この日の関東は折からの雪模様、朝から強く冷え込む1日を迎えた。
しっかりとコートをかかえ、僕は人混みで賑わう機内へと単身乗り込んだ。
3時間ほどで那覇空港へと到着。
気温15度、まさかと思われるが、それなりに羽織るものが必要なほどひんやり肌寒い「沖縄らしい冬」。
市内を繋ぐ「ゆいレール」へと乗り込み、市内に位置するボードゲームカフェ「サイコロ堂」様へと向かう。
昨年は店舗を改装し、明るく、西洋風に、かつ以前の面影もさりげなく残すたたずまいだ。
早速お目当ての沖縄名物の「ルートビア」を注文する。
ガツンと飛び込む甘さとカラメルが喉の奥でスパークする。体のことなど考えず2本目も飲み干してしまった。
ふと目をやると、最新号の「メビテン」が配布されていた。
巻頭ページには「開運ボードゲーム占い」とある。
さてさて、気になるおうし座の運勢は?
「テーマは「トキメキ」。あなたの心をときめかせる何かに出会います。そのときがきたら、恥ずかしがらずに飛び込んでみて。それが転機になります。」
じょーとー市での「トキメキのある出会い」を、独り密かに期待することにした。
たまごさんらとともに、地元の郷土料理のお店へと向かう。
こちらの食堂で、もう一つのお目当てである「麩ちゃんぷる定食」を堪能する。
濃く味付けされた野菜炒めに、大盛りのご飯の牙城が崩れる。
熱と汗でへばらないような沖縄の食を堪能する。
翌朝、案の定昨夜の食べ過ぎで胃腸の張ってしまった僕は、朝食をそこそこに当日の最終準備へと取り掛かった。
この日は朝から清々しい晴れ模様にも恵まれ、当日の会場となる『ゆらてく』へ送ってもらった。
天井も高く、内装も綺麗、別の部屋では吹奏楽のグループが練習していたが、音響ひとつ漏れないという徹底ぶりだ。
設営を始めると、昨夜お邪魔したサイコロ堂の店主や、同じく県内のボードゲームカフェtoi toi toiの店主をはじめ、多くの出展者が、各々持参した魅力的な作品を次々に展開する。
県内で人形制作者として有名な「フリッキー山田」さんも登場し、愛嬌のある人形を目の前に配し、ペンを手に取り、黙々と作品制作へと取り掛かった。
今回「番次郎書店」としては珍しく、中古のゲームを展開するイベント。
採算は度外視し、ここでも「楽しむこと、交流すること」をメインに運営を展開することに決めた。
入口の近くでは、ボードゲーム制作者のクロクマさんら多くのボードゲーム愛好者らが、いまや遅しと開場の時間を待っていた。
14時、主催の声とともに幕が開く。
フリーマーケットも含めたボードゲームを主体とする沖縄初のイベント、多くのボードゲーム愛好者が待ち焦がれたのだろう。開幕当初から多くの人が我先にと流れ込む。
大きな混乱こそ無かったものの、事前に大きな注目を集めていた作品はものの5分も経たずに完売の報告が相次いだ。
僕の方も、それとなく並べてあったネスターゲームズやスカルキングなどの目玉商品が次々と手を離れていった。
賑わいを目にした様子で、近隣から、遠方から、そしてボードゲームにあまり馴染みのない方も含め、多くの来場者が途中からも大勢足を運んだ。
家族連れに、子供向けに、パーティ用に、と、次々に購入される。僕正面の話をすると、コヨーテ、キャットアンドチョコレートといった、いわば『ボードゲームに馴染みのある方なら遊び尽くしたような作品』の方にこそ多くの方が興味を持ってくれたように感じた。
開始2時間経過後も、いまだ人の波は途絶えることを知らない。
せっかくだからと用意した『早押しクイズ』も、閉会1時間前となった場面でようやく顔を出す。「正解すれば全品半額チャレンジ」の太っ腹なおまけ付きだ。
17 時、大きな混乱等もなく、じょーとー市は無事に閉幕。
会の終始を通じブースに張り付く形となった僕は、結局ほかのブースの掘り出し物を物色することすらできず幕を終えた。
軽くなった荷物を片付け、全員一丸となって会場を締めると、辺りはすでに暗闇の中だった。
心地よい疲労が身体からじんわりと溢れる。
終わってみれば、出展者、スタッフ、来場者、全てが笑顔に包まれたイベントだったように感じた。
ガツガツとモノを売りさばくといったイベントではなく、会場内すべての方と笑顔を共に過ごしたような、それはまるでおとぎばなしの世界の中のような、とても不思議な時間だった。
「イベントを通じ、沖縄のボードゲーマーが集まるようなイベントにしたい」
会の主催を務めた防波亭時化さんはそう話してくれた。
ゲームマーケットに来場される方の中にも、当日の買い物とは別に、遠方からいらっしゃる方との交流を楽しみに来場される方も多いと聞く。
それは形を変えた「同窓会」のようなイベントかもしれない。
個々人のプレイ歴、所持数、さらにはゲームカフェ、ゲーム会の主催・運営、それらの垣根を一切取り払い、その場の全員が忌憚なく「ボードゲームの話題」で楽しく盛り上がる場、もちろん僕のような外部の人間も排他的どころか、むしろ新たな風を取り入れるが如く手厚く歓迎してくれる、
まるで、バラバラとなったジグソーパズルのピースを、枠の中にひとつずつ丁寧に当てはめ、同窓会の思い出となるべき一枚のポートフォリオを全員で組み上げるような、とても地道で、膨大な作業だったことではなかったことだろうかと、改めて主催を務めた時化さんの頑張りを称えた。
翌朝、当日の購入資金として用意した幾ばくかのお金を、この度の首里城火災の復興支援基金へと回した僕は、制作中の頭を空にして街中をぶらぶらと散策することにした。
自分用のお土産も、ウムクジ天ぷら(サツマイモ団子)や砂糖天ぷら(サーターアンダギー)、バヤリースの石垣島パインなど至って庶民的なものばかりが並ぶ。
21時過ぎ、大勢の客を乗せた飛行機とともに、僕は冷え込みの続く関東地方へと無事に帰還した。
誰もいない部屋の中、いつものPodcastをつけながら、僕はまたいつもの執筆作業へと取りかかった。
こうしていつもの生活がまた始まりを見せるのだ。
初めは、本当にちっぽけなものだったかもしれない。
「できたらいいな」
そんな本当に些細な想いだったことだろう。
次第にその「好き」の想いが、熱を帯び、熱量を高め、それらが共鳴し、人を呼び、人を動かし、1人、2人、4人、16人…いつしかそれは大きな作品と成長を遂げる。
そんな「好きという想いの強さ」を肌身で学んだ、そんな実り多いイベントだったと振り返った。
改めて本イベントの主催を務めました防波亭時化様、たまんちゅ様、げな様、みみこ様ら実行委員スタッフをはじめ、たまごさん、出展者、多くの来場者、そして携わった多くの方々に、そして、ボードゲームを作らない僕のようなボードゲームのサークルを暖かく迎え入れてくださった沖縄の方々














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