2018年12月10日月曜日

勇気一つをともにして ー北海道遠征記 初日ー


「北海道か。一人で考えるにはいい場所だ。」


某アニメの最終回の台詞を回想しながら、私は先日開催された盤祭1st.の疲れが未だ癒えぬ体で、一路、北海道へと飛んだ。

「北海道で初となる、ボードゲームのイベントを」
ツイート上で目に止まった主催の「サイコロキネシス」様の言葉に反応したことがその発端だ。
復興だとか、気風を盛り上げようだとか、崇高なことではない。
事はもっと単純で、私の中の「面白そう」というセンサーが脳内で働いたからに過ぎない。

ことさら、最近の私ときたら「面白そうなこと」への感度が敏感で、かつ、原来のフットワークの軽さも相まって、ここぞとばかりに人生を謳歌する日々が続いている。
明日の生活など視野に入れてはいない。ましてや予後の人生など。
さながらセミのようだ、と、周囲に漏らしている。


12月8日、土曜日、AM9:20



前日の悪天候はどこへやら。澄み渡る空に、一面の銀世界。
声を響かせると、はるか遠方の国まで届きそうなほど、広がる「大地」。

着いたぞ、北海道。

感動をあらわにしたツイートには、思いも寄らぬほど多くの方から反応をいただく。

重いスーツケースを抱えつつ、当初向かうは、札幌のボードゲームカフェ「こにょっと。」様。


かくれが、を謳うだけに、店内は、飾らない照明に低めの天井、個人収集とおぼしきフィギュアが陳列された内装、厳選されたボードゲームの棚には、新旧様々な作品が並ぶ。

周囲を見回すと、カタンやチケット・トゥ・ライドなどがプレイされているようだ。

「初めての方が多いんですよ」

屈託のない笑顔で語るのは店長のきむち。さんだ。
お店を訪れるお客様の多くは、初めての方、ボードゲームそのものに興味を持って訪れる方が多いのだという。

「うち、あまり常連さんがいないので」
きむち。さんは続ける。

私はその言葉を、一般のカフェで「常連」と呼ばれるような、店舗側に良い待遇をされる方が少ない、という意味として捉えることにした。
長居したくなるほど雰囲気の整った店内に、笑顔に満ちて誰からも愛される店長・店員さんも加わるならば、常連の存在がつかないこと自体がおかしい。
私なら、たとえ旭川に住んでいようとも月2、3は通い続けていたはずだ。




壁には「ウボンゴ3Dタイムアタック」や「カルカソンヌ2人対戦募集」など、初めて訪れた方に向けて「こちらが今ホットです」をそれとなく示すよう促すアイデアがほどこされている。
料金のシステムも時間単位ではなくシフト制なので、残り時間を気に止めることなく重いゲームもプレイでき、つい長居したくなる。
看板に偽り無し、まさに「隠れ家」だ。

愛嬌溢れる店長は、最新作の「おみかん様」を持ってせわしなく店内をめぐる。
ボードゲームカフェパスの特典の一つ「店長の愛のビンタ」も、お土産として受け取っておくべきだったと、後になって悔やむこととなる。

次に向けての時間となり、私は名残惜しくも店内を後にした。

隣のブースでご一緒となるこかげ工房の弓路様と道中のタクシーで話をしながら、私はまたもクイズで大声を上げることを前もって平謝りした。
ブースの方にも恵まれている。

会場前へと到着。PM17時、すでにとっぷりと日が落ちていた。



本番だ。
立会い十分、待ったなし。

会場に入り、袖をまくり、盤祭で培った会場設営をもとにブースを作成する。
手早く、黙々と。



ものの20分足らずで今日のステージが完成する。
時刻は17時25分、開場まで30分以上も時間があるというのに、入口前にはすでに20名以上のお客様が列を成していた。

持参した「携帯カイロ」を配布して回る。
来場者の方々は皆一様にキョトンとした表情を浮かべる。
ボードゲームのイベントで、ボードゲームではなく「クイズの小冊子」を頒布に訪れたのだ、さもありなん、といったところだろう。
幾ばくかのアウェイ感が、当初から私はぬぐいきれなかった。
だから、誰よりも気合いを入れ、元気さをアピールした。
「落ち着いて!」という天の声を受け、ハッと我に返った時は、開場の実に5分前だった。

18時、いよいよ幕が開く。
怒涛のごとく押し寄せるお客様は、2階階段の入口近くまで伸びていたと受付の方から伺った。
大勢の方々が期待を寄せ、興味関心を寄せていたイベントだ。
それに全身全霊で応えなくてはならない!

「世界で唯一の、ボードゲームのクイズの本です!」

大声で小冊子を頒布する。
大声で問題を読み上げる。
光るボタン、「正解っ!」の声に呼応するかのように、歓喜の声と、周囲の目線がこちらに集まっていることを肌身で感じる。
ゲームマーケットでも盤祭でも同様に味わった、脳内に広がるドーパミンのごとき快感。

楽しい!

2時間、ノンストップ。
頬の筋肉のけいれんから、ひたすら笑っていたのだろうと邪推する。
喉は枯れてダミ声となり、主催から差し入れがあった烏龍茶は開始30分で空いてしまう。
外気温とは反比例に体全体から滝のように吹き出す汗。
そんな状態のまま、私はクイズを読み、クロスワードを配り、お金を預かりながら小冊子を手渡していった。

ブースには多くのフォロワー様も訪れた。
ラミィキューブ北海道王座決定戦など大会運営で活躍されるゲームパーソングループ主催佐野まさみ様。
私個人のフォロワー様からも高い人気のKTA様からは噂に轟くブーメランを拝見させて頂く。
知的なツイートが魅力のオヨット様にも無事にご挨拶に成功できた。
ゲームマーケット秋新作「ヒントをいいます」が人気の常盤倶楽部「かみやパパ」様もご挨拶に訪れる。
東京からも、ゲームマーケット秋ではぎゅんぶく屋ブースでその豪腕を発揮した名プレイヤー「ヤマドリ」様が会場を訪れ、励ましてくださる。

ツイートを覗くと、多くの方からの応援メッセージや「いいね」の数。

多くの方からの後押しを受け、つい涙腺を潤ませてしまったが、終了時刻はまだ先。グッと喉元に押し込んだ。
エンディングまで、泣くんじゃない。

午後8時
未だ会場は熱気で溢れ返る。人の波は途絶えることを知らない。
用意した100部近くのクロスワードは配布を終え、新刊も残すは約1/4、既刊も残りわずかとなった。
最後の追い込み。あらん限りの声をあげてアピールする。
改めて、心に刻む。
私は頒布ではなく「クイズを遊びに来た」
その立脚点を決して忘れないように。




8時20分、撤収のアナウンス。
終わった…。
口元からエクトプラズムのようなものがモコモコと湧き出る私。

最後の気力を振り絞り、撤収を始めつつ、目の前のもんじろう様から「男気野球拳」と、地元北海道のサークルというkoke様のブースから「ダンジョンマーケット」を慌てて購入する。



一旦荷物をホテルに預けたのち、遅れて懇親会に参加。




新鮮で濃厚な海の幸に舌鼓を打ちつつ、今回の主催となったサイコロキネシス室田様、Cygnus様らを取り囲む。

実に名古屋遠征以来、約3ヶ月ぶりとなるアルコールで早々に酔ってしまった私。

「3年目が勝負だから」
隣で座る笑顔のCygnus様から、ふと、そんな言葉を頂戴する。


実はこの北海道遠征前、誰に話すこともない秘めたる悩みがあった。
「クイズなんて、もういいかな」
ボードゲームのクイズ小冊子制作に全力を傾注したこの半年、こもりっきりの、孤独の作業。
寝食を忘れ、ひたすら問題制作に没頭する私。
当然、失うものも多かった。
それに対するリターンは、お金の面も、反響の面でも、私の期待を超えるものではなかったのだ。
加えて、飛んでくる言葉は、内容に対する批判・誹謗ばかり。

「無駄な努力」という言葉は決して嫌いではないが、さすがに今回ばかりは心に負ったダメージが大きく、どれだけ励まされようとも、立ち上がる気力すら湧かなかった。
出ると宣言した以上、ゲームマーケット大阪ぐらいは顔を出すとして、それを終えたら、静かにフォードアウトしよう。

冗談ではなく、真剣にそう考えていた。

先のCygnus様の言葉に、私は肩の力がスッと抜けた。
まだ2年目。
まだ成長過程。
くじけたと宣言するには、まだ時期尚早、か。

グイグイと杯を傾け、再度涙を喉元に押し込む。

おかげで、その日に誘われた大先輩からの二次会を断る羽目となった。

這々の体でホテルのベッドに潜り込み、今日の様子をツイートで振り返る。

なんだかひときわ騒がしい人間がいるな…。
まるで他人事のように自分と思しき人間のツイートに反応した。

物質も雰囲気も「熱量」があってこそ、周囲にそれらが派生するではないか。

こんな私に、何か貢献できることがあったのか。


昔ギリシャのイカロスは
ロウで固めた鳥の羽根
両手に持って飛び立った
太陽目指し飛んでいく
勇気一つを共にして

童謡で知られるイカロスの寓話では、哲学者のイカロスはその後太陽へと向かう先で墜落してしまう。
しかしながら、その意思は、後代にまで受け継がれる、という内容だ。

墜落でも追突でもなんでも、チャレンジしたことはそれなりに評価される、か。

ベッドの中でぐだぐだと考えているうちに、私はいつの間にか深い眠りへと落ちていった。


アルコールは飲みすぎると翌日に残るということをすっかり忘れたまま。


(二日目に続く)









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