2019年8月21日水曜日

小さく、強く、しなやかにー金沢ボードゲームマーケット体験レポー

2019.8.22.2110(加筆修正)



「良いことは先延ばしにせず、なるべく早めに始めよう」

これは最近、僕の中で格言としている言葉だ。時期を失せず、その場で出来ることならば、多少骨になろうとも即座に実行に移す。

とはいえ、そのためにはあらかじめ脳内に蓄積されてあった情報、とりわけそれらは活字や会話等、他者との交流を経て手に入れることができた情報からなる、いわば無意識下の行動ではないかと解釈している。

今回の金沢遠征も、後で思い返すと、OKAZU brand林尚志さんのかつてのインタビュー記事が、何かしら僕の頭の中に引っかかっていたのかもしれない。
林さんは先のインタビューでこう答えている。

(イベントに行くと交通費や出展料などがかかってしまいますが、そこを鑑みても出るべきという判断なのでしょうか?)

正直な話、ペイするかというとしませんね。なので、OKAZU Brandのゲームを色々な方に知ってもらうというところに重きを置いています。
あとは、旅行に行って美味しいものを食べると。
(中略)
特に「来てくれてありがとう」と言ってもらえると嬉しくなりますね


リンク先>ニコボド「【インタビュー】OKAZU brand・林尚志氏(後編:日本のボードゲームシーン、ルールライティングについて(該当部分は「全国のボードゲームイベントについて」より抜粋))」https://nicobodo.com/archives/interview-okazu-brand-3.html


「縁は奇なもの粋なもの」
本当に先人は上手い言葉を残すもの。

かくして、8月18日土曜日、AM9時43分、東京発金沢行きの新幹線に飛び乗った僕は、不安を期待で押し殺すかのように、一路、石川県金沢駅へと向かった。



大きなモニュメントが出迎える金沢駅は、国内外を問わず多くの観光客で賑わいを見せる。
高校野球も地元の星稜ナインが頑張りを見せ、街頭モニターの前では多くの方が足を止め、白球の行方を固唾を飲んで見守っていた。

漁師町金沢はもちろん魚介類、そして金箔工業等も有名だが、僕のおめあてはもっぱらB級グルメである「金沢カレー」だ。

市場の地下に位置する金沢カレーの老舗「チャンピオンカレー」
スパイスの効いたルーは粘性が高くドロリとし、おわん型に盛られたご飯やサクサクのカツとの相性も抜群だった。

お腹もふくれたところで、一路、今回お世話になる「ゲームスペース金沢」様へ足を運ぶ。



ゲームスペース金沢様の運営スタッフ様は、今回お世話になるボードゲームマーケットの主催・運営を主に務める。笑顔が素敵な、とても気さくでフレンドリーな方ばかりだ。
先に開催された北海道ボドゲ博でも、数名の方が様子を確認にいらっしゃるなど、その飽くなき姿勢には心の底から敬服する。

棚の中には数多くの有名ボードゲームが所狭しと並ぶ。
空調の効いた室内では、多くの方がボードゲームに興じていた。
室内をうろつく愛らしい番犬、ならぬ「番猫」は、僕の顔を不思議そうに眺めてはニャアニャアと高い声で鳴き叫んでいた。
とはいえこちらはゲームスペース、私も早速持参したボードゲームを披露する。重いゲームとは一風異なる軽めのゲームに少々不思議な面持ちだったが、取り出した「カルテル」「Fish&Ships」を喜んでもらえたようで僕自身とても満足した。


明日に備え、少し早めに就寝する。
が、もちろん眠れるわけもなく、喉の調子を整えるため、空調を切ったり入れたりを繰り返した。

翌朝。雲ひとつない青空。
眩しいほどの朝日で目が覚める。

気が急いた僕は、早めに荷物を整え、少し早めに現地入りした。中ではスタッフの方が机やイスの搬入の作業に没頭していた。
僕「番次郎書店」ブースに割り当てられたスペースは、力不足にもほどがあるほど大変広いものだった。
長いテーブルは3つ、イスも使おうと思えば5つまで。スペースも後方も含めて広く使用可能、その上、いつでもお手伝い可能というスタッフを2名もつけてくださるなど、まさに“いたせりつくせり”だ。
個人出展ながら、さながら「独り企業ブース」を運営する心地だった。

ふん、と気合を入れ、設営を開始する。
今回金沢では初めてA1版のポスタースタンドを作成・使用した。


1時間足らずで設営は完了。

私のブース運営スタイルは変わらない。
ひたすら声を出し、本を「頒布」する。「売る」のではなく「知ってもらう」
数々の有名ボードゲーム制作ブースが立ち並ぶ中、見慣れない本を頒布する唯一のサークルが僕なのだ。

カウントダウンとともに、本日のボードゲームマーケット、開幕。


気温32度と予想された今日の金沢市。
地下コンコースは天井からの光も差し込み開放感すら感じ、若干の風も吹き抜けるだろうと感じたが、人の熱と幾分高めの湿度に参ることとなり、後半はスタミナ、さながら熱中症との勝負と相成った。

北海道で大活躍した「冷たいおしぼり」は、この日も最後まで大活躍を見せ、来場された方を始め、スタッフや出展者の方、等々、多くの方に喜ばれた。


もともと汗っかきの僕。
吹き出す汗が紙媒体にかからないよう配慮し、時折スタッフから「抑えてください!」と諭されるほどの声を出しながら、僕は積極的にブースのアピールを続けた。
(もっと気楽に、のんびりと行ってもいいはずなのに、ね。)

「世界でここだけ!本屋さんでも売っていない、ボードゲームのクイズになぞなぞの本です!」
金沢の方、そして観光に金沢を訪れた方など、多くの方が足を止め、並べられた小冊子に興味を持ってくださった。
チラシやおしぼりを差し出すと、こわばった表情が瞬時にほころび、本当に嬉しそうな表情で手に取ってくださる。
それら表情の変わる様が嬉しくて、僕は疲れも忘れ、あらん限りの声を出してアピールした。

この日は能登ごいた保存会金沢支部の落成式が執り行われ、全国各地のごいた支部の方々や、東京・品川のごいた喫茶マーブルの方など遠方から多くの方が応援に駆けつけた。
会長の言葉に湧き上がる会場。
僕も誰よりも負けじとばかりに、割れんばかりの拍手で応援した。

15時を回る。すでに体力、気力、ともにレッドゾーンだ。
少し離れたスペースでは地元の星稜高校ナインが、こちらも熱い最中の甲子園で奮闘していた。
持参した梅タブレットを口にしながら、引き続き声を張り上げる僕。
スタッフが配置されているとはいえ、一人でブースを切り盛りすることを前提に進めていた以上、急な路線変更に対処できなかったからだ。人を上手く使うことの難しさを身を以て学ぶ。


16時30分、無事に終了。終わってみれば我がブースは、北海道と同じく上々の売れ行きを見せたのだった。
そして毎度のことながら、僕はここでスタミナゲージを使い果たす。

喉が痛む。
つばを飲み込むと、血液を含んでいるかのような、少し鉄っぽい味がした。
声はもう出ない。
終了後にも業務が残されているとは頭にあるのだが、それでも閉演時間一杯まで、声の続く限り片付けることなく延々とアピールを続けた。

だから、というわけではないが他の魅力的なブースを見て回ることができなかった。ゲームNOWA様では新作の試遊会なども行われていたようだが、あいにく指をくわえて眺めるしかなかった。
目の前には北条投了様の新作やもんじろう様の新作などに興じる参加者の方。
そんな僕を見かねたか、もんじろうブースの居椿氏がわざわざブースに新作「鳥たろう」を持参して頂けた。北条氏は拙著4コマの新作を手にし購入してくださった。
頭の中で何度もひれ伏しながら、僕はブース運営、とりわけワンオペについても今後見直さなきゃ、と考えることにした。


さて、事切れていようとも、会場の撤収を手伝うのは自分より他にいない。
残された体力を必死でかき集め、そそくさと撤収作業に移行する。
今回の金沢に携わった多くの方々が、イスや机をテキパキと、そして笑顔で「お疲れ様でした!」と声を掛け合いながら、最後まで指示の通りに動いて回った。

金沢ボドマのスタッフは会の終始を通じ笑顔が絶えなかった。
そして何より、現場監督がそんなスタッフに的確な指示を出す姿が印象的だった。
有能なスタッフと、それらを司る運営陣。
人を動かすためにはそれ以上の努力が必要だと、これはカーネギーの言葉だっただろうか。
撤収をしながら、ぼんやりと昨日のゲームスペース金沢に蓄積された膨大な量のボードゲームを思い出す。
あれだけの知識と経験、そしてボードゲーム等で培われた「団結心」があるからこそ、本イベントも無事に大きな事故等も起きることなく成功に導くことができたかな、と振り返った。

金沢ボードゲームマーケットは、今回5thを機に一旦お休みします、とアナウンスされた。

喉の奥の小石が外れないよう、僕は慎重にその言葉を飲み込んだ。

本当にお疲れ様でした。

一人ができることは、所詮、小さなことなのかもしれない。
しかしながら、一人が動かせるものの大きさを甘く見てはいけない。
それは結果としての量にとどまらず、その先に繋がるであろう、見えない部分に派生する部分も含めて、だ。
「自分の存在に悩んだら、部屋の中に蚊を一匹入れてごらんなさい」
ハリウッドのとある女優はそんな言葉でうそぶいた。

小さく、弱く、それは決して力づくではなく、しなやかに、和やかに。

金沢ボドマのイベントが投じた一石が、いつか大きな巨岩となり、大きな舞台を動かせる存在となるような。
わずかな時間に凝縮された体験を通じ、スタッフを始め運営に携わった方々、当日立ち上がった能登ごいた保存会金沢支部の方々、そして出展者や来場者を含む全ての方々が一丸となって、言葉の通り「金沢から盛り上げる!」、そんな計り知れない底力をひしひしと感じたのだった。

「再度の開催をいつでも心待ちにしております。」

故郷の両親が独り立ちする我が子を「いつでも帰っておいで」と見送るような、僕はそんな気持ちで暖かく見守ることにした。



翌日はあいにくの雨模様、らしいといえば実に「金沢らしい」天候だ。
たった一滴の雨粒が、疲れの癒えぬ僕の体を冷やしにかかる。
僕はそそくさとアーケードへと移動し、お世話になった方一人ひとりの笑顔をニンマリと思い浮かべつつ駅コンコースに並ぶお土産品を物色することにした。僕にとって、それが本イベントに参加した何よりの報酬なのだ。


(了)

ありがとうございました。





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