2019年12月11日水曜日

笑顔をお土産に 僕の静岡・関西遠征記 備忘録

怒濤の如くゲームマーケット秋2019が終わりを告げた。
制作もようやく一段落し、しばらくは購入した作品で遊びつつ、ある人は社会生活に戻り、ある人はゲームマーケット大阪、春に向けて再度準備を整える。

「お坊さんが走り回るほど忙しい」
お坊さんに限らず、ゲーム製作者も各々の形で「師走」という暮の洗礼を浴びつつあった。

そんな中、

我が番次郎書店は、疲れた体を引きずるように、2週間後に控えた静岡アナログゲーム祭り、翌日の「盤祭2nd」に向けて、いそいそと準備を始めていた。
いい加減に自分の年齢をわきまえなければ、いつまでも若くはないぞと己が体に言い聞かせたのもつい先日のことだったか、相変わらず反省しない自分。

僕だけではない。
これら地方イベントが、単なる「ゲームマーケット延長戦」にとどまらない事は、どの出展者の方々からも強い意気込みとして強く感じ取れた。
早くて夏頃から事前の告知を行った弓路さん、高河さん、ゲームカフェぶんぶんさんら静岡アナログゲーム祭りスタッフ一同、盤祭2ndを運営するコロンアークの「たなやん」こと田邊さん。
久遠堂の久遠さんや芸夢工房の北条投了さん、Mob+の宮野華也さんらは、この日に合わせてなんと新作ゲームを作成した。
ノスゲムさんはゲームマーケットでも人気を博したウッドバーニングのボードゲームブローチを数多く用意、この日のための新作なども多数取り揃えていた。
ボードゲームサプライなどで有名なuchibakoyaさんや、ボードゲーム制作やTRPGなど幅広く活動を展開する地元静岡のサークルCedarBook’sさんなど、ゲームマーケット秋ではお目にかかれない方にもお会いできることも地方イベントが発信する魅力の一つだ。

一方の僕も、そんな方々と対抗・吸引ほどの魅力的な何か、を持つわけではないが、今回もゲームマーケット秋などでそこそこの好評を博した「クロスワード付きチラシ」を用意することにした。
クロスワードを一から考えるという妙なこだわりをみせたおかげで、結局予定が過ぎた分の延長料金を支払いはしたものの、無事に入稿し、当日予定に何とか間に合わせることができた。


2週間はとても短く、送付や新規クイズなど細かな準備に追われるうちに、まとまった休みをろくに取るができなかった。
人気や名声どころか、イベントで小冊子を売る以外にまとまった収入のない自分、目の前には先のゲームマーケットで購入した山のようなボードゲームと、持ちうる限りの精力を注ぎ込んだ小冊子の段ボールがうず高く積まれていた。
RPGで例えるならば、これが僕の「装備」となるわけだ。
ひとつ確証があるとすれば「クイズは面白い」ということ。
少しのお金とわずかな確信だけをサイドバッグに詰め込み、僕は金曜昼12時、新幹線ひかり号にて一路、静岡県藤枝市へと向かった。


全国的な寒波が押し寄せる、まさに冬本番、普段は温暖なここ静岡も、少し肌寒い天候の一日。

少し早めに現地入りし、まずは会場の下見を行う。


体育館ほどの広さを持つ藤枝市文化センターは、適度に空調も効き、施設内の自販機やトイレなどの設備も十分に完備されていた。
現場を取り仕切る弓路さんらスタッフの指示に従い、力仕事を良しとする僕は机の設置に取り掛かった。
残りの時間はステージの整備だ。
エキサイティングブースを事前に確保した僕は、他のブースが華やいだ声でわいわいとブースを設営する姿を尻目に、一段高いステージ上で独り黙々と作業に取りかかった。

テーブル上に作品を展開する。
ワンオペも4年目になると、それなりに販促の方法が板につくものだ。
頒布品を並べるだけではなく、早押し機のセッティングに、当日に予定されている「クイズイベント」の準備も簡単に行わなければならない。
喉の方は本調子とまではいかなかったものの、ゲームマーケットからだいぶ時間が経過したこともあり、喉元はそれなりに潤いが戻っていた。


練習を兼ねて問題を読み上げていると、手の空いた方が参加にいらっしゃった。
「転々と市」「ジャパンジャン」などを展開するガーデンゲームズの樫尾さん、ひろむさん御夫妻や、同じ建物の3階でゲーム会を展開するやんまぁさんらがこぞってボタンを押しに参加する。
ピンポン!ブー!
高らかになる音楽に「正解!」の声も思わずうわずる。
スイッチの調子はすこぶる好調。
舞台を後にし、制作同士の前日会に参加を予定するも、この日も日々の4コマ制作を欠かすわけにはいかないと思った僕は、名物「さわやか」のハンバーグを泣く泣く逃すことにした。







翌朝。
近傍のホテルで充分すぎるほどの朝食を摂り、午前10時、いざ会場へと向かう。
前日に設営を済ませたとはいえ、出展料や音声調整など、細部のこまごまとした調整を済ませると、時間は瞬く間に過ぎ去っていった。

11時ごろ、事前に予約した地元焼津港のマグロ丼が到着し、しばしの腹ごしらえ。
かなりのボリュームに圧倒されつつ、名前の通り口の中でトロっと溶ける中トロ丼を堪能する。


午後12時、いよいよ開場。

僕の位置するエキサイティングブースはステージ上ということもあり、会場内の参加者からは少し足が遠のく様子。
それでも事前に用意した手持ちのチラシや早押しスイッチなどを駆使し、ゲームマーケット秋で学んだ(はずの)呼び込みを行う。
「年末年始にいかがですかー!」
「本屋さんには売ってませーん!」
会場内に響き渡る僕の声は、壇上ということもあったからか、かなりの高域に響き渡っていた事実を後になって知らされた。

次第に、ボタンに興味を持ったと思しき方がちらほらと壇上に現れる。
その都度僕は問題を読み上げ、ピンポンのボタンを押す。さらに興味を持った方には、小冊子のアピールも欠かさない。

汗ばんだ体が冷えないよう、時折、暖かい飲み物を口にする。
静岡アナログゲームマーケットは「イベントはみんなで作り上げるもの」というコンセプトのもと、出展者、来場者を含む、会場内全ての参加者を「一般参加者」と呼ぶ。
僕のブースにも、地元静岡のゲームカフェ「らみぃ」の店長をはじめ、ゲームマーケット秋では機会を失し購入できなかったという一般参加者が訪れた。
「ゲームマーケットには行けなかったので、嬉しかったです!」
この声を聞くたびに、それまでの疲れが吹き飛ぶようだった。


午後3時、この日のために用意した「クイズステージ」が開催される。
実はボードゲームにこだわらない「レギュラー問題」を作成したのは実に数年ぶりのこと。
難易度の調整に四苦八苦しながらも、普段のボードゲーム制作で培った「楽しさを重視した問題作成」を心がけた。

そのひとつが「勝ち負けなしの協力ゲーム方式」だ。

知識が勝負のクイズならば本来あって然るべしとされる「勝敗」の概念を取り払うことにした。
つまり「勝った、負けた」ではなく「クリアできた、できない」を要所要所に取り入れ、最終的に「一番貢献できた人を投票制で決めます。」といった方式でまとめる方式を取り入れた。

問題をとちってしまったり、全体的な難易度が定まらなかったりなど、司会として反省するべき面が多々あったものの、ツイート上では「楽しかった」といった声が上がり、僕は何とか救われた思いがした。

しばしの休憩を挟み、再び小冊子を頒布する。
閉館まで1時間となるも、客足は途絶えることを知らない。
近傍でゲーム会が開かれていることもあり、購入した作品をその場ですぐに遊べる態勢が整っていたことは一般参加者にとっても嬉しかったのではないだろうか。


わずかな隙間を見て、各ブースにご挨拶へ向かう。
ノスゲムさんのブローチはこたつ猫がBABELで遊ぶ作品が偶然にも残っていたので迷わずゲットした。
らめれこゲームズ!にはクリエイターの珠洲ノらめるさんらがいつもの笑顔で頒布を行なっていたので、併せて「おそらのゆうびんやさん」のお礼を無事に済ませることができた。
EJIN研究所のEJINさんも、昨夜下山した疲れを見せることなくブースに立ち、周囲に作品の説明を繰り広げていた。

忙し過ぎず、適度に、ちょうど良い距離。
暖房のせいもあったからか、僕は少しのぼせていたことに気がつき、慌てて自販機のスポーツドリンクをガブガブと飲み干した。

夕方17時、拍手とともに閉会。
大きな拍手が湧き上がる。
おもわずへたり込んだ僕だったが、翌日を控えている以上、ここで倒れるわけにはいけない。

疲れた体をだましだまし荷物をまとめ、僕は次の新幹線に乗り込むべく、そそくさと会場を後にした。
あたかも富山の薬売りのような姿をまとい駅ホームへと向かった僕は、近傍の立ち食い蕎麦屋にて勢いよく月見そばをすすった。
ツイート上では北海道勢と静岡勢とのご当地グルメ合戦が賑わいを見せていた。
そんな盛り上がりをよそに、僕は疲労も相まって移動中の新幹線でとろとろと眠りについた。
ホテルに到着した後も何となく空腹が抑えられず、結局僕は、近くのコンビニでおにぎりとエナジー系のゼリー飲料を買いに走った。


疲労の残る体のまま朝を迎える。
清々しい朝日には、少しうろこがかった雲が覆われていた。
納豆、味噌汁と大豆中心の朝ごはんをお腹に入れ、僕は次へと向かうべく朝の支度を始めた。


会場となる中崎町ホールは閑静な住宅街に位置し、近辺にはカレー屋や串カツ屋など食の見所も豊富だった。
主催となるコロンアークの田邊さんらと協力して会場を設営する。
とはいうものの、特別なステージ等も無い真っ平なスペースのため、机や椅子を配置したあとは、互いに配慮をしながら各々の試遊スペースを作成するのみだ。
販売スペースの設置も後ほどで良いため、時間の余裕も生まれ、大変ありがたかった。

僕は昨日同様に小冊子と早押しスイッチを準備し、てきぱきと、ものの15分ほどの時間で設営を終えた。

僕が担当する「番次郎書店」の試遊スペースは入口手前すぐ左手。必然的に待機列の状況が目に飛び込んでくる。
開場15分前、待機列には述べ30人ほど並んでいただろうか。
中には、確認できただけでも、大阪の有名ボードゲーマー山路さん親子や、ラミィキューブの強豪ななちゃん親子、人気Podcast「いかとりにょりとおけいのいかがわしいラジオ」のおけいさん、同じくPodcast「木曜ゲーム会アフタートーク」MCゲームカフェ「賽翁」店主てちゅろんさん、更には関東から「ボードゲームカフェパス」「ゴリラ人狼」などの作品に携わったボドチューバーこと翔さんの姿も。etc,etc...。

「待っている時間にどうぞー」
僕は甲高い声を上げるとともに、本日分のチラシ兼クロスワードを待機列の方一人一人に配布して回った。
せっかくのパズルだ、上手に活かす方法はないかと模索したのだ。
実は前回ゲームマーケット秋も実践を試みたが、あいにくの雨模様だったこともあり断念してしまった。
今回の好天と待機人員に恵まれ、無事に実現することができたのだ。


午前10時、盤祭2nd、開場。

周りを見回す余裕など持ち合わせなかった自分だが、「前々から小冊子に興味があった」という方から「クイズそのものに興味は無かった」といった方まで、多くの方が興味を示し、ボタンを押しに足を運んでくれる。

もちろん、昨日同様、ボードゲームのイベントで、ボードゲームではない作品を提供する僕だ。参加者からの奇異な目も少しは慣れたもので、負けずに声を上げる。
「ボードゲームでクイズをやってまーす!」
「世界で唯一、ここだけでーす!」
そんな僕の姿を見かねてか、昨日の静岡アナログゲーム祭りでもお世話になった「いかラジ」のいかさんが問題を読みに駆けつけてくださった。
しばしの時間だったけれど、問題を「読む」側ではなく「解く」側に回るという体験も、久しぶりに味わうことができた。


時計の針は13時を指した。
机の配置を変え、次はいよいよ販売の時間へと移行する。

前回、そして昨日も活躍した、ヤブウチリョウコさんの「#ボドゲフリペ」を目の前にそなえ、昨日同様、準備は万端だ。
いつもと違う点は、早押しのスイッチが常備されていない点。
つまりは、純粋に「小冊子の中身で勝負」というスタイルだ。

先ほど以上に伸びた待機列は、開場15分前の段階で、ざっと述べ60人以上。
今回もバネストブースの「ファストスロース(ナマケモノレース)」や、uchibakoyaブースの「タンクチェス」、人気のscout!やボドゲイムhiroさんの小冊子も委託販売されるなど、ゲームマーケットにも負けず劣らじと目玉商品が揃い踏みする。

PM14時、販売の部、開始。
開幕は多くのブースで列ができるほか、机の配置がコの字だったことも影響し、中央部ではさっそく互いが購入したばかりの作品を見せ合うなどの姿がちらほらと見受けられた。

一方の僕は「これがラストだ!」と意気込み、最後の喉を振り絞る。
不思議と声のペースが落ちないことに気がついた。
もちろん声帯はすでに限界値を突破している。
それでも、ブースの前に立ち止まり、興味を持ってパラパラとページをめくる方がいらっしゃると、湧き水のように声が溢れ出た。
知ってもらう、体験してもらう。
前段の試遊、後段の販売、形は変われども、その根幹は同じ。
ブースを通じ、創作した作品を知ってもらうこと。そのやりとりの中でさらに興味を持った方に向けて、さらに作品をより知ってもらおうと提供する、そのスタンスは変わらない。

終わり頃となり、僕はご挨拶も兼ねてしばし回ることにした。
いつも絶えない笑顔のバネストでは、中野さんをはじめ多くのお手伝いさんがてきぱきと動き回っていた。ここでは注目作のファストスロースも無事に購入。
僕のブースからちょうど真正面に位置するuchibakoyaでは、関東でも根強い人気のタンクチェスを購入。前日前夜まで製作された詰め問題まで特典につくサービスぶりだ。
静岡、盤祭2ndと先行販売されたフダコマゲームズのマフィアNo.5も、試遊の段階で多くの方が体験に訪れるほどの人気ぶりを博した。
芸夢工房、サザンクロスゲームズでは新作「エイジオブタイラント」「THE実名報道」の話題作を無事にゲット。
その美麗な絵柄は切り絵となっているコロンアークの「メジャーアルカナ」も、ゲームマーケット秋で購入し損ねた作品。こちらで無事に購入。
・・・総購入額など訊くだけ野暮というもの。

夕方17時、盤祭2nd、無事に終幕。
片付けを終えた後は、いよいよバネストの中野さんとクレーブラットの畑さんとのトークセッションだ。
ここでしか聞けない深い話がポロポロと溢れる。

トークの終始を通じ、御二方の「この気持ちを伝えたい」という熱量の高さに圧倒された。
だからこそ、全国を回り、自分の身を投じてでも、ある意味、儲けなど多少度外視してでも、伝えたい、通じ合いたい、そんな気持ちがありありと伝わった。

その後は場所を写し、お酒を交えた二次会へ。
すでに体力、気力ともにヘトヘトだった僕は、ジョッキ一杯のビールで既にかなりの酔いが回った。
何を喋ったのだろう、失礼な言動は(おそらく)抑えていたはずだが…。

ふらつく足取りでなんとかその日のホテルに到着した僕は、備え付けのガウンに着替える気力もなく、そのままベッドへと倒れ込んだ。


「布団の中から出たくない」
打首獄門同好会の曲にそんなナンバーがあるけれど、僕は連日の無茶な遠征に加え、昨日一杯しか口にしなかった久しぶりのビールが体から抜けきれていなかったことなど諸々が重なり、ホテルのチェックアウトギリギリの時間までベッドから抜け出すことができなかった。

自由気ままの関西遠征、最終日は帰りの新幹線さえ厳守するほかには、特段予定した場所もない、自由気ままの旅。関西はこの日も穏やかな冬晴れに恵まれた。
うっかり阪急電車の乗り継ぎを間違えた僕は「まあいいや」と、そのまま法隆寺を観光するなど、少し送れた紅葉狩りを存分に堪能した。

ぐるりと遠回りしながら、向かった先は京都府伏見区のボードゲームプレイスペース「Light&Geek」様

先日12月1日にオープンしたばかりで、入口からはほのかに檜の香りが漂う。
店内は平日の昼間にもかかわらず、多くの若いグループがわいわいと賑わいを見せていた。
店長はPodcast「万屋楽団のそれなりな日々」を配信するボードゲームサークル「万屋楽団」のサンジョウバさん。
自身が手がける「謎解きは形容詞の後で事件簿」は第4回ボードゲーム大賞2次審査通過、第1回ボードゲーム セレクション店舗賞受賞など輝かしい成績を収めるなどの実力派サークルだ。

店内は「あ~ん」の読み仮名順できれいに整列された棚。
プレイスペースながら飲み物、食べ物の持ち込みはOK、その上、店内にはティーパックのお茶やコーヒー、冷蔵庫には冷たい缶ジュースも常備されているという気の回しようだ。

店内には有名ブロガー「うらまこのボドゲあれこれ」のうらまこさんが偶然にも来店中だったので、さっそくご挨拶、周囲の方も交え、手持ちの拙いボードゲームを広げる。
さすが幅広い知識に加え、多くのボードゲームを経験された方、プレイするや否やすぐさまゲームのシステムや勝負所を見抜き、明るい笑顔とともにさらりと勝利を奪っていった。さすがだ。

わずかな滞在時間の中、次の目的地に向けて京都を後にする。
僕が関西に向かうときは必ず足を運ぶ場所、加古川に構えるボードゲームプレイスペース「駒の時間」様だ。

komaさんはあいにく入院中。ご挨拶に伺うと、ちょうど見計らったかのように病棟でリハビリに励むkomaさんから店内のTokiさんに電話が鳴る。
僕はいつもより少し声のトーンを上げながら、病室にいるであろうkomaさんに向かって「頑張ってください!」と声をかけた。
喉の奥の小石が、ころりと落ちないよう、注意を払いながら。

電話を終えると、Tokiさんがコーヒーを入れてくれた。
ふと外の暗闇に気がつくと、時刻は夕方の17時、昨日の今頃もここまで深く闇に覆われていたのだろうか。

Tokiさんとしばしの時間おしゃべりをした。
駒の時間が奏でるフィギュアとボードゲームで囲まれた空間は、いつ足を運んでも心地よく、そこで繰り広げるおしゃべりは必然的に明るく華やいだものばかりとなった。
「京都のサンジョウバさんのお店は本当に良かったです!」
「盤祭、すごく楽しいイベントでしたー!」
帰りの時間が惜しくなるほど話は広がり、僕は帰りの新幹線が迫るギリギリまで話し込み、加古川を後にした。

新幹線に飛び乗った後、結局今回も旅の終始を通じ、お土産もグルメも満足に味わうことのなかった、過ぎてしまえばあっという間の遠征だった。

疲労と空腹が重なり、僕は帰りの新幹線でずっとまどろんでいた。
「何をしていたんだろう…。」
後ろ向きに、ではなく、あくまで前を向きながら、今回の遠征中に行った由無しごとを、自分の頭で整理することにした。

「クイズ、楽しかったです!」
「4コマ、いつも見ています!」
今回の旅程でお会いした方のそんな言葉が、本当に身に染みて嬉しかった。
問題やネタを全て一から考え、体裁を整え、失敗や雑味も度胸でごまかしながら、相手に笑顔で提供する。
上手くいったかどうかはわからない、ただ、今の僕の胸の中には、大きな充実感だけが残っていた。
その「充実感」の正体とは、自分にとって何だったのだろう。


「ゲームマーケットは是非『体験』に足を運んでください」
前回春、アークライトの野澤さんがラジオ番組に出演された際に口にした言葉だ。
「売るではなく、体験を提供する場」
それを聞き、前回春の番次郎ブースでは「ここでしか味わえない体験」をテーマとして運営を展開した。
単に小冊子を売るだけではなく、早押しボタンを用意したり、無料のパズルや小ネタ満載のパズル、他にも、実は司会者の読み方を研究し、問題を読む練習などをこっそりと行ったりもした。

それは何より「笑顔」こそ、自分のブースが求める最上級の提供品と考えたからだ。
適度な問題に難易度の調整、果てはなぞなぞや謎解きなど、「せっかくブースに立ち寄っていただいたならば、笑顔をお土産に帰ってもらおう」をテーマとしてブース運営を展開したこと。

そうだよ、そうだったよ!
ゲームマーケット春だけではなく、それから続く北海道ボドゲ博1.0や金沢ボードゲームマーケット、三宮ボドゲフリマ9も、根底は「笑顔をお土産に」だった。
興味を持った方に、直接作品の見どころを説明し、作品を通じた「笑顔」を添えて帰ってもらう。そのついでに小冊子を手にしていただけたら尚更良い。

今更ながら、僕の中でのブース運営の醍醐味とは、その短いやり取りの中で交わされる「笑顔」にあったのではなかっただろうか、と考えた。

そして、それこそまさにボードゲームと相性が良い「コミュニケーショのひとつであり「制作側が込めた想いを目で、耳で、肌身で、直接感じることのできる」「その逆に、ありがとうの気持ちを直接伝えることのできる」そんなやりとりを生み出す絶好の機会こそ、イベントが育む本質ではなかっただろうか、と。

歳を重ね、あらゆるしがらみが増え、次第に世間の目を気にするようになる、そんな中、「ボードゲーム」という後ろ盾で、老若男女の垣根を超え、ともに笑い、ともに涙し、ともに興奮できる、
一時でもそんな体験が提供できるよう、僕はこれからも作品を提供したいと願うし、そのためには、これでいいやと留まることなく、常に次へ、次へと自分自身を心身ともに進化・深化させなければと考えるのだ。

そうだと気がつけば、たしかに今日お会いした、Light&Geekのサンジョウバさんも、駒の時間のTokiさん、Komaさんも、ボードゲームカフェ、プレイスペースが奏でる心地よい空間には必ず「笑顔」があり、外を出た後もしばらくは心が暖かくなった。
知らず知らず、僕もそんな「笑顔」をお土産に頂戴した、というわけだ。

・・・。

無事に帰宅したときは、夜の23時をとうに回っていた。
遅くまで開いているスーパーでありあわせの弁当を買い、ようやくまとまった食事を口にすると、これまでの疲労がドッと関を切って押し寄せた。
「今日も4コマは休みます」と断りを入れ、スプーンラジオを流しつつ、僕はいつもの布団にくるまった。
ふと冷蔵庫の冷えが悪いことに気がつき、そこでようやくモーターの異常ランプが目に入った。
次のイベントでは冷蔵庫代くらいは稼がねば。
まあ、そんなに大きくないヤツでも、いいかな、なんて。

(了)

2019年12月2日月曜日

頑張りの、その先へ レイアウトの勉強、一年間の成果発表

こちらの記事は‘Advent calendar 2019 今年一年がんばったことをテーマに記載した記事です。



クイズが好き、ボードゲームが好き、
そんな想い全開でダダダっと綴った「Board Game Quiz」は、Cygnusさんら関係各位のお勧めがあったこともあり、2016年ゲームマーケット秋にて初出展し、一部の巻は途中完売する僥倖に至った。



もちろん反省することもしかり。本の体裁を何とか保っただけの「計算ドリル」といった見た目も払拭できなかった。
次に頒布をするまでに、何かしら大きな見た目の改革を行わねばと、自分に言い聞かせ、試行錯誤を続けた2年目の秋、拙著4冊目となる小冊子の頒布。



ページ全体のレイアウトはもとより、ジャンル構成から色彩、あまつさえ挿絵イラストまで、色々と挑戦した一冊。

大きな変革と同時に、身の回りのあらゆる“モノ”を失った、そんな2019年初頭。
ふと気がつけば昭和53年生まれの自分は「大厄」を迎える。
確かに多難だった前厄の一年、そして続く大厄の年、それもまあ、大厄ならば致し方あるまい、と無理やり考えを押し込み、兎にも角にも体調だけは整えつつ次回作を捻出せねば、と、次なる計画だけはしっかりと練り上げていたのだった。
部下をとことん酷使するブラック企業の上役を全く笑えない。

しかしながら、「最新刊が常に最高傑作!」をモットーとする自分にとって、ほんの数ヶ月前とはいえ、出来立てほやほやの新刊のどこから手を加えるべきなのか、など、しばらく考える余地などなかった。
目の前の作品を宣伝する製作者が、次の作品のアイデアを閃いたとツイートするほどの天才的な感性など、自分に持ち合わせているはずもなく。
普段の落ち着きのなさに加え、あらゆる面での勉強量の絶対的な不足。
次回ゲームマーケット大阪を控えた小冊子制作を目の前に、僕には愕然とする余裕どころか、逆に「たとえ中身が入れ替えただけのものであろうとも、それはそれで十分形になるのでは?」といった妙な余裕すら構えているほどだった。

そんな中、制作の熱量そのままで購入したAdobe Create一式は、未だPhotoshopを簡単に覚えただけの状態だった。
制作を続ける上で、もっと良いツールに関しても勉強しなくては。

次回ゲームマーケット大阪に向けての執筆を続ける中、見様見真似で「Illustrator」と「InDesign」をイチから勉強するにした。もちろんこれも独学だ。
幸いAdobe Createのページには「ことはじめシリーズ」と題し、初級、中級等に区分された懇切丁寧なチュートリアル動画が無料で視聴できる。
https://helpx.adobe.com/jp/creative-cloud/tutorials-explore.html

これらをじっくりと視聴しつつ、とにかくいじってみることにした。
Illustratorなんて図の書き方からすでにわからない。まして当時の僕に取って「パスのアウトライン」「不透明度を下げたレイヤーを焼き込みリニアに変更」など当時の自分にとって古文書のような文言に聞こえる。
形は違えど、ボードゲーマーが「スタピー取って初手から連続手番で資源確保するのが拡大再生産の勝ち筋じゃないの?」と、よどみなく口にできるようなものかもしれない。

愚痴を吐いてもしょうがない。まずは実践だ。
簡単な図形一つ書くにも、何時間もの時間がかかる。
「フォトショの方が楽なのに。」と何度もひきかえそうとした、が、同じ心境を昨年Photoshopをいじりながら「パワポの方が楽じゃん」と口にした僕なので、これもいずれ慣れるだろうと構えることにした。

三ヶ月ほど経過しただろうか。
少しはIllustratorの基本的な使い方も覚え、少なくともこれくらい簡単なアイコン程度ならものの30分程度の時間で作成できるようになった。
まずは一歩だけ前進。

同時並行して進めたIn Designも多少の使い方を覚えた。
InDesignは文字の段落分けやカーニング、縦中横等も比較的楽に行えるため、小冊子どころか、ポスターやお品書き等に関しても今後手放せない存在となった。



斯くして我は独裁者に、こそなれなかったが、数ヶ月ほど勉強した成果がそれなりに現れたゲームマーケット大阪新刊「Analog Game GAMEアナログゲームのなぞなぞブック」「きょうもボドびより」は完成した。


実は12月末、初めてコミックマーケットに赴き、この小冊子を執筆中、同人誌レイアウトのツイート講義を毎回開催されるPOO松本先生に、前巻「NEXTARTEA」のレイアウト御指導を願った。
クイズの本というアドバイスも難しい本にもかかわらず、大変詳細なアドバイスを頂戴することができた。



その際、何かしら私の行動が先生の琴線に触れたらしく、先生がアドバイス受講者に限定で配布した「鬼の1日講義チケット」を獲得することができたのだ。

不安な面持ちで4月にお会いし、名の通りビシバシと各所の指導を仰ぐ。独学が主体だった自分にとって、これが最初となる「相手からのレクチャー」だ。

レイアウト指導をもとに、ゲームマーケット大阪→春までのわずかな制作時間ながら、この時、実に「クイズ本リメイク」「なぞなぞ本2巻」「4コマ本2巻」という3冊同時進行を計画し、文字通り死にそうになりながら這々の体で無事に3冊とも入稿。ゲームマーケット2019春、頒布。



そのご縁もあったのだろうか。ゲームマーケット春が終わった後、堀場工房の作品イラストを務める漫画家「たちばないさぎ」先生から、御自身の講義を拝聴できるという機会にも恵まれた。
4コマのイラストも、キャラクターにばかり傾注し過ぎ(現に今もそうであるため)こちらで講義を受けた「遠近法」「パース法」といった内容が脳内に染み渡るように入り込む。


早速作品に反映させる。上手くいかない。めげずに次!
心ある読者の甲斐もあり、連載中の4コマは大きなバズりなど一度もなかったものの、更新頻度を一定のペースに保ちつつ、次回以降の3巻、4巻と頒布を継続することができた。

そしてもう一方、






夏頃、無謀とは思いつつ今回のクイズ小冊子「2019年史(仮)」のプロジェクトが走り出した。
従来のボードゲームクイズのほかに、ページ内には年表やその月の出来事といったおまけ要素を多数そろえた上で、見ていて飽きないよう、レイアウトや編成を細部計画することした。

クイズというX軸と、史実を綴るというY軸、その両方を、どちらの読み手にも、わかりやすく伝えるための本。
だからこそ、より高い水準の「読みやすいレイアウト」を求められた。

「見習」という言葉があるように、独学の基本は諸先輩方の見様見真似、とはいえ、その真似するべき対象となる作品が手元に見つからないという現状だ。
古本屋などを巡っては、教科書、参考書などをパラパラとめくり、問題構成や年表の書き方などを参考にしようとするものの、どれもがいわゆる「霞ヶ関文書」のような、言うなれば「きれいにまとめました。読みやすさなど二の次です」といった書籍が大半を占めていた。
これを読んで受験勉強か、うん、学生諸君は本当にお疲れ様です。

一切の取っ掛かりが見つからないまま、結局締め切り間近となった次回ゲームマーケット秋のサークルカットには「2019年を振り返る」と最低限度の情報しか提示できないまま送付するに至った。

考えたってしょうがない。何かしら動かなくては。

ないと分かった以上、自分の観測できる範疇で頑張るしかない。
年表だから、時代構成に合わせる?
数性があるならば、グラデーションを入れよう
最も強調すべき言葉は何?

何日も頭を悩ませながら、少しずつ、少しずつ、その牙城を崩しにかかる。



9月初頭、ようやく叩き台となる第1案が完成。
文字を大きめに、どちらかといえば、前作のレイアウトに忠実な構成だ。
一点工夫したといえば、問題そのものをカード化させ、あたかもアナログゲームらしい演出を施したことだ。

しかしながら、黒が画面に強調されると目に余計な負荷をかける。
適度な余白がなければ、ぎゅうぎゅうとしたイメージとなってしまう。

配色を再検討することに。
モノクロとはいえ、白と黒の組み合わせは無限にもつながる。
とはいえ、白一辺倒だと視線が滑ってしまう。
資料をパラパラとめくり、アイコンを施すことにする。

出来上がるまで何度もプリントし、確認。

第2案、第3案と熟考するうち、制作期間は瞬く間に過ぎていく。

独り作業で苦しむ中、唯一の心のオアシスはネット上だった。
評価をしてくれたのも、励ましてくださったのも、ひとえにネット上で頂戴した各種のアドバイスだった。
もちろんツイート上には心にもない注文や言葉、ほかのブースの和気あいあいとしたテストプレイの様子も日々目に飛び込んでくる。
“落ち込んではいけない、そもそも土壌が違うのだ”
何度となく自分に言い聞かせつつ、どうしても深く悩んだときは、とにかく横になった。
食欲の落ちた自分にとって、眠ること、横になることが気分転換の一つとなった。
少し気分が上向きになったら外を軽く走り、お金に余裕があったら手当たり次第に本を買い、ひたすらページを繰った。

10月、締め切り2週間前。
ようやくページ全体のレイアウトが徐々に固まりを見せる。


ここからようやく細部問題の修正、挿絵や背表紙の作成などの作業へと移る。
あれほど計画的に進めたはずの作業も、結果、締め切りまで時間を切り詰める日々が続いた。

10月27日、無事に4コマも含めた小冊子2冊を無事に入稿する。


数週間後、目の前には、少なくとも半年前には想像だにできなかった小冊子の箱が、今まさに眼前に積まれていた。
「自分が作ったのか…」
しばし放心状態となる自分。ここまでできたという自覚が今ひとつ保てない。
当然だ。
ちょうど一年前までIllustratorもイラスト技術も何も手にしていなかった人間が、それなりに技術が施された本を「これを自分が作ったのだ」とポンと手渡されたところで、まずは疑うのが本筋ではないか思う。



亜熱帯の動植物ほど急激な伸び代があったわけではないけれど、自分なりに発芽した、成長の証。

濃い目のコーヒーを淹れ、ダンボールの包みに気をつけながら一息つく。

喜びは後からふつふつと湧き上がるものなのか、興奮のあまり、その夜はなかなか寝付けなかった。
ゲームマーケット秋本番が、本当に楽しみとなった。
さながら遠足を待つ小学生の面持ちだ。


あれから少し時間を置いた今、改めて本を見返すと、諸所「こうした方がいい」「ここはこうできる」といった目線で(偉そうに)自分へのダメ出しを発動してしまう。
あの時は確かに「傑作だ!」「これ以上はできない!自分の力の限界!」と感じたはずだったのに、だ。

喉元過ぎればなんとやら、
これも自分の本当に悪いクセで、苦しい、もう勘弁!と感じた出来事も、数日経てば記憶の隅に追いやられ、目の前には美麗な思い出ばかりが残ってしまう。
「あのときできた自分がいる。だから、今なら、きっとこれもできる」
去年の今頃は思うことすらできなかった視界の最中、僕はあのとき「これができたらなんだってできるはず」といった希望はどこへやら、「次はこれ」「自分はまだ未熟者だ」と、その開けた視界に一切目もくれようとはしていない。

来年になれば、今とは違うまた別の世界を、この目で見たい。
そのためには、今この手にある豊穣の喜びを一旦脇におき、喉元に忘れたはずの「できない苦しみ」を何度となく味わいながら、またも進まなければならないだろう。

まあ、それも、いいか。

未だ眼前の視界は霞んでいるけれど、自分の目指している方々、自分が目標とする方々が、どうやらそんな頂上近辺で楽しく談笑している気がするからだ。

負けるものか。
僕はさかずきの代わりに買った炭酸水をぐいと飲み干すと、数週間後に控えたイベントに向けて、またペンを走らせるのだった。

今年一年、本当にありがとうございました。
取り敢えず来年も、無理のない範疇で、走り続けてみようかと思います。

2019年11月26日火曜日

「売れる」から「売る」への挑戦 僕のゲームマーケット秋2019奮戦記

11/27AM8:40 一部推敲


ボードゲームに関するクイズ・4コマの小冊子。
苦心した末に、無事に念願の入稿。

早割特典も使用でき、それなりに時間の余裕を持った僕の次なる作業は、広報活動へと移る。
精鋭「番次郎書店」、店長兼店員兼掃除当番兼おやつ係も含め全て自分一人というブース運営だ、当然、いちばん自分が苦手とする宣伝活動も一人で行わなければならない。

殊更、今回秋に至っては4コマとクイズ本という2作品同時進行に加え、印刷業者を変更したこともあり制作が難航を極めたため、締め切り寸前まで作業に明け暮れる羽目となった。
全ての時間を作業に充てたこともあり、本来なら宣伝等に割く時間も最大限作業へと費やしてしまった僕。

まして綺麗どころとはいえない40過ぎのオヤジという加齢に、周囲のキラキラしたボードゲーム制作とは対照的な「本」だけを制作・頒布するサークルである。

それでも僕は、否、それだからこそ、ほかのサークルとは違う「何か」にチャレンジしたかった。

そのひとつが「売れる」ではなく「売ること」だった。

今回秋はそんな「売ること」に尽力した内容をテーマとし、少々駄文を綴ろうと思う。



具体的な数は控えるが、注文部数は前回春と同じ部数だけ発注した。
2週間後に静岡アナログゲーム祭、盤祭2nd、さらに年末以降もコミックマーケット97、沖縄じょーとー市など多くのイベントを喫緊に控え「少し心許ないかな」と不安にもなったが、兼ねてからの自己肯定感の小ささにより、今一つ自分の作品に自信を持てなかった。
広報で最も大切な「自分の売り」とする行為であるハズなのに、だ。

制作を終え、魂の抜け殻となった身体を引きずるように、11月初頭に行われたボードゲーム新作体験会「フォアシュピール」へと足を運ぶ。
新旧問わず、多くの作品で賑わうを見せる本イベントも好評につき実に2回目を迎える。

席の空いた作品を見計らい、数作ほどプレイする。
サントラをつける作品、本物の貝を使う作品、見た目のデザインがおしゃれな作品、etc、etc…。
どの作品も手が込んでおり、インストを兼ねる製作者からは作品に対する強い意気込みすら伝わる。
「負けないぞ!」といった反骨精神でも沸くようならば、僕だってもう少し違う成長が見られただろう。
しかしながら、これら作品と同列に私の本が語られることに心底恐怖を感じ、ゲームマーケット直前、僕は怯える仔犬の如く、仮病を使ってでも出展キャンセルのことばかり考えるようになっていた。

「落ち込んでばかりもいられない…。」
少し熱めの風呂に浸かりながら悶々とする僕。
ひとつ確かな事実があるとするならば、周囲のボードゲームサークルと同じような広報活動が、書籍中心で展開する僕のサークルにイコールで結びつくものではない、ということ。
具体的には、体験すれば興味を引くというものでも、読んで貰えば100%魅力が伝わるというもの、おそらくだが、そのいずれでもない。
周りと毛色の違うサークルだからこそ、別の切り口を模索しなければならない。
しかるに、そんな問題をズバッと解決できる妙案など、今の気落ちした頭では到底浮かぶはずもなかった。

3日ほど延々考え続け、何かしら気分転換を図る目的も兼ね、僕はこの日、物置と化した作業部屋を少し片付けることにした。
ふと、本棚から1冊の同人誌が顔を出す。
今年の夏コミで購入した「Hello Design(朝倉千景著)」という本だ。

読み返すと、実に衝撃的な内容だった。
「売る」と「売れる」の違いから、コミケでの販売方法を著者ご自身の体験から具体的一案を提示するという内容だった。
ページを繰るたびに新しい発見が飛び込んでくる。
夏にあれほど何度もページを追ったにもかかわらず、今こうして身に迫る状況だと、脳内に浸透する圧が俄然違う。

落雷の如く打ちひしがれた僕は、慌てて脳内を整理した。
これまでの僕は、Tweet告知や事前の告知など、当日「◯◯を見て来ました!」といったお客様ばかりに目線を向けてはいなかったか。
それらはこの小冊子の言葉を借りるならば「売れる」努力となる。
この小冊子が提唱する「売る」ことのエッセンスとは、当日、何も情報を仕入れていないお客様に、作品を知ってもらい、手に取ってもらい、そして購入してもらうこと。
それは自分がこれまで最も重要としながらも、最も苦手と自覚し、結果として自ずと目を背けてきたことだった。
それら「売る」ための努力に、もっと目を向けるべきではなかったか。


苦手、と記述したが、もちろん自分でそうだと思いこんでいるにすぎない。
人よりも大きな声を出すことができ、ポスター、お品書き等の準備も万端で、あまつさえ物販の横には試遊するための早押しボタンまで用意されている。
ほかのブースが羨むほどの御膳立てがすでに出来上がっているのだ
あとは己に潜む心のスイッチさえ切り替えたならば、180度苦手意識が克服、できる!
ーーーー理論上は。

早速実践だ。
手始めに「売れる」準備を整えることにした。
「売れる」ためには、できうる限り多くの方に事前に作品を知ってもらうことだ。無論、ツイートをバズらせて便乗して、などではなく、もっと正攻法のやり方で、だ。

一人こもりっきりの作業が続くと、どうしても精神を阻害する要素がつきまとう。
手垢のついた言葉だが「人は一人では生きられない」とされる。
それは他人と共存するといった意味合いのほかにも、他人を見るという行為を通じるなかで、翻って自分の姿を垣間見るためにあるのだろうと感ずる。

そこで、残されたわずかな日数で、できうる限り多くの方の目に触れさせるよう時間を割いた。
まずは多くのカフェ様にお礼に上がるとともに、作品を置いてもらうようお願いに回った。
他にも、失礼とは思いながら、ゲームマーケットに参加の叶わない遠方のプレイスペースにも数部送付した。
Tweet上での4コマも、無理やり時間を取って継続するよう心がけた。
そうした上で、自分の作品を、より多くの目に、ゲームマーケットに直接関係の如何にかかわらず、晒すよう心がけた。

もちろん相応の批判、非難、中傷等、トゲのある言葉もあり、実際、数名の方から影で心にもないツイートを目にすることもしばしばもあった。
そのたびに、偉人の言葉、哲学の名言などをメモし、都度目にしては反芻しつつ、何とか乗り切ることにした。
取って飾られたような言葉だったが、その時の僕に取っては何よりのカンフル剤となった。
ゲームマーケット直前は、そんな精神面との闘いがしばらく続いた。


追い討ちをかけるように、不覚にも1週間前から体調を大きく崩してしまった。
インフルエンザは陰性との反応だったが、さすがに風邪の諸症状には抗うことができず、直前の土日は止むなく終日布団で横になる羽目となった。
何もできない苦しさは、体力面と共に精神面も否応なくむしばむ。
日課の4コマもさすがに休まざるを得ず、ここに来て最も貴重な土日含む3日間を布団の中で過ごすこととなった。

開けた月曜のツイート上では心配の声が上がる。
そんな中「これも休むための日だ」というアメリカのおかんさんの言葉に涙し、僕は経口補水液をがぶ飲みしながら当日着の荷物をまとめ始めた。

そうする間に、いつのまにか自分の中で、今回のゲームマーケットが「売る」ことに挑戦する場という目標が自ずと具現化されていることに気がついた。
予約を取らないなら売り切れが不安、どれくらい売れるか分からないので持ち込む量も不安、
ならば「最悪の状況を加味した上で、かなりの数を持参しよう」
そして試遊台や売り込む方法を吟味し、当日の売り込みに最大限努力を傾注しよう。

事前予約や宣伝活動に特段大きく力を注がなかったことなどもあり、とうとう有名ブロガーらが選出する「ゲームマーケット2019秋オススメ作品」に拙著が一切上げられることのないままだったが、それらも「仕方ないな」と一切気に病むことなく、ゲームマーケット当日はついにその日を迎えることとなった。


当日のことを綴る前に、前日の謝罪から綴っておきたい。
特に強くこだわっているわけではないが、僕の番次郎書店ブースは初出展以来「日曜出展」を貫いている。
来場者数を比較すれば自ずと来場者の多い土曜出展に目も向くだろう。がしかし、それでもアウェイで闘いたいという気持ちは、自分の中に潜む「天邪鬼」が働いているからだろう。

冷たい雨の降りしきる中、11月23日土曜、ゲームマーケット1日目。
あらかた予想はしていたが、荒天にも関わらず、待機列は前回春を凌駕するほど長蛇の列を形成した。

会場後の10時15分に待ち並んだのちに30分ほど雨にさらされつつ、無事に会場に入ることができた。
目的の買い物を済ませる他に、出来上がった小冊子を、数名の方に届けることが本日の目的だ。

北海道でなぞなぞの本を手に取ってくださった、この日も明るい笑顔でブースのお手伝いに立つゲームカフェ「こにょっと。」店長のきむち。さん
デザインだけではなく当日の販売スタイルも手本とする箇所が多かった同じく北海道の名物ブースCygnusさん
長年ゲームマーケットの趨勢を見つめ続けたザ・同人作品を手がけるラブリー会さん
他の方にも手渡すべきだったと手持ちの少なさを悔やんだが、お渡ししたかった方に無事届けることができ、まずは安心する。

「ゲムマって半年間の取り組みの成果が如実に出る」とは、後日、鍋野企画の鍋野ぺすさんがツイートされた言葉だ。
Cygnusさんに書籍を手渡した際、「よく頑張ってる」「デザインも向上している」という温かい言葉をかけてもらった。

長らく見せること叶わなかったが、これが半年、自分の頑張った成果だった。ようやく、ようやく、何かしらの評価となったのだ。

その場では何とか堪えることができたものの、帰る間際にご挨拶へと回ったノスゲムさんのブースで、思いもよらぬ「マムマムマーガレット」のケースを頂戴し、とうとう僕は堪えることができなくなってしまった。
病後の情緒不安定だったことも相まって、とめどなく涙が溢れてしまったのだった。
おろおろするノスゲムさんを見かねてか試遊台のいかさんが慌てて駆けつけ周囲の数名で介抱されるという醜態を晒してしまう。
若い女性ならともかく、四十を過ぎたオッサンの涙など、どう足掻こうが無様以外の何者でもない。
ただ、周囲の優しさと、自分がこれまで少しずつ積み上げて来た成果が決して間違いではなかったことに対する、何かしらの自信が芽生えていたことを感じた。
決して大きな成果ではない、小さく、か弱く、いわば朝顔の双葉のようにちっぽけな存在にも映るだろう。
けれども、それは自分の中で確かに太く根を張り、茎をつけ、あらんかぎりの葉を伸ばし、全身から水分を吸収しようとする姿にも感じたのだ。

たもとで涙を拭いつつ早めに帰宅・就寝し、迎えた当日の朝。




来たぞ、2度目となる青海展示棟。



まずは当日のブース配置だ。
こちらは例年とほぼ同じ。
強いて挙げるならば、早押しボタンを「本格派」に仕様変更したことぐらいだ。
試遊一体型というスペースは、体験した直後の目線がそのまま作品へとスライドできるという利点を持つ。
早押し機は音が生じるため、周囲に気を配りながら、迷惑にならない範囲で音量を調整する。



次に呼び込みだ。
病み上がりという最悪のコンディションの中、スプレーするタイプの喉の薬を2本ほど常備する。
今回は呼び込みの言葉も洗練させた。
短いフレーズで、ズバッと、作品の魅力を伝えることだ。

たとえば「バナナ」を売り込むとする。
バナナの魅力ってなんだろう?
甘いよー、美味しいよー、でもそれは充分にこと足りるだろう。
さらに洗練させるならば「カリウム豊富!」「疲労回復に!」「栄養満点!」
食べた後の皮を気にされる方には「ゴミはこちらで片付けます!」などの言葉も有効かもしれない。

それら売り文句をTPOで使い分けることにした。
具体的には
「2019年を締めくくる本です」
「世界でここだけ、本屋さんにもありません!」
「ボードゲームのクイズ本はこちらのブースです」
「Twitterでほぼ毎日連載中です」
終わり間際には「お土産にいかがですか?」も有効かもしれない。
もちろん即興で考えたフレーズも中にはあった。
こうした売り文句を楽しめるようになると、苦手としていた売り子もより一層楽しく感じ得るかもしれない。

午前10時、祈るような思いのまま、いよいよ幕を開ける。
僕のブースは開幕当初の長蛇の列とはとんと縁のない至って平和なブースだ。
時間とともに興味を持ったお客さんが顔を出し、本をパラパラとめくっては、立ち去っていく。
しかしながら、その場での宣伝効果は予想以上に高いものだった。
まず声かけとともに配布したチラシやフリーペーパーをどんどん受け取ってもらえた。
土曜日に受領したヤブウチリョウコさんのフリーペーパー「ボドゲフリペ」の効果もあり、多くの方が立ち止まってくれる。
同時に、フリーペーパー横の本やチラシにも目を滑らせてくれる。
おかげさまで手元のフリーペーパーやチラシは終了時間前にほぼ全て配り切ってしまい、追加で受領に赴くほどの人気を誇った。

頒布のペースは、本当に均一な直線といった様相を見せた。
何時の時間帯が売れる、といった様子は特段感じられず、各時間均等に人が訪れ、手に取ってもらえた、が個人的な体感だった。

そして何より「ボードゲーム初めてです」という方が多く、それは子ども連れや子ども向けといった意味合いではなく「ボードゲームのイベントに来てみたはいいけれど、自分はそれほどボードゲームに詳しくはない」といった方が多い印象で、とりわけ私の書籍では「なぞなぞ本」「初めてのボードゲームクイズ本」といった本に人気が集中した。

また、ボードゲーム会やボードゲームカフェに置くための本を探す方もブースに訪れ、そんな方には「事前の知識が一切なくても読めてしまう4コマです」「クイズには解答解説を全問つけました!」の売り文句で積極的に作品をアピールした。

食事を取る時間も忘れ、声は枯れ果て、喉の薬はとうに一本が空となった。
それでも僕は問題を読むたびに笑顔が溢れた。
先の自信へとつながる話題かもしれないが、作品が相手の手に渡ることへの不安より、その時はとにかく今は元気に巣立つ我が子を見守る気持ちでいっぱいだった。そして何より、クイズが、ことさら自分の作成した我が子、もといボードゲームのクイズが大好きなのだ。

撤収するブースもぼちぼちと現れる16時過ぎ、それでも僕は売るのをやめなかった。
ワンオペであるため片付けを並行しつつ、きっと誰かが来る、本を欲しいと現れる誰かを信じて、最後の1分1秒まで頒布を続けた。
事実、最後となるお客様は16時58分に現れた。
「初めてでも楽しめる本はないですか?」というオーダーにこちらをどうぞと案内している最中、とうとう閉会の拍手が鳴り響いたのだった。

終わった。
蓋を開けてみると、持ち込んだ小冊子はどれも完売まで残り5、6冊という結果を果たした。
決して負け惜しみではなく、「完売」という「欲しかった方全ての手に行き渡らない結果」より何倍も自分の中で最高となる結果に終わった。MAXは「残り1冊で完売」である。
全体としてあくまで概算ではあるが、事前に小冊子の存在をご存知だった方1/3、番次郎書店というブース名を知り得ており、新刊の存在を立ち寄ってから知った方1/3、そして当日初めて当ブースの存在を知り、ボードゲームのクイズ、なぞなぞ本を初めて手に取ってくださった方1/3、だっただろうか。

念のためにと事前に買った冷たいお茶を一口だけ含むと、苦味と甘さが内混ぜの少し不思議な味がした。
気を張っていたからか、座り込んだ途端に押し寄せる急な疲労、そして強い眠気。
慌てて残りのお茶をがぶ飲みし、梱包した荷物を依頼しにかけ回る。



全ての片付けを終えると、会場はまた以前の静けさを取り戻そうとしていた。
ほんの1、2時間前までむせ返るほどの熱気に溢れていた会場は、また冷たいコンクリートの会場へと姿を取り戻し始める。
そそくさと机と椅子を片付けると、会場には何台もの車両が行き来し、フォークリフトが大きな唸り声を上げてステージを解体し始めた。
邪魔にならないようそそくさとその場を立ち去る僕は、実に10時間ぶりとなる外の空気を浴びた。
ひんやりとした風が熱のこもる体温を否が応でも奪う。
僕は汗が冷えないようしっかりとジャンパーをかかえ、足早にりんかい線ホームへと向かった。

楽しい1日だった。
売ること、頒布すること、ひいては自分の表現した作品が相手に伝わることが、これほど楽しく幸せなことだと、改めて実感できた、そんな1日だった。
りんかい線の同じホームでは、お世話になった「ボドムライス屋」ことkurumariのメンバーとお会いできた。
「最高に楽しかったです!」
開口一番、僕の口から飛び出した言葉はそれだった。
もちろん小冊子の売れ行き自体もそうだが、何よりも今回「売ることを目標」に挑戦したことで、きちんと手に取るだけの成果を残せたことが嬉しかった。
それは幼い頃、自転車を補助輪なしで乗ることができたときのような、とるに足らないほどの成長かもしれない。
それでも、こうして無事に一歩目を踏み出すことができたことも、ひとえに目線を配ってくださった周囲のおかげであり、自分一人の力では到底なしえなかったのだ。
「人は一人では生きられない」
やはり人は見知らぬどこかで支えられて、自分がいる
感謝しなくては。


翌日、微々たる額ではあるが、売上の一部を義援金へと充てることにした。
今回の小冊子が「2019年史」だったこともあり、今回被災された方や何らかの事情により作品やボードゲームを届けられなかった方に、出来る限りの支援をと思い立ったのだ。
「見知らぬ誰かの、支えとなりますように」
今度は僕がお返しに回るターンとなるのだ。


暫し身体を休めた次は、2週間後に「静岡アナログゲーム祭」「盤祭2nd」が控えている。
ゲームマーケットは僕にとってひとつのゴールに過ぎない。
楽しいを待つ方々一人ひとりに届けること、幸いにも今回体験した「売ること」の研究、成果が、これからの活動にも反映できるよう、

走りますとも。

とはいえ、身体が資本であることも同時に学びましたので、健康第一に考えたいと思っています。

(了)





















2019年10月26日土曜日

軽い気持ちで作ること 12,13冊目となる本を描き終えて

ボードゲームのクイズ本を2017年から作り続け、今度、3度目の秋を迎える。
クイズの本としては6冊目、全体としては12冊目となる今作、
テーマは「2019年史」だ。


「ボードゲームの1年(歴史)を綴る本」
アイデアそのものは、そう斬新なものではないはずだ。
おそらくボードゲーム を趣味とされた方なら誰しも一度は「この年にあった出来事を簡単にまとめた本、書類」自体のアイデアは考えたことではないか。

しかしながら、辺りを散策しても、それらをまとめた本が見当たらない。
検索の仕方が悪かったのか、または、何かの雑誌のワンコーナーに掲載されていたため、私自身が見つけきれなかったのか。
ともかく、現状として私自身が一番読みたかった本が何処を探しても見つからない、という状況だった。

「ならば私が作る!」
と、こうして2019年に関するボードゲームのクイズ本を作成するに至った、という、経緯とも呼べない経緯でこの本は始まってしまった。

「しまった」とあるけれど、要は自分の中で難しく考えることをキッパリとやめ、まずは走り出すことに決めたのだ。
最初はこう、次はこう、と、入念な計画を立てることはとてもとても楽しい。あたかもそれは、遠足の当日よりも、前日に300円以内のおやつを買いに走ることの方が楽しいことに似ている。頭の中で空想を巡らせてばかりで「行動」に移すまでに余計な時間をかけているクセがつくと、だんだんと行動が億劫となり、次第にその一歩目が鈍重となってしまう。
「しのごの言わず、まあやってみましょう」
と、まずは外野を気にせず「本を作る!」とだけ脳内の壁に掲げ、かくしてボードゲームクイズ制作はスタートしたのであった。


簡単にスタートしたは良かったが、目の前の障壁は予想以上に行く手を阻む。
まず持ってデザインの壁。
歴史を綴る本となれば、当然、歴史年表が必要となるが、どこを当たっても求める年表の作り方が掲載されていない。

そして、あてにしていたインターネット上の情報がかなり少ないことに気がつく。
途中の更新が抜けているブログもあり、書き手の趣向がかなり偏ったブログもあり。
何かしらの参考にはなったものの、やはり実際に見聞きした情報には敵わないという実感だった。
百聞は一見に如かず、とはよく言ったもの。前回の制作と同様に店頭のパンフレットを片っ端からかき集め、手で、足で、情報を獲得するより他になかった。


次は問題の総数だ。
時事問題を中心とした方向性は良かったけれど、ただでさえ縛りのある「ボードゲーム」というジャンルに加え、その年の、その月にあった出来事を絡めるとなると、何重にも問題制作に制限が加わってしまう。
そうなると難易度は必然的に高騰する。
「そんなの知らんわ!」と見放されてしまっては、せっかく手塩にかけた問題が台無しだ。

歴史に、問題に、加えて、おまけの要素をどうするか。
何日も何日も試行錯誤は続いた。

コラムを書き、解答・解説も書き綴っては見直した。分量は軽く1万文字を突破した。
もちろん問題そのものがボツになってしまうと、せっかくの解説も道連れとなってしまうわけで…。


締め切り2週間前、ようやく表紙デザインが完成
完成の日の目が見えはじめた。



直前になっても中身のレイアウトの変更、微修正は続く。
特に11月を出題の範囲とした関係上、直前になっても情報の変更が飛び込んでくる。
一例を挙げると「キャットアンドチョコレートガチャピンチャレンジ編」
こちらは今年5月に発売された人気大喜利ゲームの新作であるが、実は直前になって「非日常編」の発売があることを知り、問題文の「2019年の新作は…」と記述した部分を微修正する必要に駆られた。


さて、いくらクイズ制作が趣味の人間とはいえ、こう毎日クイズ本の作成、修正に没頭していると、当然「嫌気」もさすというもの。
ツイート上を眺めると、時折、周りの製作者のテストプレイに華やぐ姿が流れる。
それらを横目に作業を続けていると、思わず発狂したくなるほどの精神状態にもしばしば襲われた。

そんな心理状態を救ったのは、4コマを描く時間だった。
つまり、作業を作業で埋めたのだ。
クイズ制作とは真逆のことを行い、精神の安寧を図るという、これもかなり無茶といえば無茶な施策を練った。
とはいえ、4コマも他のボードゲームの漫画を執筆される方からすれば毎回「月とすっぽん」ほどの反応だったが、それでも臆することなく「毎日」を目標に描き続けた。

クイズにも言えることかもしれないが、4コマ制作のバロメーターは何より「描き手である自分が楽しむこと」だった。
相手を楽しませることを主眼に置くと、どうしても読み手にすり寄った作品となってしまう。そうなると自分の本当に描きたかった作品の軸がブレてしまい、最悪、作品が継続できなくなってしまう。
だから日々の4コマについては、反応を気にせず、無理をせず、相手を貶めたり傷つたりせず、そして何より(時にパロディーも加えながら)自分の描きたいものを描くというスタンスを取った。


そんな2足のワラジをこさえながら、締め切り直前となる金曜日の徹夜を経て、ようやく完成、入稿。










今こうして時間を置いて眺めると、やはり諸所の粗さが目立って見えてしまう。致し方あるまい。

しかしながら、この「不可能が現実となった瞬間」の達成感は、いつ何時であろうとも感慨深い。
それは作品の出来不出来ではなく、制作の過程に苦労を重ねた分、二次関数のように跳ね上がっていくものだ。
まして、半年前には当の自分自身が「できない!」「無理!」と自分の中で突き放していた作品だ。正直、手元にない以上いまだ大きな実感は湧いてこない。


入稿完了の画面が大きく表示されると、しばらく私は動くことができなかった。
余程気を張っていたのだろう、肩に、腰に、内臓に、ドッと疲労が押し寄せる。
ゴロリと横になってしまうと、そのまま立ち上がることができないのではないかという具合だ。

きつく締めたはちまきをゆるめ、冷蔵庫の麦茶を口にする。
ツイート上には早速「おめでとうございます」の温かいリプライが飛び込んできた。
秋の嵐吹き荒ぶ中、それらの言葉は疲労しきった心に深く、暖かく、じんわりと染み入った。

これまで本当にご迷惑をおかけ致しました。
もうしばらく元気を取り戻しましたら、作品と併せまして、ゲームマーケット当日に御恩返しに回りたいと思います。




2019年9月25日水曜日

孤独に立ち向かう 神戸・三宮ボドゲフリマ遠征記

先週から続く関東外への遠征に、正直、気持ちよりも身体が先に悲鳴を上げた。
抜けない疲労に、抜ける毛髪、ざらつく肌に、テカる脂汗……。
こと、創作活動とは、自分の中の全てを表現するに留まらず、聞いてもらう相手を想い、尽くす気持ちが整理された上で、何かしら自らの犠牲を伴う行為なのかもしれない。

勢いに任せて出展を申し込み、気がつけば出発が目の前に差し掛かり、アワアワと無駄にもがいているうちに、あれよあれよと三宮の地へと降り立った。

会場となるkiitoは、過去にも盤祭1stなどのボードゲームイベントが開催された場所でもある。
新幹線の新神戸駅から程近く、近隣の宿泊施設も豊富、足を伸ばせば明石、加古川、姫路なども行動圏内というロケーションだ。

今回私は、前日入りの予定を組んだ。
過去の盤祭1st.では会場設営のボランティアに名乗りを上げ、設営や片付けなどをお手伝いした。無論今回も喜び勇んでボランティアスタッフへの参加を表明した。
会場までのアクセスをトチり遅刻を余儀なくされたという前回の経験を踏まえ、今回は前日から現地入りし、更に会場から徒歩圏内のビジネスホテルを予約するという徹底ぶりだ。

とはいえ、それほどがんじがらめの計画を立てたわけでもなく、前日、後日の予定などは特段定めず、空いた時間は自由気ままに周辺を散策することにした。

手元のボドパスを頼りに、まずは姫路市のB-cafe様へご挨拶に伺う。



店内は所狭しと新旧のボードゲームが並ぶ。国内未流通のベガス拡張「Boule Bird」のような、設置してあるカフェも少ないはずの作品も立ち並ぶほどだ。
しかしながら決して雑然ではなく、どの作品も中身まで丁寧に整理、管理されている様子で、過去に私の作成した小冊子も、早押し機の中で大切に保管されていた。

店内をポッドキャスト「豚の鳴き声」で耳にするアタック氏が明るく出迎える。
美味しいコーヒーが評判と看板にある通り、味わい深く、香りも豊か。苦味はほどほど、口の中で爽やかに広がる酸味がフルーティでとても美味しい。
ついついお代わりしてしまった。

素敵な雰囲気には、自然と気心の知れた仲間が集うもの。
しばらくすると常連と思しき多くのお客様で賑わいを見せた。

お礼を済ませ、姫路市の近傍、加古川市に所在する「駒の時間」様に移動する。

明日の出展を間近に控え、店内には多くのボードゲームが箱詰めされ、多くの方の手に渡る日を今や遅しと待ち構えているかのよう。

komaさんは変わらずの笑顔。
昨晩は遅い時間まで「スライドクエスト」のフィギアを塗装していたとのこと。
連日の作業で疲労もあったと察するが、そんな素振りを微塵も見せず、笑顔も交えながら他愛もない話をやり取りした。


加古川を後にし、この日の最後は知人と落ち合いながら、神戸市のトリックプレイ様へ。

「東にバネストあらば、西にトリックプレイあり!」
そう知人が紹介するお店では、こちらも国内外を問わず多くのボードゲームが整理されていた。
店内では日本語版の発売も控えた「ジャストワン」で盛り上がりを見せていた。

店長の明るい笑顔を眺めるうちに、この方は本当にボードゲームが好きなんだ、と、肌感覚ではあるが痛く、強く、それでいて確かな感覚で伝わる。
そんな暖かく、居心地の良い雰囲気のお店だった。


翌朝
懸念されていた悪天候は何処へやら、朝8時の段階では路面がほぼ乾燥し、風も涼しく穏やかで、空には少し厚めの雲が一面を覆う程度だった。
暑くなく寒くもなく、開催日としてこれ以上のない好天に恵まれたのではないか。

ボランティアスタッフとして動く予定の私は、ギッシリと詰まったキャリーケースを肩にかけ、一路会場となるkiitoへと向かった。

場内では手慣れたスタッフが明るく、テキパキと指示を出す。それに従い、あらかじめ掲載された配置図に机を搬入、設置する。
当日のアクシデントで見送られた方を含めても、やはり作業人員の頭数、絶対値が足りない。
指示された作業を一通り終え、次は一般車の誘導や人員の整理などに移行する。
少し早めに取り掛かったとはいえ、時間ギリギリまで作業は続いた。
指示する側のテキパキとした動きに加え、決して罵声が飛び交うことなく皆が一丸となり、清々と、かつ、笑顔も交えながら行った証とも呼べるだろう。

とはいえ、私の本来任務はブースの運営である。
わずかな時間の合間を縫って、自分のブースの設置に取り掛かる。
開場1分前に何とか体裁だけ整えることのできた我がブースでは、名古屋のバネスト20周年記念祭でも活躍を見せた本格派早押し機「SPALLOW6」がデンと構える。
隣ではゲームマーケット春でもお世話になったEJIN研究所のEJINさんが、いつもの笑顔でブースを展開した。
「ネタはいい、けど、絵がなぁ…」
勢いに任せて頒布した4コマの本にもありがたい意見を頂戴する。普段こうした直接意見を上げてくれる方は、SNSを通じた上でもなかなか拾うことが難しく、とても身に染みた。

この日は、各ブースでの経験も豊富なシオンさんが応援に駆けつけてくれた。
二人体制となったブースは個人の作業量に余裕が生まれるほか、自分では気がつかなかった各方向の目も多くなるため、効率は3、4倍も高くなる。
「試し読みできる本に値段を振っては」「ブースそのものも長く広く使えば」など、多くの意見を取り入れながらの運営が進む。

私のブースは、中古や新作を販売・頒布する他のブースとは趣が異なり、ひたすらクイズを読みつつ本を頒布する、いつものスタイルだ。
そのためか、他の来場者も当初は怪訝そうにこちらを見つめる。
今回の早押し機はさすが日頃お目にかかる機会の少ない本格派を奮発したおかげで、クイズ本との相性も抜群だった。
特に、前回の盤祭1st.、ゲームマーケット大阪では、ボタンを押したかったお子さんのニーズに叶う問題がなく、出題側となるこちらも手をこまねいていた。
今回は「ボードゲームをからめたなぞなぞ」も数多く取り揃えたおかげで、経験、未経験の有無を問わず、ボタンに興味のあった方が足を止めてくださったという印象だ。
それだけでも、今回の成果としては十分すぎるほどだ。

午後4時を回り、しばらくシオンさんに店番を任せ、私は簡単に各ブースのご挨拶へと向かった。
エレベーターオペレーターは兼ねてからチェックしていた作品。無事に確保できまずは一安心。
ステージにほど近い「いかが屋」ではクレイジータイムが格安だった上、じゃんけんチャレンジでさらに500円引きという太っ腹な企画で入手ができた。
高天原のブースでは、作品全般のイラストを手がけるぺけ先生が描いた、可愛らしく癒しのある各種イラストが販売された。こちらではポストカードを残らず入手する。
中古販売ブースはじっくり眺めるだけで時間を取りかねなかったので今回は見送ることにした。
ゲームNOWAブースではセルフリメイクとなる新作「8人の魔術師」「ワーデミック」を展示。明るくポップなイラストレーターのたかみまこと先生は、これまでの面影を残しながらも独特の世界観を活かしたイラストで、重厚な世界観ながら軽く明るいタッチで表現されたカードの数々につい惹きつけられる。

しばし休憩を取り、残り時間は30分。客足は未だ途絶える気配もない。
遠方では目玉商品が残されたと思しきクジの抽選に、多くの来場者が関心を寄せていた。

売り子のシオンさんはとてもパワフルで、すでにへばっている私を余所に、「漫画とクイズの番次郎でーーす!」と、変わらず場を盛り上げてくれた。

17時、閉場の時間。
4時間は本当にあっという間だった。
わずかな時間ながら、とうに声が枯れ、目がかすみ、汗まみれで軽く脱水のような症状が現れたところを見ると、この4時間がいかに熾烈なものだったか伺える。

周囲が撤収作業を始める中、いつまでもひとりでグズついている訳にもいかず、残った体力をあるだけ放出し、私はいそいそと片付けを始めた。


その後に開催された二次会でも出展側の疲れは何処へやら。スタッフを始め多くの方が盛り上がりを見せた。
次回開催の話題や、万屋楽団のサンジョウバ氏が京都にプレイスペースをオープンする話など、会の終わりまで終始話題は尽きなかったように見える。
普段あまりお酒を飲み慣れていなかった私は、とうに宴席での盛り上げ方を忘れてしまい、ふらつく頭の中、周囲の盛り上がりを余所にひたすら原稿作業に移行していた。実に勿体無い。


疲労が残る中で迎えた三日目の朝。
小冊子を手にし、この日は一路大阪へと向かった。

12時、東貝塚のファミーリエ様へ。
明るく気さくな店長は、他のお店では見かける機会の少ないという作品を紹介してくれた。




電子カードを利用し、音楽を作るという「カードゲーム」だ。
指定されたカードの出し入れはテクニックを要し、さながらDJの気分が味わえる。
スピーカーと連動し、きちんと音楽が鳴るという仕組みがニクい。

時間もたたないうちに、多くのお客様でごった返す店内。
友人、知人に加え、ご家族連れでのお客もちらほら。
畳敷きの座敷もある広めの部屋は、ボードゲームの興奮とはまた違う、静かにのんびりと楽しむ空間を提供するかのよう。

次は谷町四丁目のGUILD様へ。

連休の中日ということもあり、この日も変わらず賑わいを見せる店内では、店長の大阪さんと店員のアリサさんがこの日も慌ただしく駆け回っていた。
店内の販売スペースは、国内のボードゲーム作家を応援するかの如く専用スペースが設けられ、定期的にテストプレイ会を実施するなど、製作者の目線に立ったイベントが積極的に開催されている。

アリサさんに同人誌のことを相談に乗ってもらった。お二人の笑顔が店内の雰囲気をも象徴するかのよう。


ツイート越しに得た情報を頼りにお土産を買い込むと、出発の時間が間近に迫っていることに気がつく。
新幹線に飛び乗り、今回の道中も、食の宝庫関西のグルメを堪能できなかったと自戒する。
私の旅はいつもこうだ。


旅先でお会いしたイベントスタッフをはじめ、ボードゲーム製作者、カフェ・プレイスペースの方々、それらに携わる多くの方々。
私が魅力を感じた方々は、独特の「個性」を秘めていた。
「◯◯が好きだ!」という理由から実際に「◯◯をしたい!」「◯◯ならできそう!」と漠然と妄想する方は多数存在する。
しかしながら、そこから更に一歩踏み出し、手を動かし、実行に移した方は本当に、本当に少ない。
今日まで長く継続できた方はそこから更に絞られる。

独り孤独に立ち向かい、助け船もない状態のまま、悩み、挫け、幾度となく立ち上がり、徳俵に爪先だけで踏みとどまった状態のまま、「倒れるものか!」と粘り続ける。

それだけだ。
能力なんて何もない、いつでも倒れる覚悟を持ちつつ、紙一重で踏みとどまっているに過ぎない。

だからこそ、私はそんな個性の塊のような方々を心から応援したいし、いつかは自分もそんなデコボコした存在として、一員に加わりたいと願っている。
どれだけ虚勢を張ったところで、孤独の作業は、やっぱりツラい。
それは個性と呼ばれる形がいびつであればあるほど「現状のものとは違う」と周囲に認識され、自ずから疎外感を覚えるからだ。
それでも自らを信じ、泥だんごのように粘り強く自分の「個」を磨いて磨いて、核となる部分が見えるまでに磨き上げたところで、ようやく個性が鈍い光を見せ、そこでようやく周囲から評価の対象として土壌に上がる。世間の需要といった面はそれから先の話となるだろうか。

今回出会った多くの魅力的な方々は、己の中に秘めた「個」を、丁寧に、かつ、周囲からの目線に何度も挫けながら、それでも磨き続けた結果の証左だったように感じる。
継続することの難しさは、何かしらの形で意識的に「継続を実行」した人でなければ、その労苦は推し量れないし、第三者にも上手く伝わらない。
だからこそ個性的な存在にある方々は、裏を返せば、それだけ他に代用できない存在でもあり、いうなれば、誰からの助け舟、相談相手や代替できる相手も存在しないまま独自に歩みを続ける方ばかりなのだ。

私は、そんな方に寄り添い、話を聞き、何かしらの形で支援できるような存在でありたい。
寒さで震える道中に、そっと差し出す缶コーヒーのような温もりを、私も、私のできる限りの方法で、支えていきたいと思う。


帰りの道中で、普段は感じる機会のなかった、人との触れ合い、存在、それらを支える周りの存在の大切さを、身体の芯から感じつつ、新幹線は最寄駅のホームへと滑り込んでいった。

冷たい部屋に灯りをともし、私はまた、溜め込んであった制作作業へとペンを走らせたのだった。


下手な鉄砲

 数を出す、とにかく初回から外に出す、とは徒然草の一節だっただろうか。 技が上達する人はとにかく描いたら世に出すこと、上達しない人は完成してから出そうとしいつまでも出さない、といった文言だったはずだ。 以前、兼ねてから応援していた創作者から「完成形しか見たくない」との言葉を頂戴し...