2019年9月25日水曜日

孤独に立ち向かう 神戸・三宮ボドゲフリマ遠征記

先週から続く関東外への遠征に、正直、気持ちよりも身体が先に悲鳴を上げた。
抜けない疲労に、抜ける毛髪、ざらつく肌に、テカる脂汗……。
こと、創作活動とは、自分の中の全てを表現するに留まらず、聞いてもらう相手を想い、尽くす気持ちが整理された上で、何かしら自らの犠牲を伴う行為なのかもしれない。

勢いに任せて出展を申し込み、気がつけば出発が目の前に差し掛かり、アワアワと無駄にもがいているうちに、あれよあれよと三宮の地へと降り立った。

会場となるkiitoは、過去にも盤祭1stなどのボードゲームイベントが開催された場所でもある。
新幹線の新神戸駅から程近く、近隣の宿泊施設も豊富、足を伸ばせば明石、加古川、姫路なども行動圏内というロケーションだ。

今回私は、前日入りの予定を組んだ。
過去の盤祭1st.では会場設営のボランティアに名乗りを上げ、設営や片付けなどをお手伝いした。無論今回も喜び勇んでボランティアスタッフへの参加を表明した。
会場までのアクセスをトチり遅刻を余儀なくされたという前回の経験を踏まえ、今回は前日から現地入りし、更に会場から徒歩圏内のビジネスホテルを予約するという徹底ぶりだ。

とはいえ、それほどがんじがらめの計画を立てたわけでもなく、前日、後日の予定などは特段定めず、空いた時間は自由気ままに周辺を散策することにした。

手元のボドパスを頼りに、まずは姫路市のB-cafe様へご挨拶に伺う。



店内は所狭しと新旧のボードゲームが並ぶ。国内未流通のベガス拡張「Boule Bird」のような、設置してあるカフェも少ないはずの作品も立ち並ぶほどだ。
しかしながら決して雑然ではなく、どの作品も中身まで丁寧に整理、管理されている様子で、過去に私の作成した小冊子も、早押し機の中で大切に保管されていた。

店内をポッドキャスト「豚の鳴き声」で耳にするアタック氏が明るく出迎える。
美味しいコーヒーが評判と看板にある通り、味わい深く、香りも豊か。苦味はほどほど、口の中で爽やかに広がる酸味がフルーティでとても美味しい。
ついついお代わりしてしまった。

素敵な雰囲気には、自然と気心の知れた仲間が集うもの。
しばらくすると常連と思しき多くのお客様で賑わいを見せた。

お礼を済ませ、姫路市の近傍、加古川市に所在する「駒の時間」様に移動する。

明日の出展を間近に控え、店内には多くのボードゲームが箱詰めされ、多くの方の手に渡る日を今や遅しと待ち構えているかのよう。

komaさんは変わらずの笑顔。
昨晩は遅い時間まで「スライドクエスト」のフィギアを塗装していたとのこと。
連日の作業で疲労もあったと察するが、そんな素振りを微塵も見せず、笑顔も交えながら他愛もない話をやり取りした。


加古川を後にし、この日の最後は知人と落ち合いながら、神戸市のトリックプレイ様へ。

「東にバネストあらば、西にトリックプレイあり!」
そう知人が紹介するお店では、こちらも国内外を問わず多くのボードゲームが整理されていた。
店内では日本語版の発売も控えた「ジャストワン」で盛り上がりを見せていた。

店長の明るい笑顔を眺めるうちに、この方は本当にボードゲームが好きなんだ、と、肌感覚ではあるが痛く、強く、それでいて確かな感覚で伝わる。
そんな暖かく、居心地の良い雰囲気のお店だった。


翌朝
懸念されていた悪天候は何処へやら、朝8時の段階では路面がほぼ乾燥し、風も涼しく穏やかで、空には少し厚めの雲が一面を覆う程度だった。
暑くなく寒くもなく、開催日としてこれ以上のない好天に恵まれたのではないか。

ボランティアスタッフとして動く予定の私は、ギッシリと詰まったキャリーケースを肩にかけ、一路会場となるkiitoへと向かった。

場内では手慣れたスタッフが明るく、テキパキと指示を出す。それに従い、あらかじめ掲載された配置図に机を搬入、設置する。
当日のアクシデントで見送られた方を含めても、やはり作業人員の頭数、絶対値が足りない。
指示された作業を一通り終え、次は一般車の誘導や人員の整理などに移行する。
少し早めに取り掛かったとはいえ、時間ギリギリまで作業は続いた。
指示する側のテキパキとした動きに加え、決して罵声が飛び交うことなく皆が一丸となり、清々と、かつ、笑顔も交えながら行った証とも呼べるだろう。

とはいえ、私の本来任務はブースの運営である。
わずかな時間の合間を縫って、自分のブースの設置に取り掛かる。
開場1分前に何とか体裁だけ整えることのできた我がブースでは、名古屋のバネスト20周年記念祭でも活躍を見せた本格派早押し機「SPALLOW6」がデンと構える。
隣ではゲームマーケット春でもお世話になったEJIN研究所のEJINさんが、いつもの笑顔でブースを展開した。
「ネタはいい、けど、絵がなぁ…」
勢いに任せて頒布した4コマの本にもありがたい意見を頂戴する。普段こうした直接意見を上げてくれる方は、SNSを通じた上でもなかなか拾うことが難しく、とても身に染みた。

この日は、各ブースでの経験も豊富なシオンさんが応援に駆けつけてくれた。
二人体制となったブースは個人の作業量に余裕が生まれるほか、自分では気がつかなかった各方向の目も多くなるため、効率は3、4倍も高くなる。
「試し読みできる本に値段を振っては」「ブースそのものも長く広く使えば」など、多くの意見を取り入れながらの運営が進む。

私のブースは、中古や新作を販売・頒布する他のブースとは趣が異なり、ひたすらクイズを読みつつ本を頒布する、いつものスタイルだ。
そのためか、他の来場者も当初は怪訝そうにこちらを見つめる。
今回の早押し機はさすが日頃お目にかかる機会の少ない本格派を奮発したおかげで、クイズ本との相性も抜群だった。
特に、前回の盤祭1st.、ゲームマーケット大阪では、ボタンを押したかったお子さんのニーズに叶う問題がなく、出題側となるこちらも手をこまねいていた。
今回は「ボードゲームをからめたなぞなぞ」も数多く取り揃えたおかげで、経験、未経験の有無を問わず、ボタンに興味のあった方が足を止めてくださったという印象だ。
それだけでも、今回の成果としては十分すぎるほどだ。

午後4時を回り、しばらくシオンさんに店番を任せ、私は簡単に各ブースのご挨拶へと向かった。
エレベーターオペレーターは兼ねてからチェックしていた作品。無事に確保できまずは一安心。
ステージにほど近い「いかが屋」ではクレイジータイムが格安だった上、じゃんけんチャレンジでさらに500円引きという太っ腹な企画で入手ができた。
高天原のブースでは、作品全般のイラストを手がけるぺけ先生が描いた、可愛らしく癒しのある各種イラストが販売された。こちらではポストカードを残らず入手する。
中古販売ブースはじっくり眺めるだけで時間を取りかねなかったので今回は見送ることにした。
ゲームNOWAブースではセルフリメイクとなる新作「8人の魔術師」「ワーデミック」を展示。明るくポップなイラストレーターのたかみまこと先生は、これまでの面影を残しながらも独特の世界観を活かしたイラストで、重厚な世界観ながら軽く明るいタッチで表現されたカードの数々につい惹きつけられる。

しばし休憩を取り、残り時間は30分。客足は未だ途絶える気配もない。
遠方では目玉商品が残されたと思しきクジの抽選に、多くの来場者が関心を寄せていた。

売り子のシオンさんはとてもパワフルで、すでにへばっている私を余所に、「漫画とクイズの番次郎でーーす!」と、変わらず場を盛り上げてくれた。

17時、閉場の時間。
4時間は本当にあっという間だった。
わずかな時間ながら、とうに声が枯れ、目がかすみ、汗まみれで軽く脱水のような症状が現れたところを見ると、この4時間がいかに熾烈なものだったか伺える。

周囲が撤収作業を始める中、いつまでもひとりでグズついている訳にもいかず、残った体力をあるだけ放出し、私はいそいそと片付けを始めた。


その後に開催された二次会でも出展側の疲れは何処へやら。スタッフを始め多くの方が盛り上がりを見せた。
次回開催の話題や、万屋楽団のサンジョウバ氏が京都にプレイスペースをオープンする話など、会の終わりまで終始話題は尽きなかったように見える。
普段あまりお酒を飲み慣れていなかった私は、とうに宴席での盛り上げ方を忘れてしまい、ふらつく頭の中、周囲の盛り上がりを余所にひたすら原稿作業に移行していた。実に勿体無い。


疲労が残る中で迎えた三日目の朝。
小冊子を手にし、この日は一路大阪へと向かった。

12時、東貝塚のファミーリエ様へ。
明るく気さくな店長は、他のお店では見かける機会の少ないという作品を紹介してくれた。




電子カードを利用し、音楽を作るという「カードゲーム」だ。
指定されたカードの出し入れはテクニックを要し、さながらDJの気分が味わえる。
スピーカーと連動し、きちんと音楽が鳴るという仕組みがニクい。

時間もたたないうちに、多くのお客様でごった返す店内。
友人、知人に加え、ご家族連れでのお客もちらほら。
畳敷きの座敷もある広めの部屋は、ボードゲームの興奮とはまた違う、静かにのんびりと楽しむ空間を提供するかのよう。

次は谷町四丁目のGUILD様へ。

連休の中日ということもあり、この日も変わらず賑わいを見せる店内では、店長の大阪さんと店員のアリサさんがこの日も慌ただしく駆け回っていた。
店内の販売スペースは、国内のボードゲーム作家を応援するかの如く専用スペースが設けられ、定期的にテストプレイ会を実施するなど、製作者の目線に立ったイベントが積極的に開催されている。

アリサさんに同人誌のことを相談に乗ってもらった。お二人の笑顔が店内の雰囲気をも象徴するかのよう。


ツイート越しに得た情報を頼りにお土産を買い込むと、出発の時間が間近に迫っていることに気がつく。
新幹線に飛び乗り、今回の道中も、食の宝庫関西のグルメを堪能できなかったと自戒する。
私の旅はいつもこうだ。


旅先でお会いしたイベントスタッフをはじめ、ボードゲーム製作者、カフェ・プレイスペースの方々、それらに携わる多くの方々。
私が魅力を感じた方々は、独特の「個性」を秘めていた。
「◯◯が好きだ!」という理由から実際に「◯◯をしたい!」「◯◯ならできそう!」と漠然と妄想する方は多数存在する。
しかしながら、そこから更に一歩踏み出し、手を動かし、実行に移した方は本当に、本当に少ない。
今日まで長く継続できた方はそこから更に絞られる。

独り孤独に立ち向かい、助け船もない状態のまま、悩み、挫け、幾度となく立ち上がり、徳俵に爪先だけで踏みとどまった状態のまま、「倒れるものか!」と粘り続ける。

それだけだ。
能力なんて何もない、いつでも倒れる覚悟を持ちつつ、紙一重で踏みとどまっているに過ぎない。

だからこそ、私はそんな個性の塊のような方々を心から応援したいし、いつかは自分もそんなデコボコした存在として、一員に加わりたいと願っている。
どれだけ虚勢を張ったところで、孤独の作業は、やっぱりツラい。
それは個性と呼ばれる形がいびつであればあるほど「現状のものとは違う」と周囲に認識され、自ずから疎外感を覚えるからだ。
それでも自らを信じ、泥だんごのように粘り強く自分の「個」を磨いて磨いて、核となる部分が見えるまでに磨き上げたところで、ようやく個性が鈍い光を見せ、そこでようやく周囲から評価の対象として土壌に上がる。世間の需要といった面はそれから先の話となるだろうか。

今回出会った多くの魅力的な方々は、己の中に秘めた「個」を、丁寧に、かつ、周囲からの目線に何度も挫けながら、それでも磨き続けた結果の証左だったように感じる。
継続することの難しさは、何かしらの形で意識的に「継続を実行」した人でなければ、その労苦は推し量れないし、第三者にも上手く伝わらない。
だからこそ個性的な存在にある方々は、裏を返せば、それだけ他に代用できない存在でもあり、いうなれば、誰からの助け舟、相談相手や代替できる相手も存在しないまま独自に歩みを続ける方ばかりなのだ。

私は、そんな方に寄り添い、話を聞き、何かしらの形で支援できるような存在でありたい。
寒さで震える道中に、そっと差し出す缶コーヒーのような温もりを、私も、私のできる限りの方法で、支えていきたいと思う。


帰りの道中で、普段は感じる機会のなかった、人との触れ合い、存在、それらを支える周りの存在の大切さを、身体の芯から感じつつ、新幹線は最寄駅のホームへと滑り込んでいった。

冷たい部屋に灯りをともし、私はまた、溜め込んであった制作作業へとペンを走らせたのだった。


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