリープ様を後にし、短い滞在時間の北海道を後にする。


今回の北海道旅行を通じ、もっと自分は提供する側としてのセンサーを鋭敏に感じ取らなければならないと、強く感じた。

「楽しみたい」
それは多くの人の根底に眠り、何かの刺激を受けることで覚醒し、さらなる刺激を受け各人の持つ興味関心を呼び起こす。

情報化社会が叫ばれて等しい昨今、街を見回すだけで数多くの情報が、あたかもマリンスノーのようにズンズンと降り積もる。
多くの方が口を開けながら「何か面白いことでも、ないかな」と立ち尽くす中、今回出会ったきむち店長、はた社長をはじめ、ボドゲ博スタッフや出展者の方々、キンダーリープ店長や金沢ボドマスタッフなど多くの方が、ボードゲームという媒体を通じ、コミュニケーションの良さ、勝敗そのものが持つ思考の愉しみなど、ボードゲームを媒介とし、多くの感度を刺激しようと試みていたように感じた。

センサーを刺激する側は、時に道化の役を演じ、その影では尋常と呼べない努力を重ねながらも、相手に対しては汗など見せることなく、あくまで平然と、笑顔で接する。
強く、かしこく、何よりカッコいい。

“ほ ほ 蛍こい こっちの水は甘いぞ”

それはまるで、光り輝く蛍の群れを、そっと呼び寄せるように。

北海道という地で「ボードゲームの楽しさに触れるきっかけを待っていた」多くの方々が、今回の濃密な3日間をきっかけに、水の波紋が広がるが如く、輪を広げ、静かに、その小さな一滴が、北海道の大地に大きく芽吹きますよう。


・・・。

からりとした空気から一転し、未だ梅雨の開けない関東は、むせ返る暑さが漂っていた。

帰ってきた。
さあ、次回は私が、そのきっかけを生み出す手番となるのだ。







 





2019年7月17日水曜日

そっと、手を取り合ってー北海道ボドゲ博1.0備忘録ー

参考:番次郎の盤上万歳 勇気一つをともにして ー北海道遠征記 初日ー 2018年12月10日
https://hibikre.blogspot.com/2018/12/blog-post_10.html


出発にごたごたが続くことなど日常茶飯事だ。
前日の睡眠不足に忘れ物、飛行機の遅延に天候の急変etc,etc…。一流の経済アナリストですら株価の予想にあれだけ苦戦を強いられるのだから、一個人である僕の失敗談、経験談なんて実に些末な出来事に過ぎない。


「好事魔多しと言いまして」
Twitterではおどけて見せたものの、結局のところ、僕の膝は終始ガタガタと震えたまま、昨年冬以来となる新千歳空港へと着陸した。





北海道ボドゲ博1.0
「ボドゲで北海道を熱くしようぜ!」
そう銘打たれた今回のイベントは、小樽市を中心に活動を繰り広げるサイコロキネシス様を中心とした個人と有志の集いによる、北海道全体を盛り上げることを目的としたボードゲームの展示・頒布会である。

直前に募集したサークルは、深夜に募集をかけたにも拘らず翌朝には36ものブースが翌朝で締め切られるなどの人気と期待を寄せられていた。
OKAZU brand、TUKAPON、Cygnusなど、国内外でもその名を馳せる有名サークルが次々に名乗りをあげる、そんな中に一人、名もなき私のような出展者が、事もあろうにボードゲームのイベントでボードゲームを販売しないという特殊なサークルがひょっこり混じるなど、当の本人ですら知る由もない。
微力ながらも何か一体となって盛り上げることはできないかと、喜び勇んで参加フォームのボタンを押したのだ。

申し込んだまでは良かったが、肝心の頒布作品まで頭が回らない。
なにせ当の本人は、5月開催のゲームマーケット春で己の全精力を使い果たし、次のイベントどころか次回作の展望すらままならない状況だったのだ。

新作はないけれど、何かしらの形で応援できるものを、

そんな「せめてもの」といった想いから、面白半分にチラシを作り、来場者用のおしぼりを持参することにした。

おしぼりの調整は前日まで続く。
紙媒体が中心のイベント。こと、水回りのものは避ける必要がある。
そこで信頼あるColemanの保冷バッグを急遽買い揃え、駅の近くに有料で氷を調達できるスーパーを確認したのち、氷を詰める作業に専念した。

明日の道内、天候は曇りのち雨、危惧されていた炎天下もなく、道内全域は涼しくなる見通しとの予報。
そんな中、ゲームマーケット秋〜盤祭1st.〜から続く(ある意味余計な)施しに「私が余計な手を加える必要など無かったのでは?」といったジンクスすら頭をもたげた。

期待度とともに高まる、不安と緊張
何度か出展したはずの僕ですら、昨夜は眠ることに苦戦したくらいだ。運営する側のスタッフの気苦労は計り知れない。

午前11時30分
テレビ塔の2階ではオレンジの法被をまとったスタッフの面々が、広々とした会場を所狭しと動き回っていた。
「よろしくお願いします!」
会場一面に響くような声で挨拶をする僕。
「うるさい!」という返事を一瞥し、僕はひとり、設営を開始する。

長い距離を旅し、津軽海峡を越えた我が子(小冊子)。
丁寧に、大切に、この手で包み込みよう、そっと卓上に配置する。

準備完了。
そのほかのサークルも今や遅しとそろい踏みしている。
サイコロキネシス代表の室田様が、直接おにぎりを配って回る。
地元のコンビニエンスストア「セイコーマート」で購入したばかりの、大きいサイズのおにぎりだ。


時間ができたので、パンフレットに軽く目を通す。
「北海道ボドゲ事情2019」と題し、北海道全域のボードゲーム関連スポットが丁寧に綴られている。
これらパンフレットやスタッフの動きなどをひとつ取り上げても、本イベントがボードゲームに初めて触れる方やイベントそのものに初めて足を運ばれる方も含めた多くの愛好者を対象としたもので、それらに対し、十分すぎるとも言える配慮と、最後までそつのない心配りがなされたものであるという一片が伺えた。

応えなきゃ。

とはいえ、当方は番次郎「書店」と屋号を打つものの、基本私のサークルは、執筆から広報、販売促進から総務、丁稚に至るまですべて私一人が受け持っている。
「劇団ひとり」さながらのユニットだ。

隣のブースでは、道内のサークルである「のんたソ」様こと紅葉クレープ率いる北情報大森川研究所の方々、少し離れた場所では総帥率いるゲームカフェぶんぶん様、ClaGla様とタッグを組むTUKAPON様ら有名サークルが一堂に会し、各々連携を取りながら作業を分担している。
目の前では、こちらもゲームマーケット春に多くの方からの反響を寄せたNatrium lamp Games様、くじらだま様、アソビ・ツクース様、角刈書店様らが合同企画と称しイベントを立てているとのこと。

売るのも呼ぶのも、何から何まで孤独の作業となる私は、無駄にセコセコと体を動かすことで気持ちを払拭した。

しばらくすると、道内で活動される自称えぞのなぞの木工人、こと、「くらいみなる」様が、面白いものを見せてくださった。



聞けば、明治時代に作成された(という前提の)早押しボタンの復刻だという。
見た目だけではなく、強く叩くことでバン、バン!と甲高い音が鳴り響く。
細部の時代背景まで練り込まれた各種作品に「これぞ紳士の嗜み」のようなものを垣間見た。

午後13時、開場30分前。
頃合いを見計らった上で、事前に用意したおしぼりを配布する。
暑いさなかの待機中に汗でも拭いて涼んでもらおうと、こちらが勝手に用意したものだ。本イベント全体を取り仕切る室田さんは快くOKを出してくださった。
13時に配布を開始したおしぼりはみるみるうちにストックから消え、13時20分の段階で実に194個、200個近くのおしぼりを配布し終えるに至った。
13時25分、「待機列が200人を超えました!」とのアナウンスが入る。
改めて本イベントが、多くの人の期待を集められたのかが伝わった。

応えなきゃ。

義務感に似た思いを胸に、僕は再度ふん!と強めに息を吐く。


午後1時30分
カウントダウンのアナウンスとともに、開幕!

私のブースは開幕直後は静かなすべり出し。
早押しボタンの物珍しさと、徐々にトーンの高くなる売り声、
それらに呼応するかのように、来場者の目線は徐々に、ゆっくりと、こちらに興味を注いがれる。
謎解きに興味を持ってくださる方
クイズが大好きな方
ツイッターの4コマをずっと応援されていた方
ネットワーク上では伝わりにくい、直接お会いできるイベントからこそ届けられる「応援してます!」の声は、どんなイベントでもじんわりと胸に残るものだ。

昨日ハッスルしすぎた声の調子など構うことなく、僕は声帯がつぶれるんじゃないかと自覚するほどあらん限りの声を出し、本を頒布し、無我夢中になって問題を読み続けた。
だから、というわけではないが、会場内の細部状況を事細かに観察する余裕など到底持ち合わせてはいなかった。
目の前にいらっしゃる方々に一冊でも小冊子を届けたい、その一心にすぎなかったのだ。


4時間という時間は、怒涛のように過ぎ去って行った。

「終了でーす!」
会場内にアナウンスが流れる最中も、僕は枯れた声をなんとか絞り出し、ひたすら問題を「叫んで」いた。

目の前があたかも摩周湖の霧の如く、白く、ぼんやりと照り映える。

来場者は終始絶えることなく、閉園の時間まで、多くの方が購入に、試遊にと足を止めてくださった。

ふうと息をつき、後方に用意されたイスに腰を下ろす。
気がつけば上半身はエプロンまで汗にまみれ、スプレータイプの喉のクスリは半分もの量が消費されていた。

いつもならここで開放感とともに「やりきった!」という気持ちも芽生えるはずなのだが、あまりに疲労が重なったからか、うまく笑顔が作れない。

そそくさと梱包作業を開始し、テレビ塔を後にする。
夕方の北海道は相変わらず曇天で、時折小雨の様相を見せていた。
からりとした風が吹き抜け、汗にまみれた体からスッと体温を奪い去る。
聞くところでは、イベント開催中、札幌市内に大きな天候の崩れは無かったとか。
ついに天候にまで支えられるイベントへと成長したのか、と、ひとりうそぶきながら、僕は足早にホテルへと向かった。


公式発表によると、当日の来場者は674名と発表された。

https://twitter.com/Psykorokinesis/status/1150186457857814528

個人が行ったアンケートでは800人以上を予想する方が全体の3割を占めるなど、多くの方から注目を集めた今回のイベント。
それだけに、会の終了後からネット上でも多くの意見が飛び交っている。
多くの期待や次回に向けての要望など、すべてに目を通したわけではないが、ブースの内外問わず様々な意見が見受けられる。

僕は今回、小冊子を「頒布」に、足を運んだ。
敢えて販売(販売:売りさばくこと(広辞苑より))ではなく頒布(頒布:広くゆきわたるようようにわかち配ること(同))と使い分けた。
言うなれば「こうした楽しみ方もありますよ」と声を掛けて回ったに過ぎない。

改めて、今回配布されたカタログをパラパラと眺める。
印刷費に場所代、会場の維持費等も加えた金額を、わずかな入場料に抑えられたことは本当に頭の下がる思いだ。
ゲームマーケット大阪からチラシを配布して周り、地道とも言える活動でスタッフは道内外を回っていた。
それらに追随する形で、ある人は「#ボドゲ博ミシュラン」「#飯テロまでがボドゲ博」といったハッシュタグを用いタイムラインを賑わせた。
ある人は今回に向けての新作を用意された。
ある人は当日限定のおまけやゲーム、限定グッズなども用意された。
スタッフの熱に共鳴するかのように、多くの出展者が「俺も」「私も」と自ら手を挙げたのだ。

みな一様に「こうすると楽しいよ」といった気持ちがあったように思う。

それは決して「してあげた」といった傲慢な気持ちではなく
「今も楽しいけれど、これがあると、これをこうすると、ほら、もっと楽しくなる」
そんな提案が数多く取り上げられたように感じ取れた。

あたかも、何でも子どもの言うことを聞き入れあれこれ手を回すのではなく、そっと手を引き「こっちへ行こう」と、楽しい方向へと誘ってくれる親であるかのような。

北海道ボドゲ博の今後が、まさに北海道らしい、広大で、父性溢れるイベントとして、今後もあり続けますよう。
その一端に、僕のような単独のブースでも何かしらの一端が担えたならば、これにも勝る喜びはないのである。

2019年7月6日土曜日

否定の気持ちを応援へ ー茂原で出会った女の子の話ー

先日日曜、千葉県茂原市の蔦屋書店茂原店で開催された「蔦屋でボドゲーン!初夏のボードゲーム祭!」というイベントに(遠方でありながら)飛び入りで参加し、あまつさえボランティアまで申し込むに至った。


天候こそ荒模様だったものの会場は活気にあふれ、私の担当する子ども連れのブースは終始人の絶えない人気ブースとなった。

その中で出会った、一人の女の子の話。

どんなゲームでもニコニコと笑いながら楽しむ少し年頃のその女の子は、私の手にしていた「エスカレーション」というカードゲームをしげしげと眺めていた。

この「エスカレーション」、相手よりも多い数を場に出し、出せなくなったら、または出したくなかったら引き取る、引き取った枚数だけマイナス、と、とてもシンプルだが、一つ特殊なルールがあり、例えば「2」のカードを3枚一度に出すことで「6」として場に出すことができるのだ。

簡単なかけ算を要するため、ことお子さんとプレイする際は、ゲーム開始前に「かけ算は出来る?」と尋ねることが多い。関係の有無は定かではないが対象年齢も「10歳から」と表示されている。

女の子があまりに興味深く眺めていたので、いつものように「かけ算できる?」と尋ねる私。
「うーん、九九はできなーい。たし算なら」そう答える女の子。
まあ物は試しと思い、早速プレイすることに。

しかしながら、プレイ中は1戦目から白熱。かけ算ができないことなど何のその、女の子はたし算を駆使し、3の3枚出し(9の値に相当)や、13の2枚出し(26の値に相当)など、大人の私がたじろぐほど巧みにカードを切ってくる。

1戦目こそ辛くも勝利を収めた私だったが、2戦目、3戦目は完全にコツをつかんだ彼女が終始ペースを独占し、4戦目は手札も含め1枚もカードを引き取らない完全勝利を収めるなど、終盤からは彼女の圧勝に終わった。
「もっとやる!もっと!もっと!」
次へ次へとせがむ彼女の顔は嬉しさに満ち溢れていた。


「キミすごいねー!計算できないって話してたのに、すごく上手いじゃない!」
私が手放しに褒め称えると、彼女の口から、フッと、こんな言葉がこぼれた。
「私、ずっと学校でいじめられてたの。だから学校で勉強してないの」

聞くと、彼女は小さい頃から聞くに絶えないほどの醜いイジメに遭い、現在は別の施設に通っているのだという。
現在は小学4年相当のクラスに通う傍、算数の勉強が大の苦手だと屈託のない笑顔で話していた。

そうか、と私は声をかけ、またエスカレーションを広げようとしたところで、彼女の保護者らしきおばあちゃんに連れられ、女の子はその場を去って行った。

「大丈夫だ!心配ない!」の言葉をかけることのできなかった私は、取り残されたエスカレーションをそそくさと片付け、別のテーブルの支援へと回った。


「(お前には)絶対にできない!」
「無理無理!他にやってる人がいるから」
何かを始めようとして声を上げると、多くの方向からそんな助言にも似た言葉を浴びせられる。
本当に受ける。(受けた。)たくさん受ける。(受けた。)
あたかもこちらのやる気を削ぐかのように、ダメだ無理だ真実はこうだ現実を見ろだと言葉を並べる。
それが新規に開拓することであるならば、なおのことである。

でも、ちょっと待って。
それって「自分ができない、自分がやりたくない理由」を、こちらに押し付けているだけじゃない?

目の前に種子を渡され、育てられるか否かは、渡された側の問題だ。
周りの人間が一緒になって、種子の成長を阻害することこそ「やってはいけない」行為であるはずだ。


だから私はそれら否定の言葉を「応援しています!頑張ってください!」の気持ちに変え、時にそれらを贈り物や金銭(支援)という「形」に変えて、送るよう心がけている。


全ての挑戦者に、祝福があらんことを。

笑われて、笑われて

 5月から心機一転開始した日々の4コマが、今日で150話、2年間ちょっとに及ぶ過去の連載文を含めると794話と、800話も目前となった。 今度の4コマも無事に2巻目の入稿を済ませ、次回イベントで1,2巻も含めた初めての頒布となる。 日々苦しい執筆だった。 心に響くしんみりとした言...