2019年9月7日土曜日

「「なんとなく」じゃダメ!」 根拠を結ぶことで広がる世界

今回は「何かに理由をつける」を今後全ての私の作品に心がける、という話をします。


今年の夏、読書好きを自称する私が、暇を見ては幾度となく読み返した本が「岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた(ほぼ日刊イトイ新聞・編)」だった。





任天堂の故・岩田聡社長の言葉をまとめ編集された著書で、あたかもおとぎ話を語るように綴られた珠玉の言葉の一つひとつに、私は涙を抑えきれなかった、そんな本である。

その中に登場する「ある言葉」を紹介したい。

ゲームの中に意味もなく置かれている石ころがある。
「どうしてこれを置いたの?」と訊くと
「なんとなく」とか言うんですけど、
「なんとなく」はいちばんダメなんですよ。
(p.159 「岩田さんの言葉のかけら その5」より)

なんとなく、というふんわりした感覚、フィーリング、よくわからないけれど心地の良い配置、
それらは一まとめに「個人の美的センスに委ねられるもの」と斬り捨てられる問題かもしれない。

しかしながら、私はこの言葉を目にするやいなや、身体中に電流がほとばしるほど強い共感を覚えた。


手前味噌ながら、少しだけ自書のネタバラシをする。

前回頒布した拙著「アナログゲームのなぞなぞブック2」の中で、ページのフッター部、印刷用語では「地」と呼ばれる部分に、小さく「魔女」が飛んでいたことに気がついただろうか。


フッター部分に黒く帯を引くことで、ある程度の視線制動といった効果に加え、ビル群を配置することで全体的な雰囲気の醸成を考慮したものだ。
「夜空に魔女が飛んでいたら…?」というアイデアが思い浮かんだのはしばらくした後。単に飛ばすだけではなく、ページ毎に飛行部分を変えることで著作の中の世界に少しでも没入してもらいたいと考えた。
加えて、自分が今どれくらいのページを読了しているかの目安としても使える。

さらにイメージを発展させ、最終ページにはこんなギミックも用意した。




少々見づらい点ご勘弁を。
ページ数に合わせて、魔女が「39」と口にしているように見えないだろうか。
このページは「あとがき」が感謝の言葉とともに綴られており、このセリフも「39(サンキュー)=thank you!」に掛けたジョークとなっている。


以上の連想ゲームは、仮にフッター部分がランダムに配置されていたならば、おそらくここまで凝りに凝ったギミックへと結びつかなかっただろうと解釈している。


ランダムに配置することは、私の中で「考えをそこで中断(SAVE)すること」を意味する。
どうしてこれがここに?どうして?なぜ?本当に必要?
そんな疑問を自分に突きつけながら日々創作活動を続けていると、次第に他からぬ自分が「いいと思ったからいいんだ!」と自暴自棄になり、果ては、考えること自体を放棄してしまう。
それは性格や環境といった根深い問題ではなく、単に今日の気象が悪かった、や、たまたま今日の機嫌が良くなかった、といった、実に取るに足らない問題であったりもする辺りが少々厄介だったりもする。


何かしらの理由をつけ、小さいながらも根拠をつけると、先に挙げたような「次への創作バトン」が産み出される可能性がある。

自慢話が続き恐縮だが、もう一例、先日名古屋で活躍されるNEZ様から、テラフォーミングマーズの企業カードのような制作カードを作りたいとお誘いがあり、喜び勇んで資料を提供した。

その際に出来上がったカードがこちら。


着目して欲しい部分は星の配置である。







ここも「岩田さん」で読んだ言葉を念頭に「ランダムではなく、何かしら根拠に基づく配置」を考えた。


「サイコロ」の部分から「魔女」の部分まで、上手く繋げると




制作して頂いたNEZ様に敬意を表し、星座のような「NEZ」の文字が浮き上がるギミックとなるよう配置した。


これら創意工夫、カッコつけると「デザイン」の一端となるのだろうか、それらは決して表立って主張する機会が多くはない。
むしろ私の中で、これらデザインの本質は「縁の下の力持ち」のような、周りに気がつかないうちに実は陰で支えていました、といった立ち回りでこそ活きる存在ではないかと考えている。
先日も「直角ではなく敢えて斜め右12度に折り曲げた横断歩道」が話題となったが、目にされた方の中には「何度も通ってはいたが、気がつかなかった」というコメントが数件上がっていた。

決して目立つ事はなく、「言葉では上手く表現できないけれど、なんとなく、いい!」に訴えるもの。
だからこそ、一辺倒ではなく本質まで理解が届き、言うなれば「わかる人だけがわかる」中身の本質の良さに気がつく、そんな「真の理解者」には感謝の言葉でいっぱいだ。

たとえ気がつかなかったとしても、所詮は陰の存在、腐ることなく「そんなもんだ」と割り切り、一部の「心良き理解者」のために、もうひと頑張りできるような。
創作活動のサイクルとは、目の前に提示された見返りに加えて、創作を続ける自分を真から理解していただける方へ「最大級のご奉仕」という意味合いも含まれているのだと、最近はその方向に考えが向く自分だ。

まだまだヒヨッコの自分。これからも岩田さんの「なんとなくは、ダメ!」の考えを創作活動の軸とし、秋の新刊も含めた制作に力を入れたい。
そして稚拙ながらも私の作品を本当に心待ちにされていらっしゃる方々に最大級の御恩返しができますように、こちらも最大限の努力で御恩返しをせねば、と、再度気合いを入れ直したのであった。


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