2019年12月11日水曜日

笑顔をお土産に 僕の静岡・関西遠征記 備忘録

怒濤の如くゲームマーケット秋2019が終わりを告げた。
制作もようやく一段落し、しばらくは購入した作品で遊びつつ、ある人は社会生活に戻り、ある人はゲームマーケット大阪、春に向けて再度準備を整える。

「お坊さんが走り回るほど忙しい」
お坊さんに限らず、ゲーム製作者も各々の形で「師走」という暮の洗礼を浴びつつあった。

そんな中、

我が番次郎書店は、疲れた体を引きずるように、2週間後に控えた静岡アナログゲーム祭り、翌日の「盤祭2nd」に向けて、いそいそと準備を始めていた。
いい加減に自分の年齢をわきまえなければ、いつまでも若くはないぞと己が体に言い聞かせたのもつい先日のことだったか、相変わらず反省しない自分。

僕だけではない。
これら地方イベントが、単なる「ゲームマーケット延長戦」にとどまらない事は、どの出展者の方々からも強い意気込みとして強く感じ取れた。
早くて夏頃から事前の告知を行った弓路さん、高河さん、ゲームカフェぶんぶんさんら静岡アナログゲーム祭りスタッフ一同、盤祭2ndを運営するコロンアークの「たなやん」こと田邊さん。
久遠堂の久遠さんや芸夢工房の北条投了さん、Mob+の宮野華也さんらは、この日に合わせてなんと新作ゲームを作成した。
ノスゲムさんはゲームマーケットでも人気を博したウッドバーニングのボードゲームブローチを数多く用意、この日のための新作なども多数取り揃えていた。
ボードゲームサプライなどで有名なuchibakoyaさんや、ボードゲーム制作やTRPGなど幅広く活動を展開する地元静岡のサークルCedarBook’sさんなど、ゲームマーケット秋ではお目にかかれない方にもお会いできることも地方イベントが発信する魅力の一つだ。

一方の僕も、そんな方々と対抗・吸引ほどの魅力的な何か、を持つわけではないが、今回もゲームマーケット秋などでそこそこの好評を博した「クロスワード付きチラシ」を用意することにした。
クロスワードを一から考えるという妙なこだわりをみせたおかげで、結局予定が過ぎた分の延長料金を支払いはしたものの、無事に入稿し、当日予定に何とか間に合わせることができた。


2週間はとても短く、送付や新規クイズなど細かな準備に追われるうちに、まとまった休みをろくに取るができなかった。
人気や名声どころか、イベントで小冊子を売る以外にまとまった収入のない自分、目の前には先のゲームマーケットで購入した山のようなボードゲームと、持ちうる限りの精力を注ぎ込んだ小冊子の段ボールがうず高く積まれていた。
RPGで例えるならば、これが僕の「装備」となるわけだ。
ひとつ確証があるとすれば「クイズは面白い」ということ。
少しのお金とわずかな確信だけをサイドバッグに詰め込み、僕は金曜昼12時、新幹線ひかり号にて一路、静岡県藤枝市へと向かった。


全国的な寒波が押し寄せる、まさに冬本番、普段は温暖なここ静岡も、少し肌寒い天候の一日。

少し早めに現地入りし、まずは会場の下見を行う。


体育館ほどの広さを持つ藤枝市文化センターは、適度に空調も効き、施設内の自販機やトイレなどの設備も十分に完備されていた。
現場を取り仕切る弓路さんらスタッフの指示に従い、力仕事を良しとする僕は机の設置に取り掛かった。
残りの時間はステージの整備だ。
エキサイティングブースを事前に確保した僕は、他のブースが華やいだ声でわいわいとブースを設営する姿を尻目に、一段高いステージ上で独り黙々と作業に取りかかった。

テーブル上に作品を展開する。
ワンオペも4年目になると、それなりに販促の方法が板につくものだ。
頒布品を並べるだけではなく、早押し機のセッティングに、当日に予定されている「クイズイベント」の準備も簡単に行わなければならない。
喉の方は本調子とまではいかなかったものの、ゲームマーケットからだいぶ時間が経過したこともあり、喉元はそれなりに潤いが戻っていた。


練習を兼ねて問題を読み上げていると、手の空いた方が参加にいらっしゃった。
「転々と市」「ジャパンジャン」などを展開するガーデンゲームズの樫尾さん、ひろむさん御夫妻や、同じ建物の3階でゲーム会を展開するやんまぁさんらがこぞってボタンを押しに参加する。
ピンポン!ブー!
高らかになる音楽に「正解!」の声も思わずうわずる。
スイッチの調子はすこぶる好調。
舞台を後にし、制作同士の前日会に参加を予定するも、この日も日々の4コマ制作を欠かすわけにはいかないと思った僕は、名物「さわやか」のハンバーグを泣く泣く逃すことにした。







翌朝。
近傍のホテルで充分すぎるほどの朝食を摂り、午前10時、いざ会場へと向かう。
前日に設営を済ませたとはいえ、出展料や音声調整など、細部のこまごまとした調整を済ませると、時間は瞬く間に過ぎ去っていった。

11時ごろ、事前に予約した地元焼津港のマグロ丼が到着し、しばしの腹ごしらえ。
かなりのボリュームに圧倒されつつ、名前の通り口の中でトロっと溶ける中トロ丼を堪能する。


午後12時、いよいよ開場。

僕の位置するエキサイティングブースはステージ上ということもあり、会場内の参加者からは少し足が遠のく様子。
それでも事前に用意した手持ちのチラシや早押しスイッチなどを駆使し、ゲームマーケット秋で学んだ(はずの)呼び込みを行う。
「年末年始にいかがですかー!」
「本屋さんには売ってませーん!」
会場内に響き渡る僕の声は、壇上ということもあったからか、かなりの高域に響き渡っていた事実を後になって知らされた。

次第に、ボタンに興味を持ったと思しき方がちらほらと壇上に現れる。
その都度僕は問題を読み上げ、ピンポンのボタンを押す。さらに興味を持った方には、小冊子のアピールも欠かさない。

汗ばんだ体が冷えないよう、時折、暖かい飲み物を口にする。
静岡アナログゲームマーケットは「イベントはみんなで作り上げるもの」というコンセプトのもと、出展者、来場者を含む、会場内全ての参加者を「一般参加者」と呼ぶ。
僕のブースにも、地元静岡のゲームカフェ「らみぃ」の店長をはじめ、ゲームマーケット秋では機会を失し購入できなかったという一般参加者が訪れた。
「ゲームマーケットには行けなかったので、嬉しかったです!」
この声を聞くたびに、それまでの疲れが吹き飛ぶようだった。


午後3時、この日のために用意した「クイズステージ」が開催される。
実はボードゲームにこだわらない「レギュラー問題」を作成したのは実に数年ぶりのこと。
難易度の調整に四苦八苦しながらも、普段のボードゲーム制作で培った「楽しさを重視した問題作成」を心がけた。

そのひとつが「勝ち負けなしの協力ゲーム方式」だ。

知識が勝負のクイズならば本来あって然るべしとされる「勝敗」の概念を取り払うことにした。
つまり「勝った、負けた」ではなく「クリアできた、できない」を要所要所に取り入れ、最終的に「一番貢献できた人を投票制で決めます。」といった方式でまとめる方式を取り入れた。

問題をとちってしまったり、全体的な難易度が定まらなかったりなど、司会として反省するべき面が多々あったものの、ツイート上では「楽しかった」といった声が上がり、僕は何とか救われた思いがした。

しばしの休憩を挟み、再び小冊子を頒布する。
閉館まで1時間となるも、客足は途絶えることを知らない。
近傍でゲーム会が開かれていることもあり、購入した作品をその場ですぐに遊べる態勢が整っていたことは一般参加者にとっても嬉しかったのではないだろうか。


わずかな隙間を見て、各ブースにご挨拶へ向かう。
ノスゲムさんのブローチはこたつ猫がBABELで遊ぶ作品が偶然にも残っていたので迷わずゲットした。
らめれこゲームズ!にはクリエイターの珠洲ノらめるさんらがいつもの笑顔で頒布を行なっていたので、併せて「おそらのゆうびんやさん」のお礼を無事に済ませることができた。
EJIN研究所のEJINさんも、昨夜下山した疲れを見せることなくブースに立ち、周囲に作品の説明を繰り広げていた。

忙し過ぎず、適度に、ちょうど良い距離。
暖房のせいもあったからか、僕は少しのぼせていたことに気がつき、慌てて自販機のスポーツドリンクをガブガブと飲み干した。

夕方17時、拍手とともに閉会。
大きな拍手が湧き上がる。
おもわずへたり込んだ僕だったが、翌日を控えている以上、ここで倒れるわけにはいけない。

疲れた体をだましだまし荷物をまとめ、僕は次の新幹線に乗り込むべく、そそくさと会場を後にした。
あたかも富山の薬売りのような姿をまとい駅ホームへと向かった僕は、近傍の立ち食い蕎麦屋にて勢いよく月見そばをすすった。
ツイート上では北海道勢と静岡勢とのご当地グルメ合戦が賑わいを見せていた。
そんな盛り上がりをよそに、僕は疲労も相まって移動中の新幹線でとろとろと眠りについた。
ホテルに到着した後も何となく空腹が抑えられず、結局僕は、近くのコンビニでおにぎりとエナジー系のゼリー飲料を買いに走った。


疲労の残る体のまま朝を迎える。
清々しい朝日には、少しうろこがかった雲が覆われていた。
納豆、味噌汁と大豆中心の朝ごはんをお腹に入れ、僕は次へと向かうべく朝の支度を始めた。


会場となる中崎町ホールは閑静な住宅街に位置し、近辺にはカレー屋や串カツ屋など食の見所も豊富だった。
主催となるコロンアークの田邊さんらと協力して会場を設営する。
とはいうものの、特別なステージ等も無い真っ平なスペースのため、机や椅子を配置したあとは、互いに配慮をしながら各々の試遊スペースを作成するのみだ。
販売スペースの設置も後ほどで良いため、時間の余裕も生まれ、大変ありがたかった。

僕は昨日同様に小冊子と早押しスイッチを準備し、てきぱきと、ものの15分ほどの時間で設営を終えた。

僕が担当する「番次郎書店」の試遊スペースは入口手前すぐ左手。必然的に待機列の状況が目に飛び込んでくる。
開場15分前、待機列には述べ30人ほど並んでいただろうか。
中には、確認できただけでも、大阪の有名ボードゲーマー山路さん親子や、ラミィキューブの強豪ななちゃん親子、人気Podcast「いかとりにょりとおけいのいかがわしいラジオ」のおけいさん、同じくPodcast「木曜ゲーム会アフタートーク」MCゲームカフェ「賽翁」店主てちゅろんさん、更には関東から「ボードゲームカフェパス」「ゴリラ人狼」などの作品に携わったボドチューバーこと翔さんの姿も。etc,etc...。

「待っている時間にどうぞー」
僕は甲高い声を上げるとともに、本日分のチラシ兼クロスワードを待機列の方一人一人に配布して回った。
せっかくのパズルだ、上手に活かす方法はないかと模索したのだ。
実は前回ゲームマーケット秋も実践を試みたが、あいにくの雨模様だったこともあり断念してしまった。
今回の好天と待機人員に恵まれ、無事に実現することができたのだ。


午前10時、盤祭2nd、開場。

周りを見回す余裕など持ち合わせなかった自分だが、「前々から小冊子に興味があった」という方から「クイズそのものに興味は無かった」といった方まで、多くの方が興味を示し、ボタンを押しに足を運んでくれる。

もちろん、昨日同様、ボードゲームのイベントで、ボードゲームではない作品を提供する僕だ。参加者からの奇異な目も少しは慣れたもので、負けずに声を上げる。
「ボードゲームでクイズをやってまーす!」
「世界で唯一、ここだけでーす!」
そんな僕の姿を見かねてか、昨日の静岡アナログゲーム祭りでもお世話になった「いかラジ」のいかさんが問題を読みに駆けつけてくださった。
しばしの時間だったけれど、問題を「読む」側ではなく「解く」側に回るという体験も、久しぶりに味わうことができた。


時計の針は13時を指した。
机の配置を変え、次はいよいよ販売の時間へと移行する。

前回、そして昨日も活躍した、ヤブウチリョウコさんの「#ボドゲフリペ」を目の前にそなえ、昨日同様、準備は万端だ。
いつもと違う点は、早押しのスイッチが常備されていない点。
つまりは、純粋に「小冊子の中身で勝負」というスタイルだ。

先ほど以上に伸びた待機列は、開場15分前の段階で、ざっと述べ60人以上。
今回もバネストブースの「ファストスロース(ナマケモノレース)」や、uchibakoyaブースの「タンクチェス」、人気のscout!やボドゲイムhiroさんの小冊子も委託販売されるなど、ゲームマーケットにも負けず劣らじと目玉商品が揃い踏みする。

PM14時、販売の部、開始。
開幕は多くのブースで列ができるほか、机の配置がコの字だったことも影響し、中央部ではさっそく互いが購入したばかりの作品を見せ合うなどの姿がちらほらと見受けられた。

一方の僕は「これがラストだ!」と意気込み、最後の喉を振り絞る。
不思議と声のペースが落ちないことに気がついた。
もちろん声帯はすでに限界値を突破している。
それでも、ブースの前に立ち止まり、興味を持ってパラパラとページをめくる方がいらっしゃると、湧き水のように声が溢れ出た。
知ってもらう、体験してもらう。
前段の試遊、後段の販売、形は変われども、その根幹は同じ。
ブースを通じ、創作した作品を知ってもらうこと。そのやりとりの中でさらに興味を持った方に向けて、さらに作品をより知ってもらおうと提供する、そのスタンスは変わらない。

終わり頃となり、僕はご挨拶も兼ねてしばし回ることにした。
いつも絶えない笑顔のバネストでは、中野さんをはじめ多くのお手伝いさんがてきぱきと動き回っていた。ここでは注目作のファストスロースも無事に購入。
僕のブースからちょうど真正面に位置するuchibakoyaでは、関東でも根強い人気のタンクチェスを購入。前日前夜まで製作された詰め問題まで特典につくサービスぶりだ。
静岡、盤祭2ndと先行販売されたフダコマゲームズのマフィアNo.5も、試遊の段階で多くの方が体験に訪れるほどの人気ぶりを博した。
芸夢工房、サザンクロスゲームズでは新作「エイジオブタイラント」「THE実名報道」の話題作を無事にゲット。
その美麗な絵柄は切り絵となっているコロンアークの「メジャーアルカナ」も、ゲームマーケット秋で購入し損ねた作品。こちらで無事に購入。
・・・総購入額など訊くだけ野暮というもの。

夕方17時、盤祭2nd、無事に終幕。
片付けを終えた後は、いよいよバネストの中野さんとクレーブラットの畑さんとのトークセッションだ。
ここでしか聞けない深い話がポロポロと溢れる。

トークの終始を通じ、御二方の「この気持ちを伝えたい」という熱量の高さに圧倒された。
だからこそ、全国を回り、自分の身を投じてでも、ある意味、儲けなど多少度外視してでも、伝えたい、通じ合いたい、そんな気持ちがありありと伝わった。

その後は場所を写し、お酒を交えた二次会へ。
すでに体力、気力ともにヘトヘトだった僕は、ジョッキ一杯のビールで既にかなりの酔いが回った。
何を喋ったのだろう、失礼な言動は(おそらく)抑えていたはずだが…。

ふらつく足取りでなんとかその日のホテルに到着した僕は、備え付けのガウンに着替える気力もなく、そのままベッドへと倒れ込んだ。


「布団の中から出たくない」
打首獄門同好会の曲にそんなナンバーがあるけれど、僕は連日の無茶な遠征に加え、昨日一杯しか口にしなかった久しぶりのビールが体から抜けきれていなかったことなど諸々が重なり、ホテルのチェックアウトギリギリの時間までベッドから抜け出すことができなかった。

自由気ままの関西遠征、最終日は帰りの新幹線さえ厳守するほかには、特段予定した場所もない、自由気ままの旅。関西はこの日も穏やかな冬晴れに恵まれた。
うっかり阪急電車の乗り継ぎを間違えた僕は「まあいいや」と、そのまま法隆寺を観光するなど、少し送れた紅葉狩りを存分に堪能した。

ぐるりと遠回りしながら、向かった先は京都府伏見区のボードゲームプレイスペース「Light&Geek」様

先日12月1日にオープンしたばかりで、入口からはほのかに檜の香りが漂う。
店内は平日の昼間にもかかわらず、多くの若いグループがわいわいと賑わいを見せていた。
店長はPodcast「万屋楽団のそれなりな日々」を配信するボードゲームサークル「万屋楽団」のサンジョウバさん。
自身が手がける「謎解きは形容詞の後で事件簿」は第4回ボードゲーム大賞2次審査通過、第1回ボードゲーム セレクション店舗賞受賞など輝かしい成績を収めるなどの実力派サークルだ。

店内は「あ~ん」の読み仮名順できれいに整列された棚。
プレイスペースながら飲み物、食べ物の持ち込みはOK、その上、店内にはティーパックのお茶やコーヒー、冷蔵庫には冷たい缶ジュースも常備されているという気の回しようだ。

店内には有名ブロガー「うらまこのボドゲあれこれ」のうらまこさんが偶然にも来店中だったので、さっそくご挨拶、周囲の方も交え、手持ちの拙いボードゲームを広げる。
さすが幅広い知識に加え、多くのボードゲームを経験された方、プレイするや否やすぐさまゲームのシステムや勝負所を見抜き、明るい笑顔とともにさらりと勝利を奪っていった。さすがだ。

わずかな滞在時間の中、次の目的地に向けて京都を後にする。
僕が関西に向かうときは必ず足を運ぶ場所、加古川に構えるボードゲームプレイスペース「駒の時間」様だ。

komaさんはあいにく入院中。ご挨拶に伺うと、ちょうど見計らったかのように病棟でリハビリに励むkomaさんから店内のTokiさんに電話が鳴る。
僕はいつもより少し声のトーンを上げながら、病室にいるであろうkomaさんに向かって「頑張ってください!」と声をかけた。
喉の奥の小石が、ころりと落ちないよう、注意を払いながら。

電話を終えると、Tokiさんがコーヒーを入れてくれた。
ふと外の暗闇に気がつくと、時刻は夕方の17時、昨日の今頃もここまで深く闇に覆われていたのだろうか。

Tokiさんとしばしの時間おしゃべりをした。
駒の時間が奏でるフィギュアとボードゲームで囲まれた空間は、いつ足を運んでも心地よく、そこで繰り広げるおしゃべりは必然的に明るく華やいだものばかりとなった。
「京都のサンジョウバさんのお店は本当に良かったです!」
「盤祭、すごく楽しいイベントでしたー!」
帰りの時間が惜しくなるほど話は広がり、僕は帰りの新幹線が迫るギリギリまで話し込み、加古川を後にした。

新幹線に飛び乗った後、結局今回も旅の終始を通じ、お土産もグルメも満足に味わうことのなかった、過ぎてしまえばあっという間の遠征だった。

疲労と空腹が重なり、僕は帰りの新幹線でずっとまどろんでいた。
「何をしていたんだろう…。」
後ろ向きに、ではなく、あくまで前を向きながら、今回の遠征中に行った由無しごとを、自分の頭で整理することにした。

「クイズ、楽しかったです!」
「4コマ、いつも見ています!」
今回の旅程でお会いした方のそんな言葉が、本当に身に染みて嬉しかった。
問題やネタを全て一から考え、体裁を整え、失敗や雑味も度胸でごまかしながら、相手に笑顔で提供する。
上手くいったかどうかはわからない、ただ、今の僕の胸の中には、大きな充実感だけが残っていた。
その「充実感」の正体とは、自分にとって何だったのだろう。


「ゲームマーケットは是非『体験』に足を運んでください」
前回春、アークライトの野澤さんがラジオ番組に出演された際に口にした言葉だ。
「売るではなく、体験を提供する場」
それを聞き、前回春の番次郎ブースでは「ここでしか味わえない体験」をテーマとして運営を展開した。
単に小冊子を売るだけではなく、早押しボタンを用意したり、無料のパズルや小ネタ満載のパズル、他にも、実は司会者の読み方を研究し、問題を読む練習などをこっそりと行ったりもした。

それは何より「笑顔」こそ、自分のブースが求める最上級の提供品と考えたからだ。
適度な問題に難易度の調整、果てはなぞなぞや謎解きなど、「せっかくブースに立ち寄っていただいたならば、笑顔をお土産に帰ってもらおう」をテーマとしてブース運営を展開したこと。

そうだよ、そうだったよ!
ゲームマーケット春だけではなく、それから続く北海道ボドゲ博1.0や金沢ボードゲームマーケット、三宮ボドゲフリマ9も、根底は「笑顔をお土産に」だった。
興味を持った方に、直接作品の見どころを説明し、作品を通じた「笑顔」を添えて帰ってもらう。そのついでに小冊子を手にしていただけたら尚更良い。

今更ながら、僕の中でのブース運営の醍醐味とは、その短いやり取りの中で交わされる「笑顔」にあったのではなかっただろうか、と考えた。

そして、それこそまさにボードゲームと相性が良い「コミュニケーショのひとつであり「制作側が込めた想いを目で、耳で、肌身で、直接感じることのできる」「その逆に、ありがとうの気持ちを直接伝えることのできる」そんなやりとりを生み出す絶好の機会こそ、イベントが育む本質ではなかっただろうか、と。

歳を重ね、あらゆるしがらみが増え、次第に世間の目を気にするようになる、そんな中、「ボードゲーム」という後ろ盾で、老若男女の垣根を超え、ともに笑い、ともに涙し、ともに興奮できる、
一時でもそんな体験が提供できるよう、僕はこれからも作品を提供したいと願うし、そのためには、これでいいやと留まることなく、常に次へ、次へと自分自身を心身ともに進化・深化させなければと考えるのだ。

そうだと気がつけば、たしかに今日お会いした、Light&Geekのサンジョウバさんも、駒の時間のTokiさん、Komaさんも、ボードゲームカフェ、プレイスペースが奏でる心地よい空間には必ず「笑顔」があり、外を出た後もしばらくは心が暖かくなった。
知らず知らず、僕もそんな「笑顔」をお土産に頂戴した、というわけだ。

・・・。

無事に帰宅したときは、夜の23時をとうに回っていた。
遅くまで開いているスーパーでありあわせの弁当を買い、ようやくまとまった食事を口にすると、これまでの疲労がドッと関を切って押し寄せた。
「今日も4コマは休みます」と断りを入れ、スプーンラジオを流しつつ、僕はいつもの布団にくるまった。
ふと冷蔵庫の冷えが悪いことに気がつき、そこでようやくモーターの異常ランプが目に入った。
次のイベントでは冷蔵庫代くらいは稼がねば。
まあ、そんなに大きくないヤツでも、いいかな、なんて。

(了)

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笑われて、笑われて

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