2020年5月22日金曜日

懸命に動ける幸せ 自粛期間制作日誌その9

 料理の話をしたい。

 僕の思う「料理のできる人」とは、高級な食材をふんだんに使用し、ゴージャスで美味しい食事を提供する人、とは一線を画する。
 冷蔵庫の中身や台所の調理器具を一目見るや「ありあわせのもので何か作るね」とサッと調理に取り掛かることのできる人の方だ。


 ある方を頭の中でイメージしながらペンを進める。
 僕の心から尊敬するボードゲームの製作者もその一人で、国内外数多くのボードゲームに精通された方、を抑えて、例えば手元に紙と鉛筆とトランプしかない場所の中、周りがアッと驚くほどの面白いゲームを皆に提供できる、そんな方だ。
 制作やプレイを通じる中で脳内に蓄えられた豊富な知見は、意図しない場所でポロッと発揮される、そんな一遍をも窺える。

 他にも、僕が実際にお会いすることのできた多くのゲームクリエイターは、100円ショップや商店街の軒先などで数多溢れる雑貨の類を目にするや否や「ゲームに使えるかも」と妄想したり、制作が一段落した直後やイベントなどで作品を販売される最中でも「面白いゲームを考えた!」とアイデアを巡らせる、そんな人ばかりだった。


 今回のコロナ禍の中、僕はオンラインの場を通じ様々な「動き」を目にした。
 「できない、どうしよう」
 そんな悲鳴にも取れる叫びが渦巻く最中、苦しい身のうちを省みず、常に周囲へと配慮を伺いながら、自分の中でできうることは何かを考え、少しでも立ち上がろう、前を見ようと懸命に行動を働かせる、そんな方々を大勢目にすることができた。
 具体的には、自身の作品をPnP(紙ペンゲーム形式)で無料配布された方、イベントの代用にとV-tuberなどを活用し広報や同卓の機会を設けてくださった方、Zoom等を活用したテストプレイ会やボードゲーム回を提供された方、自身の舞台やコンサートなどをネット配信された方、オンラインを通じたインタビューを中心に毎週のPodcastを展開された方、etc…。
 

 何もできない、どうすることもできない、
 そんな誰もが自己のストックを「0」と見なされたような今回の自粛期間の下、各々の個性に合わせるかたちで様々な媒体を産み出すことのできる、いわば「独自の+(プラス)エネルギー」を数多く目にする機会があった。同時に、そんなアグレッシヴな方々に何よりも僕自身が心を動かされた。
 クラウドファンディングにはわずかばかりの支援を添え、回数券等の販売は自分の無理しない範囲でのお金を落としていった。総額なんて数えるのも野暮というものだ。


 緊急事態宣言から快方へと向かう、そんな兆しがある昨今とはいえ、いまだ世間は予断を許さない状況だ。緊急事態解除後もしばらくは大幅に活動の制限を余儀なくされるだろう。
 そんな中、今や遅しと待ち構えているかのように、来月以降はボードゲーム界隈にも、更には制作側としての動きも更なる活発となるであろう動きが見られる。全国各地のボードゲームカフェ・プレイスペースが相次いで再オープンし、7月の北海道ボドゲ博2.0、8月の静岡アナログゲーム祭り、6月にはアークライトが主催するゲームマーケット関連のイベントもアナウンスされた。
 
 一方で僕は、というと、その日暮らしが板についたかのように、この先の状況など微塵も考えられるはずもはなく、いつもと変わらず小冊子の制作に明け暮れる毎日だ。
 目の前にガンと「自分のできること」を置き、その日の体調に左右されながら、少しずつ次のイベントに向けて作業を進めている。
 ありがたいことに日課の4コマは7巻目を目前に控え、次なる小冊子「ボードゲームクイズレシピ集」もカタツムリのような歩みで着々と進行している。
 前回もブログに記したように、明日は何が起こるか本当にわからない、未来など想像できる余地もない、だから「今」を懸命に生きる、そんなありきたりな言葉を並べながら、次へ、次へ、と懸命にもがいている。
 実情を話すと、資金(預貯金)は限りなく0に近い。7、8月のイベントで売り上げが伸びなかった場合、次回以降の出展を永久に見送ることも視野に入れるている、そんな現状だ。それでも今回のコロナの惨禍を真正面から受けた企業、店舗が抱えた苦しみとは比べるまでもないが。

 それでも僕は制作を続ける中、ある日を境に「土俵際へと追い詰めらながら、それでも前を向き、必死に歩くことのできる自分」の存在へと自然に前を向く目線の変わり映えを実感できた。
 何の肩書きも、何の取り柄すらも持ち合わせていない自分が、画面の向こうに存在するであろう「自分ではない『誰か』」に向け、ひたむきに努力をし、創作面も含めたエネルギーをオンライン越しに放出している、そんなナルシズムに似た心の動きを自覚するようになった。
 その瞬間からだろうか、僕はいつしか絶望に溺れる地点からの脱出を図ることができたように感じる。
 
 制作できる幸せ。もちろん自分に向けての満足が主体となる行為ではあるが、そんな僕の創作活動を、一人でも二人でも、喜んでくれる方がいる。
 自分の他の「誰か」に向け、僕はこれからも、自分のできることを、無理のない範囲で、少しずつではあるけれど頑張ろう、そう心に決めた。資金繰りは?まあ、結果としてついてくるものだろうか…。


 今回の自粛期間を経て学んだ「0の状態からも懸命に生きることのできる幸せ」とりわけ「冷蔵庫のありあわせで美味しい料理をつくることのできる料理人」を妄想しながら、今後も、そしてこれからも、自分のカラーで活動できますよう、頭のどこかに「今を頑張れ!」という言葉を刻んでおこうと願う。

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